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第73話 これは 奇貨だな

「…………」

 カーミラさんの問いかけに黙り込むシェムハザさん。

 どうやら、かなり重要な案件と考えた方が良いようだ。

 そのまま時間が過ぎて行くかと思ったが。

 シェムハザさんが僕達を見るのを止めて、遠くに目をやる。

「私の部族と向こうの部族との確執は、先代の族長にまで遡る」

 何か、随分と長い話になりそうだな。

「千年前、先代の族長アザゼルと向こうの先代の族長であるシュバルトが決闘をして、互いに相打ちにとなったの」

「相打ち、ですか」

「ええ、それでダークエルフとわたし達と間に確執が出来たのよ」

「その一騎打ちをした原因はなんですか?」

「樹海での水源の取り合いよ」

 水源の取り合いか。これは根が深いな。

 こんな樹海だ。水源と言える所は少ないと見るべきだろう。

 それの取り合いだからな、それこそ血で血を争う戦いが起こってもおかしくない。

「しかし、もし戦争でもしようものなら、どちらが勝っても、双方の被害は大きい。そこを他の部族に襲われたら、元も子もなくなる」

「確かに」

「そこで、部族から決闘をして、勝った方の部族がその水源を使うと言う事になりました」

「成程。それで、両方の部族は族長を出したと」

「二人共、部族を代表する強者でしたから、そして結果」

 相打ちか。それはまた」

「非常に不味いですね」

「そうなの。これで、どちらかの族長が勝ったのなら水源を使えるのだけど、相打ちになった事で、その件の水源は使うのが難しくなったのよ」

「確かに、どちらの所有になった訳ではないからな」

「だから、この千年間、私の部族とダークエルフ族は小競り合いが絶えないのよ」

 成程な。それじゃあ揉めるのも仕方がないな。

 これで戦争にならなかったのは、各部族の介入をさせない為だろう。

 さて、これは面白い状況な所にきたぞ。

「で、僕達を城に招いた理由は、それと何か関係あるのでしょうか?」

 まぁ、そうじゃなかったら、あんな接待しないよな。

 出来れば、もう一度味わいたいな。

「「………………」」

 はっ⁉ 背筋から寒気がっ。後ろからとんでもない圧を感じる。

 ふ、振り返ったら駄目だっ。何か後ろに竜と虎が居る気がするし。

「? 話を続けても?」

「ど、どうぞ」

「それで、済まないのだけど。貴方に頼みがあるの」

「僕に出来る事なら」

「ダークエルフ族と和解を仲介してくれないかしら」

「ほぅ、それは、天人族の総意と取って良いのですか?」

 仮にも族長を討ち取られたのだ。その恨みもある筈だ。特にその族長の遺族の恨みとか。

 それを宥める事が出来てるのかとい意味で、僕は問いかけた。

 シェムハザさんはそれを聞いて、首を縦に振る。

「前族長アザゼルは私の兄。他の遺族はいません」

「そうですか」

 唯一の遺族がそう言うなら、大丈夫か。

「分かりました。その話、お受けしましょう」

 僕がそう言うと、後ろが息を飲んだ音が聞こえた。

「お願いね。それで、成功報酬だけど」

「それについては、今言ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「では、遠慮なく。成功報酬は、我が魔国に従属という事でよろしいでしょうか?」

 これで、天人族とダークエルフ族を両方魔国に従属させる事が出来る。

 まさに奇貨だな。

「……承知した。こちらとしても、それで問題ない」

 よっしゃあっ‼

 これでやる気満タンだ‼

「では、数日休んでから、ダークエルフ族の里に向かうが良い」

「ありがとうございます」

 僕達は休憩を取る為、その場を後にしようとした。

「あっ、そうだ」

 出て行こうとしたが、一つ聞きたい事があった事を思い出す。

「一つ聞いても宜しいですか?」

「何かしら?」

「今のダークエルフ族の族長の名前は何というのですか?」

「今の族長はボルフォレというらしいわ」

 ボルフォレ?

