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第72話 ようやく、天人族の族長に会える

「何だ、そうだったんですか」

「そうだったのね。ワタクシとした事が、とんだ早とちりをしたわね」

 アマルティア達は笑顔でそう言う。

 逆に僕は、倒れそうな身体を何とか立たせている。

 足は生まれたての子鹿のようにプルプル震えているし、少しでも気を緩めると、気絶しそうであった。

 偶に、母さんがつける稽古を経験していなかったら、正直死んでいたかもしれない。

 ありがとう。母さん。

 でも、気絶したら無理矢理起こして、そして気絶させて起こすという無限ループみたいな事は止めよう。

「は、はなしを、きいて、くれて、たすかるよ・・・・・・・・」

 僕はそう言うのが、精一杯だった。

 そんな状態の僕を見て、二人は流石にやり過ぎたなと思ったのだろう。

 僕の傍にかけ寄る。

「大丈夫ですか? 回復魔法でもかけますか?」

「ワタクシが治療しましょうか?」

 二人がほぼ同時に言う。

 それを聞いて、二人は互いの顔を見て睨み合う。

 あの、メンチ切るのはいいから、どっちでも良いから、早く傷の治療を。

 そう思って居ると、ドアがノックされた。

「失礼します。リウイ殿。お話が、・・・・・・・これは⁉」

 僕をこの部屋まで案内してくれた人が部屋を見るなり言葉を無くす。

 気絶している天人族の女性達。

 部屋は、まるで襲撃を受けたかのように、何処かしこも傷だらけ。

 置かれていた家具の殆どが破壊されていた。

 こんな惨状を見たら、誰でも言葉を失うだろう。

「な、何があったのですか⁉」

 あ~、何て言えば良いのかな。

 多分だけど、この二人不法侵入したみたいだから

 何か言わないといけないのだろうけど、ちょっと痛みで言葉が出ない。

 どうしようと思って居る所に、アリアンが現れた。

 そして、天人族の人に近寄り話しかける。

 耳元に話しかけているけど、何を話しているのだろうか?

 あっ、離れた。

「・・・・・・・ま、まぁ、事情はよく分かりました。ですが、その」

 天人族の人は言葉を濁らせているけど、この惨状を見たらなぁ。

 正直、アリアンは何って言ったんだが気になるな。

「そちらは、我々で何とかしますから、大丈夫です。その代わり、この接待してくれた者達は」

「分かりました。直ぐに人呼んでいきます」

 そう言って、一礼して天人族の人は部屋を出て行く。

「あ、ありあん。なんとかって、いうけど、その、どうする、つもりだ?」

「お任せください。マスターはソファーに休んでいてください」

 僕は返答代わりに頷いた。

 そして、僕は傍にある椅子に座る。そのまま休んでいると、瞼が重くなり眠りについてしまった。


 目が覚めると、そこは惨状になる前の部屋に戻っていた。

 僕が寝ている間に何があったんだ?

 匠も驚くビフォーアフターだな。

「あっ、起きましたか。マスター」

「うん。これは、いったい」

「頑張りました」

「いや、それは分かるけど」

 どう頑張ったのだろうか? 気になる。

「晩御飯はそこにありますので、どうぞ。好きなだけ食べて下さい」

 アリアンが指差した先には、テーブルの上に香ばしい香りを漂わせる料理が大量に置かれていた。

 えっ⁉ 晩御飯?

「もしかして、もう夜なのか?」

「はい。凄く疲れていたのですね」

 だろうな。じゃなかったら、夜まで寝ないよな。

「それと、料理を届けに来た天人族の者からで、明日族長に会えるそうです」

「ああ、そうなんだ」

 族長に会えるのか、どんな人なんだろうな。

 そう思っていると、僕の隣にアマルティアが座る。

「さぁ、リウイ様。どうぞ」

 スプーンで掬った物を、僕の口元に近付ける。

「これは?」

「あ~ん、です」

 久しぶりにされた気がする。

 これは、口が開けないと駄目だな。

 そう思い、口を開けると、カーミラさんがその隙間に何かを入れる。

「んぐっ⁉」

 いきなり、入れられて驚いたが、とりあえず咀嚼してみると噛めたので食べ物だと思い、味わう事もしないで飲み込んだ。

「美味しかった?」

「あ、ああ、うん」

 正直、いきなり過ぎて分からなかったけど、とりあえず頷く。

 その反応を見て、アマルティアは頬を膨らませた。

 そして、スプーンを口元に近付ける。

「あ~ん」

 さっきの続きですか?

 でも、それってさっきと同じ事になりませんか?

