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第67話 人獅子族の村に着いたけど

 数日ほど歩いて人獅子族の村である『プライド』にようやく着いた僕達。

 その村の入り口で、衛兵の人に族長に話しがしたいと伝えた。

 衛兵の人も、最初僕達を見て胡散臭そうな物を見るような目で見ていたが、カーミラさんを見た瞬間、「き、吸血鬼⁉」と叫んで、そのまま村へと行ってしまった。

 とりあえず、入口で待っていると村人達が、衛兵の叫び声が聞こえたのか、それとも嗅ぎ慣れない匂いを嗅いで来たのか分からないけど、なんか人だかりが出来た。

 僕達をジロジロ見ながら、スンスンと鼻を動かしている。何か臭うのかな?

 村人達の不躾な視線を感じながら、衛兵が戻って来るのを待っていると、同じ人獅子族の人達の中で一際大きい体格をしており、白い毛皮の人獅子の人が現れた。

「我は人獅子族の族長ネメアー・ゼへクレスだ。お主らの名は?」

 僕が名乗ろうとしたら、カーミラさんが前に出た。

「わたしは吸血鬼族のカーミラ。獣人の二人は護衛ですので、説明は省かせてもらいます」

 別に言っても良いと思うのだけど、アマルティアは不満そうだったがアリアンは何とも思っていないようだ。カーミラさんは気にせず、話を続けた。

「そして、こちらの方はリウイ様。魔国の王、魔王の末の王子でございます」

「王子? 何でそんな者がここに?」

「魔国の使者として、この樹海に来たのです」

「使者?」

 ネメアーさんは首を傾げたが、少し考えて口を開いた。

「ここでは何だ。我が家に来られよ」

 ネメアーさんが顎でしゃくるので、僕達は村の中に入った。

 そして、ネメアーさんを先頭にして、村の中を歩いた。

 ふむ。こうしてみると、家の作りは木造のようだな。てっきり、洞窟を住居にしているのかなと思ったけど違ったか。作りから見て、藁葺の家みたいだな。

 そして、一番大きな家の前に着いた。

「入れ」

 ネメアーさんに言われて、僕達は家の中に入った。

 家の中は、天井が高く風通しの良い作りであった。

 部屋の中央に囲炉裏みたいな物がある所に、何かの藁様の素材で作られた座布団が幾つもあった。

 多分、居間と思われる所に案内したネメアーは先に座る。

「好きに座れ」

 そう言われて、各々好きに座る。

 勿論、僕はネメアーさんの対面の所に座る。

「さて、話を聞こうか」

 ネメアーさんが訊ねてきたので、僕がここに来た理由と目的を話した。


「ふざけるな!」

 話しを聞き終わったネメアーさんは床を叩いた。

 う~ん。まぁ、普通はこの反応だよな。

 吸血鬼族の公王みたいに、何か話す前に従属するように考えているのはおかしいと思う。

 さて、ここからどうやって話しを持っていこうかな。

「何故、我ら誇り高き人獅子族が魔国に従属せねばならんのだっ」

「そうした方が、そちらの部族が豊かになりますけど」

「従属されて得られる豊かさなど、自由などないではないかっ」

「その代わり、人獅子族は生き残ります」

「自由が無い生き残りなど、牙を失くした獣と同じだ‼」

 う~ん。これは結構頑固だな。

「ですが。牙が鋭すぎる獣は狩られますよ」

 今迄、黙っていたカーミラさんが話に割り込んできた。

「ふん。我らと吸血鬼どもと一緒にするでないわ! 所詮、血を吸うだけにしか使わない牙しかもたん奴らは、何もせずに従属するとは軟弱者達とはなっ」

「な、何ですって⁉」

 あっ、カーミラさんが怒りだした。

 まずいな。このままだと一悶着おこりそうだ。どうしたものかな。

「ふん。お望みなら何度でも言ってやるわ! この吸血コウモリ共が‼」

「二足歩行の猫が何を言いますか⁉」

 何か、子供の喧嘩みたいになってきたぞ。

 仕方がないから、僕が仲介するしかないか。

「まぁまぁ、御二人共、落ち着いてください」

 二人は同時に僕を見る。

「ふん。お主、リウイとか言ったな、お主は我らを従属させた場合、どのような恩恵を与える?」

「そうですね。・・・・・・まず、するとしたらこの部族で採れる物を特産品にして売り出すかな」

「トクサンヒン?」

「この家に入る前に村の中を通った時に、村の人達が作っていた物は何ですか?」

「あれは革だ。狩った魔獣の毛皮をなめして、鎧にしたり服にしたり弓の素材の一部にしたりしている」

「その革を売って、この場所だと取る事が出来ない物を交易で得るとか」

「その物とは?」

「塩とか」

「むっ⁉」

 ネメアーさんは顔を顰めた。

 こんな樹海の中だ。塩なんか採りずらいだろうな。

 そこを付け込むのも、人としてどうかと思うが、これも交渉術という事で目をつぶろう。

「…………」

 ネメアーさんは目を閉じて考え込んでいる。

 さて、どんな答えをだすかな?


