第80話 次の行先は決まった。で、その夜
デュラハン族とアラクネ族が同盟を結んだのか。
まぁ、どういう同盟を結んだかは分からないが、問題はそこではない。
使者の言い分が僕をアラクネ族の里に案内する為に、来たような言い方だった事だ。
それと、デュラハンの使者達はタイミングが良すぎじゃないか?
まるでこの城に到達するのを見込んで、来たように思えてきた。
僕がそう考えていると、デュラハン族の使者の人が教えてくれた。
「アラクネ族はあの見た目に反して、動きは機敏。そして間諜を得意としている」
そう言えば、前世で読んだ漫画で、アラクネが糸を使って盗聴しているシーンがあったな。
ああいう感じで、僕達の動きを探っていたのか?
「どうやって我々の動きを探ったのだ?」
ルーティさんは分かってないのか? じゃあ、カーミラさんはどうなんだろう。
そう思い見てみると、顔を見るにルーティさんと同じ考えのようだ。
ふむ。糸が振動して音を拾うというのを知らないのかな?
「それは秘密とさせてもらおう。強いて言うならば、アラクネ族の能力とだけ言わせてもらおう」
「糸で音を拾っただけでは?」
僕がそう言うと、皆驚いた顔をしていた。
まぁ、仮面を被っている人は分からないけど、何となく驚いた雰囲気を出していた。
「糸? 確かに、アラクネ族は糸を出します。ですが、あのような細い物でどうやって音を拾うのですか?」
アリアンがそう言う。
その言い分に、仮面の者以外、皆頷いた。
「糸で振動を拾うんだ」
「振動? 震える事でしょう。声と振動は関係あるのですか?」
「声というは、動物にある発声器官から発する振動なんだ。だから、糸で振動を拾えれば、出来る事だ」
「「「……………………」」」
皆、意味が分からないという顔をしていた。
う~ん。ちょっと専門的過ぎたかな?
もう少し噛み砕いて言った方が良いようだ。
「成程。つまりは、アラクネ族の糸で声という振動を拾わせたと言いたいのですね」
「そう、その通りだ」
「? そんな事が可能なの?」
カーミラさんは僕に訊ねてきた。
「出来るよ。例を見せたい所だけど、何か無いかな」
そう思い、僕は何か無いか探す。
「これで如何ですか?」
何か、仮面の人が僕に、金属管を二つ渡してきた。
よし。後は糸になるようなものだけど。
「そうだ。アリアン」
「はい」
「髪に魔力を込めて固く出来る?」
「出来ます」
「じゃあ、それをしてくれるかな」
アリアンは何で、そんな事をするのだろうと思いつつ、自分の髪を一本取り、その髪に魔力を込める。
魔力を込められた髪の毛はピンっと針金のように真っ直ぐになった。
その髪の毛を金属管に突き刺す。
「カーミラ。この管を持って耳に当ててください」
「ええ」
カーミラさんは言われた通りに、金属管を耳に当てた。
僕は金属管を持って少し離れた。そして、金属管に口を当てる。
「こんにちわ」
金属管にだけ聞こえる様な声量で言う。
「?⁉⁉」
金属管から僕の声を聞こえて、驚くカーミラさん。
そんなに驚く事かな?
カーミラさんの反応を見て、皆興味深そうに見ているので、代わりながらその金属管を耳に当てた。
デュラハン族の人達は、兜を被っていたので、一度兜を脱いでからしてもらった。
その時に顔を見たけど、皆青白い顔をしていたな。まるで、死人のようだ。
という事は、デュラハンは死人と考えた方が良いのかな?
まぁ、まだそう結論を出すのは早いか。
そうして、皆一通り聞き終わると、改めて話を聞く事となった。
「それで、僕達がそのアラクネ族の里に行く事で良いのかな?」
「ええ、我らの族長達はそうお望みです」
「分かりました。では、案内をお願いします」
こうして、次の行先が決まった。
流石に、今日は外に出るには遅すぎる。もう夜になろうという時間だ。
今日はこの城に泊まり、明日向かうという事で話しが纏まった。
それで、僕達は客間に、デュラハン達は別室に案内された。
その夜。
夕食を食べ終わり、僕は一人で城内を歩いていると、前から誰かいる。
あれは、仮面の人だ。
ふむ。ここで会ったのも、何かの縁だ。親睦を深めるとしよう。
そう思い、僕は仮面の人の下に行く。
「こんばんは」
僕が挨拶すると、向こうはその声で僕の方を見た。
仮面の人は何も言わず、頭だけ下げる。
「少し話をしたいのだが、良いか?」
「構いません。丁度、貴殿と話しがしたいと思っていました」
話しね。何かあるのだろうか。
「そちらの部族の族長はどの様な方なのだ?」
自分達とは違う種族と話すのだ。それなりにその部族の特性や慣習などを知っておかないと、話しをするのも大変だ。
デュラハン族の族長はどんな方法でアラクネ族の族長と話しをしたんだ。
「使者はわたしが出向きました」
「へぇ、そうなんだ」
「アラクネ族の事は少し知っていますから」
「そうなんですね」
「ええ、昔仕えた主君が、アラクネいや所謂、異種族について大層興味がありまして」
「異種族?」
「その者は人間でした」
でした? まぁ、この人も多分、死人なんだろうし、大昔に仕えた人の事なんだろな。
「どんな人だったんだ?」
「偉大な御方でした。例え、生まれ変わってもお仕えしたいと思える程の魅力がある方でした」
はっはは、まるでボルフォレみたいな事を言っているな。
「こちらからも聞いても宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「西に数ヶ月進むと大き大陸がある事を御存じで?」
「勿論」
何せ、前世で居た大陸なんだからな。
「そこで、イノータ・N・フォン・ターバクソンという方がおりました」
あっ、それ、こちらの世界での僕のフルネームだ。
Nは信康のNだ。
「素晴らしい御方でした。死人である自分を周囲が反対するにも関わらず、配下に加えたのですから」
そう言えば、周囲に反対されたな。
いつもは、僕の意見には全て肯定するボルフォレですら、反対したからな。
まぁ、結局はその意見の全てを退けて配下にしたんだけどね。
「どのような者であれ、己の配下に加える魅力を持ちつつ、人の意見を聞く度量の深さ。それでいて、ここぞという時に果断に下す決断力と行動力。今、思い返しても、素晴らしい御方でした」
うっ、前世の事は言え、目の前の褒められるとちょっと気恥ずかしいな。
「そして、それは転生しても、変わらずにいて嬉しく思います」
いやぁ、それほどでも。って、えっ⁉
仮面の人が僕に向き直り、そして跪いた。
「臣、リッシュモンド。再び主君に拝謁いたします」
そう言って、自分の事をリッシュモンドと名乗った仮面の人は、自分の仮面を外した。
仮面を外した顔は骸骨だった。
眼窩の所に青白い炎が揺らめいていた。
「リッシュモンドっ⁉ 君なのか?」
思わず、素が出た。
リッシュモンド。それがぼくに仕えた十傑衆の『死影』の名前だ。
と、そこも驚いたけど、今の話を聞くともしかして。
「僕の事が分かるのか?」
「はい。我ら死人は魂の色を見る事が出来ます。貴方の魂は、転生前と同じ無色でしたから、余計に分かりました」
そんな話、初めて聞いたぞ。
「リッシュモンド」
「再び、お目に掛かれて嬉しく思います。我が主君」
リッシュモンドは深々と僕に頭を下げた。




