第82話 アラクネ族の里に行くとしよう
翌朝。
僕達は朝食を取りながら、互いに挨拶をしてからリッシュモンド達と共に天人族の城を出た。
目指すは、アラクネ族の里『リュディア』に向かう。
天人族の城から、そのアラクネ族の里は普通に歩いたら五日掛かるそうだ。
皆には言っていないが、巨人族の脅威が迫っている中で、それほど悠長に時間をかける事は出来ない。
どうしたものかと考えていると。
「『召喚・首無し馬』」
デュラハンの一人が召喚魔法を使い、首無し馬を四頭立てにした馬車が出てきた。
召喚したという事は、これに乗れって事か?
僕はリッシュモンドを見ると、当の本人は頷いた。
馬車の扉を開けると、丁度六人ぐらいなら乗れそうな広さだった。
とりあえず、僕が乗るとして、アリアン、ルーティさん、カーミラさん、アマルティアで、最後にリッシュモンドが乗れば問題無いか。
「うん? お供のデュラハン達はどうするんだ?」
と、独白したら。
既にデュラハン達は、自分達が乗る用の首無し馬を召喚していた。
なら、問題無いか。
「よし、座る順番は、アリアン、僕、リッシュモンド、ルーティさん、カーミラさん、アマルティアの順にしよう」
「「異議あり」」
うん? 誰が異議ありなんだ?
そう思い振り返ると、そう言ったのはアマルティアとカーミラさんだった。
「棄却します」
僕が即答すると、二人は不満たらたらな顔をした。
だが、僕は無視して、僕が言った順に座る。
馬車に乗って揺れる事、二日。
途中で休みを挟みながら、僕達は『リュディア』へと向かう。
デュラハンの人達と乗っている馬は、死人の所為か疲れる事はないのだが、僕は生きているので、流石に休まないとね。
そして、アラクネ族の里に着いた。
馬車に長時間乗っていた所為か、節々が痛いが、これも早く着いたお蔭と思う事にする。
で、里の入り口の前に来た。
アラクネ族の里を見てみたのだが、その住居は、まるで大正時代にあったモダンな建物を思わせる作りだった。
前世の記憶にあるアラクネ族の住居は、どちらかと言うと頑丈で大きい石造りな家だった。
ふむ。大陸とこちらでは、住居一つとってもこんなに違うんだな。
「ようやく着きましたな」
リッシュモンドがそう言うので、僕は頷いた。
さて、スイレンという女性はどんな女性なんだろうか。
とりあえず、誰か呼びに行ってもらおうかと思っていると。
何か、上から糸が飛んできて、僕に巻き付いた。
「へっ⁉」
とりあえず、糸を魔法で千切ろうとしたら、そのまま上へと持ち上げられた。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ⁉」
ドップラー効果を出しながら、僕は木の上へと勢いよく持ち上がって行く。
そして、今度は顔に何やら柔らかい物が押し当てられた。
何だ。これは?
糸が巻き付いているので、両腕は動かす事が出来ない。
なので、顔を押し付けて当たっている物の正体を確かめようとした。
うん。どれだけ顔を動かしても柔らかい事しか分からない。
「あら~、まだ乳離れ出来ない年頃なのかしら?」
何か、頭の上から声が聞こえる。
揶揄っているような、いじめて反応を楽しんでいるような響きがある声だ。
僕は声が聞こえた方に顔を向ける。
すると、そこには前世の僕と同じ、鳶色の目が額と合わせて八つあった。
アルケニー種と同じく、上半身は女性、下半身は蜘蛛だった。
僕を興味深く観察している。
「……初めまして」
とりあえず、挨拶をしたら、アラクネ族の人はキョトンとした。
そして、笑い出す。
「貴方、この状況でよく挨拶出来るわねっ」
ツボだったのか、目に涙を浮かべている。
面白い事を言った覚えはないのだけど。
「僕はリウイと言います。貴方は?」
僕はアラクネ族の人の胸に埋まりながら、アラクネ族の人に名前を訪ねた。
「あたしは、スイレンというの。ここアラクネ族の族長よ」
えっ、族長なの?
どうして、そんな人が此処に居るのかな?
普通、里の中にいるのでは?
「ちょっと、里の外に行こうとしたら、デュラハン達の気配を察知したから、ここで驚かそうと思ったのよ。で、丁度良く引っ掛かったのが、貴方」
僕の頬を突っつきながら言う。スイレンさん。
この人がリッシュモンドが言っていた人か。確かに、一筋縄ではいかなそうだ。