  村にある広場で、僕は何故か立っていた。

 向かいには、ネメアーさんが身体を屈伸していた。

 準備運動をしているのだろう。

 そして、広場には地面よりも少しだけ高い石畳があった。

 その石畳を囲むように、村人達とアリアン達が居る。

 アマルティアは不安そうな顔でしており、カーミラさんとアリアンは特に何とも思っていない顔をしていた。

 どうして、こんな所にいるのかと言うと訳があった。

 僕達の話しを聞いて、少し考えたネメアーさんはこう言ったのだ。

『ここは『獣王の掟』で決めようではないか』

 獣王の掟。

 何か、カッコいい響きだと思いつつも、どんな事をするのか尋ねたら。

 一騎討ちして勝った方の願いを叶えるという掟と言っていた。

 ようは、あれだ。決闘して勝った方の言う事を聞けという事だ。

 この部族は、脳筋なんだなという事が良く良く分かった。

 大事な事なので、二回言いました。

 それで、僕は村にある広場にいます。

 決闘をするという話しを聞いたのか、村人達も観戦するようになっていた。


 正直、何でこんな事を思うが、まぁ、勝てば従属すると事前に言質を取ったので問題ない。

 負けたら、特に何もないそうなのでそれだけが気が楽だった。

 準備運動が終ったのか、ネメアーさんは石畳にあがる。

「皆、今日は樹海の外の者がやってきて、我らに人獅子族に従属を求めてきた。それを聞いて、我は『獣王の掟』で決める事にした。皆もそれで良いな!」

 ネメアーさんが叫ぶと、歓声があがる。

 その歓声に包まれながら、僕は石畳にあがる。

 石畳にあがると、ネメアーさんは僕を見る。

「ふん。護衛の者が出るかと思ったが、お主が出るとはな」

「僕も男ですから」

 言外に、女性に戦わせるのは気が引けると言う。

 言葉の意味が分かったのか、ネメアーさんは口角をあげる。

「ふっふふ、少しは骨があるようだ。さて、今回の決闘のルールを説明しよう」

 僕は続きを促すために頷いた。

「別に殺し合いをしても良いのだが、魔国の使者という事で殺すのは礼儀に反する。故にハンデをつけよう」

「ハンデですか?」

「そうだ。我が背中を地面に着けたら負け、お主は戦闘不能になったら我の勝ちとという事でよかろう」

 舐められているなと思うが、族長という事なのだからそれなりの実力者なのだろう。

 正直、実力差がどれだけあるか分からないので舐められても仕方が無いか。

 だからと言っても、負けるつもりはないけどね。

「今の条件で問題はないな?」

「ありません」

「では、始めるとしよう」

 ネメアーさんは身構えた。

 得物は持ってないのが、爪が何処かのミュータントみたいにシャキーンと伸びた。

 僕の得物は、この部族の者が使っている剣を借りた。

 まだ、武術の鍛練で色々な武器を使っているのだが、どれもピンとこない。

 前世では槍を使っていたので槍を振るったのだが、何故かしっくりとこなかったのもあるし、転生したのだから、今生は別の武器を使うのも良い気がしたので、今の所、得物という物を持っていない。

