???の胸の内
今回は、第三者視点で送ります。
オルレンピエーニュ樹海にとある場所。
そこは生きた木を使った家と、天幕に似た建物が多数存在していた。
その一画に、天幕の中で青白い肌で銀髪の男女が数人いた。
他に特徴と言えるのは、耳が尖っている事だろう。
「そうか。人獅子族の村に魔国の使者が来たか」
「はっ。精霊の話しだと族長自ら、魔国の使者と『獣王の掟』の名の下で決闘が行われたと言っています」
「勝敗は?」
「魔国の使者が勝ったそうです。それにより、人獅子族は魔国に従属する事が決まったそうです」
「なんと、ネメアーはこの樹海でもかなりの実力者だ。いったいどのような方法で勝ったのだ?」
「それが、精霊が言うには『面白い勝ち方をした』としか言っていないのです」
「何だ、それは?」
「兎も角、魔国の使者がいずれは、我らダークエルフ族の縄張りであるこの『黒森の里』に来るのも、時間の問題だ」
「それまでに、我らは決めねばならない。従属か抵抗のどちらかを」
「族長はどのような、お考えで」
ダークエルフに一人が、一番奥の上座に座っている者に声を掛ける。
外見年齢は四十代ぐらいにしか見えないが、ダークエルフは長命な種族なので、見た目だけでは年齢は判別できない。
豊かな顎髭を生やし、鷹の様に鋭い目付き。顔には皺の他に右頬に横一文字の傷がある。
灰混じりの銀色の髪を後ろで一つに結んでいる。
ダークエルフ族の民族衣装に身を包み、外套を羽織っている。
「・・・・・・魔国には従属はせん」
族長と呼ばれた者は、少し溜めてから、自分の意見を言う。
その意見を聞いて、天幕に集まった者の反応は二通りに分かれた。
その意見に喜ぶものと落胆する者。多いのは後者の方だ。
「しかし、族長。このまま使者が他の部族の所に行き、もし他の部族が全て従属したら、我が部族は孤立する事になります」
「そうなったら、我らは滅亡するしかないではいかっ」
族長の意見に反対の者達が自分の意見の述べる。
族長は黙ってそれを聞き、静かに言う。
「我らはこの世界の成り立ちから存在しているエルダー・ダーク・ハイエルフだ。いずれは滅ぶべきなのかもしれん。それがその時であったとうだけの事であろう」
族長は滅ぶのであれば仕方がないと言う。
それを聞いて、天幕に集まった者達は受け入れられないとばかりに叫ぶが、族長は聞き入れなかった。
やがて、会議は終わり、天幕から出て行った。
族長、族長補佐、相談役の三人を除いて。
そして、族長補佐が族長に話し掛ける。
「族長」
「ここには、もはや我らしかおらん。普段通りで良いぞ」
「では、ボルフォレ」
「何だ。我が友ニゲルよ」
「何故、従属をしない。従属すれば、恩恵がもたらされる事は知っておろう」
「そうだな」
「であれば、何故だ?」
ボルフォレは何も言わなかった。
そんなボルフォレの心情を知っている相談役は代わりに答える。
「嘗ての主君の義理立てじゃよ」
「チョルヌイ」
「ボルフォレ、言いたい事は言わねば分からんよ。ボルフォレが族長になる千年前に、儂をお供にして樹海の外に出たのは、お主も知っておろう」
「うむ。見聞を深める為と訊いているが」
「その時に、向こうの大陸に渡ったのだが、その時に面白い人間に出会ってな」
「人間にか?」
ニゲルの顔には、そんな者が居るのかという顔をしていた。
「素晴らしい御方でな、儂らは仕える事にしたのだ」
「ちょっと待て、その時は、魔人族が他種族に戦争をした所為で、各種族の小競り合いが絶えない時代だったと、話しに訊いているぞ。そんな時代に良く仕える事が出来たな」
「魔法で姿を変えてな。最もその御方には、儂らの変化を気付いていたようだが、重用してくれたぞ」
「そこまでして仕える程の者だったのか」
「うむ。ボルフォレの後ろに剣が掛かっているであろう」
ニゲルはボルフォレの後ろに飾られている剣を見る。
かなり曲がっている剣であった。
鞘に納まっているので、諸刃か片刃かは分からないが。柄も鞘も鍔も全て見事な作りであった。
実用性を重視しつつ、ちゃんと装飾も施されている。
華美ではないが、それでも美しいと言えた。
「あの剣は、ボルフォレがいつも傍に置いている剣であろう」
「その剣はな、その仕えた主君が功績を立てたボルフォレに下賜した物だ」
「ほぅ、あのような見事な作りだ。さぞ、良い物を使ったのだろう」
「神金剛と神鋼と魔法銀を混合して作った合金じゃぞ」
「・・・・・・はぁ⁉」
「何という、合金じゃったかな。名前までは忘れたが、その御方が功績を立てた家臣十名にその合金で作った武具を下賜したのじゃ」
「し、しんじられない。今言ったのは、どれも高級な鉱物ではないかっ」
「気前が良い主君じゃった。儂も魔法銀の総作りの槍を下賜してくれたのじゃ」
「じゃあ、ボルフォレは今でも、その人間に忠誠を誓っているという事か?」
「そんな感じじゃ」
「・・・・・・笑っても構わんぞ。もう、亡くなったというのにな」
ボルフォレは自嘲するかのように笑みを浮かべる。
「友よ。その人間はお主がそこまで忠誠を誓える者だったのか?」
「無論だ」
ボルフォレは即答して、立ち上がった。
「例え、生まれ変わってもお仕えしたいと思える御方であった」
そう言って、ボルフォレは天幕から出て行った。
残ったニゲルは、チョルヌイに訊ねた。
「その人間の名前は何と言うのだ?」
「千年経っても、主君の名前は忘れる事は出来んよ。名は」
ニゲルは生唾を飲み込む。
信頼できる友人にして尊敬できる族長であるボルフォレが、そこまで惚れこんだ人間という事で興味が湧いたからだ。
「名はイノータと言っておったな」




