第100話 交渉終了したので、ちょっと一休みするか
「という訳で、オケアノス族長は賠償という事で和睦したそうです」
「おお、そうか。よくやってくれた」
僕達はケニギンアーヌル族長の下に行くと、交渉が上手くいった事を告げた。
さて、ここからが問題だ。
どうやって、アイゼンブルート族を魔国に従属させようか。
オケアノス族長の話しを聞いた限りだと、どうやらアイゼンブルート族は総じて理論的な言い方をする者達のようだ。
ふむ。ここは戦力を強化できる案を出した方が良いかな。
「苦労を掛けたな。リウイ殿」
「いえ、こんな事でしたら、どうという事はありません」
とはいえ、相性って大事なんだなと、今回の一件でようく分かった。
そう考えたら、昔、論客と言われた人は結構度胸があったんだな。
「それで、貴殿の申し出の件だが」
「はい」
「もう少し議論したいので、少々お待ち頂けるかな」
ふむ。要するに、こんなに早く交渉が上手くいくとは思わなかったから、少し時間をくれという事か。
それは良いのだけど。
「つかぬ事をお聞きします」
「何であろうか?」
「ここはアイゼンブルート族以外は来る事があるのですか?」
「無いな」
「じゃあ、僕達は何処で話が纏まるのを待ったら良いのでしょうか?」
「「「…………………」」」
僕の言葉に、アイゼンブルート族の人達は沈黙した。
ここはアイゼンブルート族の人達が暮らせる様に出来ているのだから、他の種族の人達が生活できる様になっていると思えない。
なので、ここで待つのは無理だと思う。
さて、どうしたら良いのかな。
「それニついてハ、提案ガあります」
何か、ジネラールゼーリエ一機でトゥープ何だっけ? 忘れたけど、一機が前に出た。
「ジネラールゼーリエトゥープフォアゼクスか。発言を許可する」
「はっ。ここはリウイ殿達をここでハなく、我らと友好関係にある部族の所に居てもらうのガ宜しイかと愚考します」
「成程。それが良いな」
アイゼンブルート族と友好関係の部族か。何処だろう?
「あの、その友好的な部族って何処の部族ですか?」
「我らと友好的な部族は吸血鬼族ですね」
「吸血鬼ですか」
一度、ル・ボンさんの所に戻るのも悪い手ではないな。
「分かりました。吸血鬼族の所で待たせてもらいます」
「こちらの事情に付き合わせて申し訳ない。できるだけ、早く話を纏める予定なので、少々お待ちいただこう」
ケニギンアーヌル族長がそう言ったので、僕達は一礼して、その部屋を後にした。
そして、僕達はそのまま吸血鬼族の所に向かう事となった。
流石に向こうの我が儘で、吸血鬼族に行く事になったので、ケンプファゼーリエのアーヌル麾下の部隊を護衛として連れて行く事となった。
ビクインさんは「巣に戻って、今回の件で話し合うから」と言って途中で別れた。
それからというものの、アマルティアとカーミラさんが何かにつけて競っているんだよね。
理由は分からないが、もう少ししたら、ル・ボンさん屋敷に着くので一休みさせてもらおう。
「マインヘル。モウ少シデ、ル・ボン様ノ屋敷ニ着キマスノデ、先ブレヲ送ッテモ宜シイデスカ?」
「ああ、頼む」
アーヌルがそう言ったので、僕は許可した。アーヌルは一礼して、その場を離れ部下の所に行き、部下に指示を出した。部下の人もその指示に従い先に進んだ。
僕はそれを見送り歩き出す。
少し歩くと、ようやくル・ボンさんの屋敷が見えた。
門の前には執事のアルフレッドさんとアーヌル達の部下達が待っていた。
「お待ちしておりました。お嬢様。リウイ様。それと皆様」
アルフレッドさんは僕達を見るなり一礼してくれた。
「お久しぶりです。アルフレッドさん」
「リウイ様。どうぞ、わたくしの事はアルフレッドと呼び捨てにしてください」
「いや、流石に」
「いえいえ、お嬢様の御友人なのですからお気になさらずに」
流石に人の家の執事を呼び捨てにする度胸は無いな~。
「旦那様と奥様は部屋でお待ちしております。ご案内いたします」
「はい。お願いします」
門を潜る前に、僕はアーヌルを見る。
「アーヌル達は屋敷の近くで待機していてくれ」
この屋敷の中で待っていたら、庭師の人達の仕事の邪魔になるだろうからな。
「ヤ―」
アーヌルがそう答え一礼した。部下達も同じように一礼して屋敷の周囲に散った。
それを見た僕は、アルフレッドさんの後に続いた。
屋敷に入ると、メイドの人達が列となって頭を下げる。
「「「お帰りなさいませ」」」
この列の中を通るのは、ちょっと気が引けるんだよな。
でも、アルフレッドさんとカーミラさんは平然とその列の中を歩いてるし、アマルティアとアリアンはどうという事はない顔で歩いている。
僕が足を止めていと、ルーティさんが傍に寄る。
「どうかしましたか? リウイ様」
「い、いやぁ、何でもないよ」
僕は少し気後れしながら歩き出す。
ルーティさんはその後に付いて来る。
メイドさん達の列を通り過ぎると、皆待っていた。
「どうかしたの?」
「い、いえ、何でもありません」
「そう」
「では、ご案内します」
アルフレッドさんは再び歩き出した。その後に僕は続いた。
そして、ある部屋の前についた。
「旦那様。奥様。リウイ様方をお連れしました」
『通しなさい』
アルフレッドさんはドアを開けた。
すると、ル・ボンさんとシェーラさんが居た。
「やぁ、リウイ殿」
ル・ボンさんが手を挙げてくれる。
「お久しぶりです。ル・ボンさん。シェーラさん」
僕は頭を下げる。
「そう固くならず、気楽にしてくれ」
「そうよ。何せ、貴方は未来の婿候補なのですから」
そう言うと、二人は笑い出す。
「冗談は止めてくださいよ。御二人共」
婿候補は流石にいきすぎだろう。
そう思いながら、カーミラさんをチラリと見ると。
「もう、御父様も御母様ったら、まだ『相互吸血の儀』もしてないのに」
カーミラさん、何でそんなに顔を赤らめているのですか?