 自分の護身として剣を差しているけど、あくまでも護身用だ。

 護身なので、刀身が短く決闘向きではない。

 それで剣を借りたのだ。戦闘用だから、刀身も長く、僕でも振れるようの重量がある剣にした。

「ふん。自分の得物がないのに、決闘するとは、馬鹿なのかそれとも、それだけ技量があるのか?」

 ネメアーさんは面白そうに口角をあげる。

「ふっふふ、さて、負けた時はどんな吠え面をかくか見ものだな」

 空気が変わった。前世で感じた戦場の空気だ。

 流石に練習試合みたいに『始め』という声は掛からないだろう。

 っと、始める前に一つ聞いておこう。

「その僕は、何を使っても良い(・・・・・・・・)のですよね?」

 僕がそう尋ねると、ネメアーさんは鼻で笑う。

「勿論だ。お主が何を使っても構わん。まぁ、何を使っても、我には勝てないだろうがな。ガッハハハ‼」

 ネメアーさんは胸を張って笑い出した。

 ふっ、その思惑通りにいくとは思わない方が良いと思いますよ。

 言質は取ったので、採取した物を使うとしようか。


  お互い構えながら、ジリジリと動く。

 開始の声はなかったが、こうして構えたという事が、始まりという事にだろう。多分。

 そして、ネメアーさんが飛び掛かって来た。

 口を開けて牙を見せながら、爪を振り下ろす。

 その爪は僕を簡単に引き裂くだろうと思えるくらいに鋭そうだった。

 爪が迫る中、僕は慌てず懐に手を入れて[ある物]を出す。

 そして、その出した物を、ネメアーさんに投げつけた。

「猪口才な、こんな、ものをっ⁉」

 ネメアーさんは投げつけた物を手で受け止めた。

 その際に、投げた物から匂いが出たのだろう。顔が緩みだした。

「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ~~~~~‼⁉」

 そして、手に持っていた物の両手で持って匂いを嗅ぎながら、地面を転がる。

 恍惚とした顔を浮かべながら転げまわるその姿は猫のようだった。

「……まさか、ここまで効くとは思わなかったな」

 僕は懐に入れていたカタリアミントの実を出してみた。

 この形がマタタビに似ていたから、投げたけどここまで効果があるとは思わなかった。

 正に、猫にマタタビいや、カタリアミントか。

 先程の条件では、ネメアーさんが背中を地面に着けたら負けという条件だった。

 今のネメアーさんは地面に転がりながら、カタリアミントの匂いを嗅いでいた。

 背中は地面についている。

 これって、僕の勝ちで良いんだよな?

「にゃ、にゃあああっ・・・・・・・・はぁ⁉」

 あっ、正気に戻った。

 ネメアーさんは立ち上がり、身体に着いた土などを払い落とした。

 そして、周囲を見る。

 村人たちは居たたまれない目で、ネメアーさんを見ていた。

「あ、ああ~、ゴホン。うん。あれだ。・・・・・・今のは練習。次からが本番だ!」

 うわぁ、この人、大人げないな。

 というか、もう一度やったら、今度こそ僕が負けるので、それは無しにしないと駄目だな。

「えっ、そちらは背中を地面に着けたら負けという条件だったと思いますが?」

「あ、あ~、お、お主が変なモノを使ったから無効試合だっ」

「事前に何を使っても良いと、ネメアーさんが言ったと思いますが?」

「うぐっ」

「負けたのに認めたくないから、もう一回するとか『獣王の掟』そんなに簡単なものなのですか?」

「ぐ、ぐうううううっ」

 悔しそうな顔をしているけど、その手にはカタリアミントを持っているので悔しいと思えないのだけど。

 さて、このまま追い詰めたら面倒な事になりそうなので、誰かに仲介して貰って納得してもらおうか。

「何だ、この騒ぎは?」

 そう考えていると、女性の声が聞こえてきた。

 その人は、猫耳が生えた色素が薄いピンク色の女性だった。

 綺麗な顔立ち。青い瞳をしていた。

 そして大玉スイカぐらいはありそうな胸。くびれた腰。胸に反して引き締まった尻。

 う~ん。何というか、凄いスタイルだ。

 と、見とれていると何故か寒気がした? 何故だろう?

 まぁ、いい。今はそんな事よりも、この人が誰なのか知るのが大事だ。

「失礼。貴方は?」

「儂か? 儂はリオン・ゼヘクレス。そこに居る男の女房だ」

 ネメアーさんを指差して言う。ネメアーさんは族長だから、族長の奥方さんか。

「族長の奥方様でしたか。僕はリウイ。魔国の王子でこの樹海に使者としてきました」

「使者?」

 リオンさんは首を傾げる。

 そうしていると、後ろから三人ほど女性が現れた。

「ああ~、疲れた。今日は獲物は多かったけど、逃げ回ってばかりで追い詰めるの面倒だったわね」

「そうね。うん? 母かあ様、どうかしたのですか?」

「母さん、どうかしたの?」

 何か、リオンさんにそっくりな女性達が現れたぞ。

 年齢はバラバラだけど。皆、綺麗だ。

「「………………」」

 皆さん、僕をジッと見ている。

 うん。何か、気恥ずかしいな。

「ここでは、何だから家で話そうではないか」

 と、リオンさんが言うので、僕も了承したとばかりに頷いた。



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