 ダークエルフでその名前か。

 前世の部下に居たな。

 そう言えば、僕に仕えた時に、此処ではない大陸の樹海の部族出身だとか言っていたな。

 それと、自分の種族を確か、エルダーダークハイエルフとか言っていたような。

 う~ん、前世の事はあやふやな所があるからな。

 兎も角会ってみたら分かるか。

 そう思い、僕達はその場を後にした。


  三日後。

 僕達は『ヘルモン城』を出て、ダークエルフ族の里である『黒森の里』に行く事にした。

 シェムハザさんに見送られて、僕達は城を後にした。

 道すがら、僕達は話し合っていた。

「さて、話を受けたのはいいのだけど、困った事がある」

「何かありましたか?」

 僕の問いにアリアンは首を傾げる。

 普通に考えたら、このままダークエルフ族の里に行って、恨みは捨ててお互いに共存しましょうとか言って、向こうが頷くはずがない。

 なので、向こうが頷く為の、交渉材料が欲しい。

「という訳で、カーミラさん」

「何かしら?」

「なんか、話の種になるものないかな?」

「う~ん。そうね」

 カーミラさんは顎に手を添えて、何かないかと考えている。

 暫くすると。

「そう言えば、今のダークエルフ族の族長は千年ほど前に、この樹海を出て大陸を行ったと言う話を聞いた事があるわ」

「大陸?」

 多分、海を越えた先にある大陸の事を言っているのだろう。

「リウイは分かるかしら? ワタクシ達がいるこの島の向こうにある大陸の事だけど」

「あ~、うん。なんとなくは」

 母さんも元々は向こうの大陸の生まれだと聞いているし、それに前世でも向こうの大陸で活動していたので分かる。

 でも、ハッキリと分かると言えば、怪しまれるだろう。

 何せ、この身体はまだ十歳になったばかりの上に、この領地に来るまで、碌に外に出る事がなかったのだ、それで知っていると言えば、不気味と思われるだろう。

 という訳で、曖昧に返す事にした。

「ふぅん。そう」

 カーミラさんは何故か、疑っている目で僕を見る。

 何でだろう? 訳が分からない。

「……まぁ、良いわ。それで向こうの大陸で歩き回り知識を得たと聞いているわ。その知識を里にもあ地帰った事で、里が一気に活性化したそうよ」

「へぇ、それは凄いな」

 どんな知識を得たのか、気になるな。

「それで、どのような知識を得たのですか?」

 アマルティアがカーミラに訊ねてきた。

「おや、アマルティアも気になるのかい?」

「はい。その知識を知る事で、部族に持って帰る時に使えるかも知れませんから」

「成程」

 まぁ、ダークエルフが得た知識だから、ダークエルフに価値で欲しい知識と考えた方が良いから、獣人族で使う場合は、少し応用が必要かもしれない。

「それで、どんな知識を得たんだい?」

 ちょっと気になっていたので、ワクワクしながら訊いた。

「えっと、確か、メプルとかいう甘い液体を作り出す技術と、果物を干して長期保存させる技術と猿酒とかいう酒を造る技術だそうです」

 メプル? もしかして、メープルシロップの事かな?

 あれって、カエデの木の樹液を煮詰めて濃縮させるものだけど、千年前にそんな技術あったかな?

『私が住む里には、甘い樹液を木があります。味は甘くて美味しいですよ』

 そんな事を思っていると、ふと前世の記憶が思い出した。

 あれは、領地運営をしていた頃だったな。

 ボルフォレという家臣が、ある日たわいのない話をしている時に、僕が砂糖を作った事を話した時にボルフォレがそんな事を言っていた事を思い出す。

 ただ、粘性がないそうなので、煮詰めてみたらどうだという話をした事がある。

 他にも猿酒の話もした事がある。

 果物を木や岩のくぼみに入れて発酵させると酒になるという話をした事がる。

 まさか、本当に?

 いや、まだそう判断するには早すぎるな。

「他にも、ある程度の高さになった木を伐採するとか、その伐採した木を使って交易をしたりしています」

 伐採に交易か。

 確かに、大きすぎ木は他の植物の成長を阻害するから、ある程度の高さになったら伐採した方がいいとか、そしてその木を加工して売れば、自分達では手に入らない物を入手できるとも話した事があったな。

 何か、本当にボルフォレのような気がしていた。

 そう思い返していると、前世の家臣の事を思い出すな。

 領地運営をしていると出てくるのが、野党や領地を越えて侵入してくる他部族の者達。

 そう言った者達を撃退する為、腕自慢を広く集めた。

 結果、応募してくれたのは全部で三百人ほどいた。

 中には、獣人やら鬼人族の者も居たが、僕としては特に雇うのに問題はなかった。

 応募の際、特に規定を決めていなかったのと、話を聞いてみたら行く当てがないそうなので、雇う事にした。

 無論、反対意見もあったが、全て却下した。

 そして、集めた者達を野盗退治やら侵入してくる他部族の撃退に当たらせた。

 結果、生き残ったのが十人程になった。

 士気が衰えない様に、適度なに休みを入れたのだが、それでも辞める者は多かった。

 更に、野党や他部族との戦闘で倒れた者も多かった。

 で、残った事を記念して、僕は生き残った者達全員に神金剛と神鋼と魔法銀を混合して作った合金で作った武具を下賜した。

 武具については、前もってその十人に欲しい武具があるかと訊ねてから作った。

 最初、渡した時、皆黙り込んだから作りが気に入らなかったのかな? と思っていると、皆声を出さない様に泣き出したから余計に驚いた。

 後で知ったが、この世界では部下に武具を下賜する事は、信頼しているという意味を持っているそうだ。

 それ武具を渡してからとものの、その十人は、とんでもなく活躍するようになった。

 何時の間にかこの十人の事を『十傑衆』とか『大賢者十将』とか呼ばれるようになった。

 最初の呼び方を聞くと、某ロボットアニメに出て来る悪の組織の幹部達を思いだすな。

 あの幹部達の中で一番好きだったのは、幹部の中で一番無口で片目の所に傷がある幹部が好きだ。

 その部下の編み傘を被った部下達は色々な意味で面白かったな。

「リウイ?」

「ああ、何でもない」

「情報と言えるのは、それぐらいですか?」

「ええ、これだけよ」

「まぁ、全く知らないよりも、少しは知っていれば、話は出来るか」

 そう思い、僕達は止めていた足を動かした。








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