それと『相互吸血の儀』って何?
「リウイ様。カーミラ様が言った『相互吸血の儀』とは、吸血鬼族が行う婚約の儀式です」
僕の顔色を見て分かったのか、アルフレッドさんが小声で教えてくれた。
この人、有能なんだな。
と思いながら、僕はル・ボンさんの対面の所に座る。
「ほう、そんな事があったのか」
「大変そうね」
僕は今まであった事を話していると、ル・ボンさんとシェーラさんは楽しそうに笑う。
「ええ、まぁ」
「それにしても驚いきました。まさか、人獅子族とダークエルフ族を従属させるとは驚いたな。どんな手品を使ったのだ?」
「ははは、特に何もしていませんよ」
人獅子族は猫の弱点を突いただけだしな。ダークエルフ族の方は、族長が前世の部下でしたとか言っても信じないよな。
「それにしても、ダークエルフ族の族長の娘を護衛として連れて来るとは、よく族長は許したな」
「はは、何か気に入られてまして」
まさか娘を護衛に連れていけと言うのは、正直驚いた。
こうして護衛として付けたという事だから、多分、妾も視野を入れて連れて行けといったんだよな。
「ところで、娘は役に立っていたのかしら?」
「はい。それは」
言葉を続けようとしたが、カーミラさんの視線が刺さる。
わたし、役に立ちましたわね? というの目で言っている。
「……それは、とても役に立ちました」
「そう。それは良かったわね」
シェーラさんがほっとした顔をしていた。
何というか、役に立ったというか面倒な事を増やしたけど、言わぬが花だな。
「わたしとしては娘が問題を起こして、ご厄介と掛けていると思いました」
流石はル・ボンさん。鋭い。
そうして話していると、ドアがノックされた。
「おお、来たか。入って良いぞ」
『失礼します』
そう言って、誰かがドアを開けて入って来た。
部屋に入って来たのは見慣れない女性だった。
金髪を腰にまで伸びたポニーテール。
切れ長の目。赤い瞳。凛々しい顔立ち。豊満な胸。くびれた腰。
何故かメイドの服を着ていた。
「おお、来たか」
「いらっしゃい。エヴァリア」
シェーラさんが手招きする。
そのエヴァリアと呼ばれた女性は、シェーラさん達の傍に行く。
誰だろう?
「リウイ殿。これは、わたしの従弟の娘でエヴァリア=ドゥ=キナシア=アティヴェルです」
「これは、どうも」
僕は頭を下げた。
エヴァリアさんも頭を下げた。
でも、どうしてメイド服を着ているのだろうか?
聞くのも失礼かもしれないから、聞かない方が良いかな。
思わずジッと見ていた所為か、エヴァリアさんが僕を見る。
「何ですか? 餌をたかる豚の様に人を見るのは失礼ではないのでしょうか?」
……。
…………。
………………。
はて? 今、馬鹿にされたのだろうか?
それとも比喩で言われたのだろうか?
う~ん。どっちだろうか。
「エヴァリアっ。お客様に対して失礼だぞっ⁉」
おお、ル・ボンさんの大きな声を始めて聞いたぞ。
「ですが。小父様。この方がそのような目でわたしを見てきたので、つい」
「ついではない。全く、その毒舌な所は昔と変わらんな」
溜め息を吐くル・ボンさん。
ああ、毒舌な人なのか。
前世で居たな。こういう人。
「率直な人ですね。好感が持てます」
「お、おお、そうかね」
ル・ボンさんが驚いたように声をあげる。
そんなに驚く事かな。
「…………」
ああ、カーミラさんがもの凄く睨んでいる気がする。
そんなに睨む事ではないと思うのだけど。
「ふっふふ、好感が持てるという事は、好みという事ですか?」
シェーラさんが悪戯をした子供の様な顔をした。
その顔を見て、アマルティアもエヴァリアさんを睨んだ。
ああ、嫌な予感がする。
そう考えていると、またドアがノックされた。
「誰だ?」
『アルフレッドです。入ってもよろしいでしょうか?』
「ああ、いいぞ」
ル・ボンさんが入れと言うわれて、アルフレッドさんが入って来た。
「どうかしたのか?」
「はい。リウイ様にお客様が参りました」
「客?」
「すいません。名前を名乗りましたか?」
「はい。ジネラールゼーリエトゥープヴェーアハトとビクインという者が参りました」
ああ、僕の客だな。ここまで来てくれたようだ。
「すいません。通してくれますか」
「畏まりました」
アルフレッドさんが一礼して部屋を出た。
さて、両部族はどんな返事をするのかな。
もう決まっているだろうけど。




