第81話 僕をアラクネの里に連れて行く理由を尋ねる
まさか、リッシュモンドに会うとは思わなかったな。
僕は驚きのあまり、呆然としていた。
そんな僕にリッシュモンドは跪いているんだ。
知らない人が見たら、僕が跪かせていると思うだろうな。
「我が君」
「なんだい?」
「少々、お時間を頂いても宜しいでしょうか?」
「ああ、良いよ」
リッシュモンドが相手なら、アラクネ族と同盟を結んだ理由も教えてくれるだろう。
そう思い、僕は了承した。
リッシュモンドは再び仮面を被り立ち上がった。僕はリッシュモンドの後に続いた。
少し歩くと、僕達はある部屋の前に着いた。
リッシュモンドはノックもしないで開けだした。
部屋には、誰も居なかった。
「ここは?」
「この部屋は私の部屋です。事前に盗聴されてないか調べているので、どんな話をしても問題ありません」
「そうか」
僕は部屋に入ると、そのままソファーに座る。
そして、リッシュモンドも僕の対面の所にあるソファーに腰を下ろした。
更に、被っていた仮面を脱ぎ、テーブルの上に置いた。
礼儀として脱いでくれたようだ。
「まずは、久しぶりだね」
「はい。主君は、少々変わりましたな」
「だよね」
前世は、どちらかと言えばぽっちゃりしていたが、今は少年というのもあるけど、美形だ。
ぶっちゃけ、このまま元の世界に行ったら、何処かの芸能事務所に入らないかと誘われそうなくらいだ。何で、こんな顔になったのか、僕にも分からない。
「ところで、何時からデュラハン族の所に居るんだい?」
「数年前からです。主君が死んでからは各地を転々としていましたので」
「デュラハン族の所に潜り込めたのは、やはり死人だったから?」
「そうですね。更に言えば、このデュラハンという種族は、この島にしかいない死人です」
成程。それで前世では見た事がなかったのか。
「それと、現デュラハン族の族長は義弟ですから」
「おとうと?」
確かリッシュモンドって、自然に生まれた生命無き王だったよな。
それだったら、血が繋がった兄弟は居ない筈だ。
「正確に言えば義理の弟です。ああ、もう一人義理の弟も居ます」
えっ、つまり三人の義兄弟って事か。
「私が長兄で、次兄に幽鬼のガンヴマール。末弟はハイ・デュラハン・ロードのエキシアンです」
う~ん。何だろう。
この三人が並んだ所を想像したら、軽く国を攻め落とせそうな気がしてきた。
「幽鬼ってなに? 初めて聞くのだけど?」
「簡単に言えば、幽霊です」
ゴーストみたいなものと考えれば良いのか。
それにしても、死人の三義兄弟か。
何か、桃園じゃなくて、屍の上で酒を酌み交わして、義兄弟の契りをしたのではと思ってしまうな。
そんで、その次兄達が、リッシュモンドの事を「兄者~」とか言うのを想像ししてしまった。
まぁ、流石にそんな事は言わないだろうな。
「ところで、アラクネ族と同盟を結んだのは、どういう訳なんだ?」
「まだ、天人族には話してないので、ここだけの話にしてくれませんか」
「分かった」
「近い内に、巨人族が戦争を仕掛けるようなのです」
「っ、確かなのか?」
「まず、間違いなく」
何故こんな時に。
「そろそろ、巨人族が何処かの部族に戦争する時期ですからね」
「そんな時期あるんだっ⁉」
「はい。問題は何処の部族が攻めるか、分かっていないので、アラクネ族と同盟を結んだのです」
「成程な」
そんな理由なら、するのは当然だな。
ついでだから、聞いてみるか。
「アラクネ族の族長はどんな人なんだ?」
「現アラクネ族の族長は、ジョロウグモ種のスイレンという女性です」
「ジョロウグモ種か。確か、女性のアラクネしかいない種族だったよね」
「はい。性格は強かな女性ですね」
「そうか」
それだけで、何か腹黒そうだなと思った。
笑顔で話し掛けながら、腹で何を考えているか分からない女性と思った方が良いな。
その後も、僕達は色々と思い出話をした。




