第70話 時には流れに身を任せるとするか。
僕らが観戦しているのも知らず、ダークエルフと天人族達の戦いは続いてた。
互いの得物をぶつける事で火花が散り、響かせる金属音。
時折、魔法を放つが、相手も魔法を放ち相殺していた。
数、質共に互角といった所だな。
さて、双方の勢力の指揮官はどうするつもりだ? このまま泥沼状態の戦闘をするか、それとも適当な所で撤退するのかな?
そのまま見ていると、偶々相殺し損ねた魔法が僕達が隠れている所に飛んで来た。
「まずっ」
「下がってください」
アマルティアが前に出た。
そして、腰に差している剣を抜き、魔法を切り裂いた。
「えっ⁉」
剣で魔法を切り裂くとか、何処の漫画だよ!
前世でも見た事がなかった。
「御無事ですか?」
「あ、ああ、今のって?」
「戦技・練気操剣です。この技は魔法を断つ事が出来る技です」
へぇ、そんな技あるんだ。こういうのを見ると、千年経ったというのが良く分かる。
と、流石にそんな技を使ったのだから。気付かれるか、両陣営が僕達を見る。
「何者だ⁉」
「魔人族、獣人二人、吸血鬼か。何とも妙な組み合わせだな」
ふむ。ばれたのなら仕方がない。ここは僕の立場を言って、向こうの反応を見よう。
「僕は魔国の使者である。リウイ。この樹海で暮らしている部族の者達と話をする為に来た」
なるべく偉そうな口調で話しをする。
さて、向こうの反応はどうかな。
「魔国だと? 樹海の外にある国だな? 何の話に来たのだ?」
天人族の人達は、何で僕達がここに来たのか分からないようだが、ダークエルフの人達は分かっているようだ。
「ふん。精霊から話しは聞いている。この樹海で暮らしている部族を全て魔国に従属させる為に来たのであろう」
精霊に聞いた? 確かにダークエルフは精霊と交信できると聞いた事はある。そんな大っぴらに話をしていないのだけど。
「ここに来たという事は、我らも従属させる為に来たようだが、そうはさせんぞっ」
そう言って、ダークエルフの人は、短刀を放った。
放たれた短刀は僕に直撃コースを取っていた。
まずい。防御せねばっ。
と思って居ると、魔法が飛んで来て、その短刀を一つ残らず打ち落とした。
何処から魔法が放たれたんだと思って居ると、ダークエルフの人が叫んだ。
「貴様、何故邪魔をした⁉」
ダークエルフの人が見ている先を見ると、天人族の人が居た。
どうやら、魔法を放ったのはあちらの人のようだ。
「魔国の使者と言ったが本当か?」
僕はその通りと頷く。
「そうか。では」
そう言って、天人族の人が浮かびあがり一気に加速した。そして、僕に近付く。
「マスターっ⁉」
くっ、こんなに早いと対処ができない。
咄嗟に防御した。だが、天人族の人は攻撃などせず、僕を持ち上げた。
「へっ⁉」
「撤収する」
僕を持ち上げた天人族の人が、そう言うと、お仲間の天人族の人が浮かびだして、そのまま何処に飛んで行く。
僕を持ち上げた天人族の人はその一団の後に付いて行く。
「あの、どうして、僕は持ち上げられているのでしょうか?」
「我々の城に案内する為だ」
「でしたら、僕の連れも一緒に」
「事は急を要するのでな、何、大丈夫だろう。あの者達は我らの城に付いてこれる」
何処から、そんな根拠が出てくるのだろう?
分からないけど、ここは流れに身を任せるとするか。
僕は天人族の人に持ち上げられたまま、彼らが言う城に向かう。
天人族の人に拉致(承諾もなしに、お持ち帰りされたので間違いではない)された僕は、木々を避けながら器用に飛び回る天人族の人達に感心していた。
そして、どれくらい飛んだかは分からないが、茂みを越えると、今度は拓けた場所に出た。
周りに木々はなくまるで、伐採したかのようだ。あまりに何もないので皆伐したのかな?
その拓けた場所のに、ポツンと大きい城が立っていた。
この大きさは、例えるなら某運命の夜に出て来る錬金術師の一族が所有している城を一回り大きくしたような感じの大きさだ。
「あれが、天人族達の住処?」
「そうだ。『ヘルモン城』だ」
ふむ。堀はあるけど、深くないな。こんな作りで籠城とか出来るのかな?
そう思いながら、僕達は城のテラスの一つに降り立った。
僕と僕を持ち上げた人以外は、直ぐにテラスから通じる道へい行ってしまった。
僕もついでに降ろされた。
そして、直ぐに天人族の人が出迎えに来てくれた。
「お帰りなさいませ。ラメエル様」
「うむ。族長殿はおられるか?」
「はっ。ただいま、執務室にて仕事をしている最中です」
「そうか。族長に大至急話があると伝えてくれ」
「畏まりました。ところで、そこに居る魔人族の者は如何なさいました?」
「これは魔国の使者だ」
「使者ですか。では、直ぐに応接間の準備を」
「任せる」
天人族の人が出て行った。
ここに来て、ようやく僕を持ち上げて連れてきた人の名前が分かった。
ラメエルね。
こうして見ると、彫りが深い顔をした男性だな。
背丈も標準の男性身長よりもあるけど、スマートな体型だ。
とても、僕を持ち上げてここまで飛んで来たとは思えないくらいだ。
「しばし、ここで待て。応接間に着いたら、細かい説明をしよう」
「お願いします」
拉致された際、何故こんな事をしたのか経緯を言ってくれなかったので、そこを教えてもらえると助かる。
まさか、魔人族が珍しいから連れて来たと言われたら、正直反応に困る。
それから応接間の準備が終るまで、僕達はテラスで待っていた。
会話をしようにも、続かなかった。
「ラメエルさんは、この天人族の中でも高位なのですか?」
「そうだ」
「この城は築城してから、どれくらい経つのですか?」
「知らん」
「この城には、部族の者が暮らしているのですか?」
「部外者のお前に教える必要は無い」
はい。会話終了。
ここまで、話が続かない人は初めてで。
前世では、殆どの男子に敵意を持たれていたけど、話をしてももっと会話出来たぞ。
元々、それほど話し上手ではなかったので、これ以上は無理だった。
お願いです。早く、誰か来てください。
その願いが届いたのか、先程、僕達を出迎えてくれた人が来た。
「お待たせしました。応接間へとご案内いたします」
助かった~。あの、まま会話が無い状態でいるのはきつかった。
僕達は天人族の人の案内で、応接間へと向かう。
そして、応接間の前に着くと、案内してくれた天人族の人が扉を開けると。
「「いっらしゃいませ」」
何か、天人族の女性達が出迎えてくれた。何故?