 僕はそう思いながらも食事をした。

 二人に挟まれながら。


  翌日。

 何故か、アマルティアとカーミラさんに挟まれて一夜を明かした僕。

 何で、抱き枕にされながら眠るのだろうと不思議に思いながらも、両腕に当てられる胸の感触で、どうでもいいかと思う事にした。

 目が覚めると、僕は温かいやら息苦しいやら気持ち良いやら色々な思いを感じた。

 まぁ、一言で言えば、鼻血が出なくてよかっただな。

 そして、朝食を取り終わると、僕達は謁見の準備をした。

「これで、いいかな?」

 僕は着ている服をアリアン達に見せる。

「特に問題ありません」

「ええ、全く」

「むしろ、これで文句をつける人がいたら見ていたいですね」

 三人の反応を見るに、問題はないようだ。

 じゃあ、案内の人が来るまで待つ事にしよう。

 そうしてたわいのない話で時間を潰していると、案内の人がやってきた。

「お待たせしました。我らが族長の下にご案内いたします」

 そう言われて、僕達は案内の人と共に族長が居る部屋に向かう。

 途中、天人族の人達と会う。

 老若男女様々な人達が、僕達を見に来たのだろうか?

 皆、僕達を興味津々な目で見ている。

 そんなに珍しいのかなと思っていると、昨日僕を接待してくれた天人族の女性達を見つけた。

 女性達は僕を見るなり、笑顔で手を振って来る。

 僕も手を振り返そうとしたら、背筋がゾワゾワした。

 嫌な予感がしたので、僕は手を下ろした。

 すると、背後からふぅという溜め息が聞こえた。

 何故だろう。手を振らなくてよかった気がする。

 そう思いながら、僕達はある部屋の前に着いた。その部屋は大きな扉で、扉の前に衛兵が居た。

「魔国の使者の方々をお連れした」

「はっ、ただいま、開門いたします」

 衛兵がそう言って、身体をずらして僕達を通れるようにした。

「魔国の使者。リウイ様方の御入来っ」

 衛兵がそう言うと、扉が開きだした。

 案内の人が、歩き出したので、僕達もその後に続いた。

 部屋の中に入ると、そこは謁見の間のようであった。

 吸血鬼の都の王城は、どちらかと言うと黒を基調とした色で作られていたが、こちらの方が白を基調とした作りだった。

 部屋全体が白色の建材を使われており、床も真っ白な大理石を使っているようだ。

 そして、部屋の奥には石段があり、その石段の頂上にある椅子に座る者が居た。

 誰だろうと思い見ていると、女性だった。

 何というか、凄い恰好をしていた。

 黒革のボンテージを着ており、母性の象徴といえる物も結構大きかった。

 翼と着ている服と同じ黒い髪。赤い瞳。綺麗な顔立ちであった。

 背中には黒い翼が四つあった。

 正直、女性というよりもその恰好に驚いた。

 女性がそんな刺激的な格好をしているのだ。その服を使う職業の人だったら分かるけど、ここは謁見の間だ。どうして、そんな格好をする人が居るのだろうか?

 案内の人はある程度歩き、石段から少し離れた所で止まり跪く。

「シェムハザ様。魔国の使者をお連れしました」

「ご苦労。下がっていいわ」

「はっ」

 案内の人にシェムハザと言われた女性は案内の人を労うと、下がらせた。

 案内の人はシェムハザさんに一礼して、少し下がると、振り返り僕達にも一礼してから部屋から出て行った。

 そして、部屋には、僕達とシェムハザさんとその護衛の人達だけとなった。

「では、自己紹介からしましょうか。天人族族長をしているシェムハザよ」

 凄い自信満々な口調で、自己紹介してきた。

 ここは気おされない様に、僕も自己紹介せねば。

「魔国の使者である。リウイだ。お初にお目にかかる」

 僕は一礼する。

「昨日はお楽しみだったようね」

 おぅ、異世界で女性の人と一緒に宿屋に泊まると、翌朝宿屋の主人に言われる言葉ではないか。

 まさか、こんな場面で言われるとは。

「というか、その一因はそちらにあるのでは?」

 天人族の女性達が接待したから、そうなったのだから。

「さぁ、どうだったかしらね?」

 素知らぬ顔をするシェムハザ。

 ふむ。なかなか面の皮が厚い人のようだ。

 さて、どのように話しを進めようか。

「で、ここまで来たのだから、何か話でもあるのでしょう? 聞いてあげるわよ」

 いや、貴方の部下が無理矢理連れてきたんですけど。

 何で、僕達がやってきて話しがあるという感じになっているんだ?

 ふ~む。理由は分からないが、とりあえず話を進めるか。

「ちょっと、お待ちなさい」

 口を開こうとしたら、カーミラさんが先に口を開いた。

「何かしら?」

「話しをする前に、一つ聞きたい事があるのだけど良いかしら?」

「どうぞ」

 シェムハザさんは手で話を促した。

「昨日、ダークエルフと小競り合いをしていたようだけど、何が原因なのかしら?」

 あっ、それ思った。

 小競り合いをするにしても、何かしら理由がある筈だ。

 その理由を訊けば、交渉の材料になるかもしれない。

 流石は、カーミラさんだ。

 僕は後ろを振り向くと、よくやったと言わんばかりに頷いた。

 それを見て、カーミラさんは微笑む。

 何故か、アマルティアが悔しそうな顔をしているけど、何故だ?

「んっ、……それは……」

 シェムハザさんは言葉を詰まらせた。

 これは、何かあるようだな。


 




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