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第42話 十二氏族と交渉しよう

 捕縛したという報告を受けて、兵士達に待機命令を解除させて、フェル姉が戻って来るのを待った。

 そして、何人かの部下に頼みごとをした。

 頼んだ者達は、ちょっと怯えたような顔をしたがそれでも頼むと渋々だが従ってくれた。

 さて、どっちが先に戻ってくるかな?

 そう思いながら、執務室で仕事をしながら待っていると、先に戻って来たのは部下達の方だった。

「領主様、お頼みされた物を持ってきました」

 部下の人がそう言って、執務室に持ってきたのは大きな瓶だった。

 僕はその瓶の蓋を取り中身を見た。

「うん。これで良し」

「領主様、これは?」

「『清海』の水だよ」

 僕がそう言うと、レイモンドさんは吃驚して身を引いた。

「こ、こここ、これはあの呪われた湖の⁉」

 そんなに驚く事かな?

 ああ、そっか。

 そう言えば、まだレイモンドさんには言っていなかったけ。

「落ち着け。調査の結果『清海』は塩湖という事が分かった」

「塩湖? 海の水と同じ位にしょっぱい水で出来た湖の事ですか」

「その通りだ」

「ですが、塩水を飲んで死んだ人間など聞いた事もありません」

「恐らくだが、この『清海』の水には目に見えないが身体に入れば体調を悪くする物が入っているのだろう。ろ過をして煮れば、塩が出来るしにがりも出来る」

「塩とにがりですか。にがりとは昨日、持ち帰って来た物ですね。名前だけは知っていましたが、まさかあの水で出来るとは」

「早速だが、漏斗に小石、砂、木炭、布の順で居れて筒の下に瓶を置き、漏斗にこの水を入れる。そして、流れ出て来た水を今度は鍋の中に入れて煮込んで、塩とにがりをつくってくれ」

「はぁっ、畏まりました」

 レイモンドさんは瓶を持って、厨房に向かった。

 少しして、にがりと塩が出来たと言うので、僕は塩は日が当たる所に置いて乾燥させて、にがりの方は料理長に豆腐を作れと命じた。

 今朝の食事で煮込んだ豆はまだあったのだが、にがりがなかったので豆腐が出来なかった。

 昼に出も誰か『清海』に行かせて、水を汲んできてもらおうと思っていたので丁度良かった。

 僕は豆腐が出来るのを待っていると、フェル姉がもう少ししたら都市に戻ってくると報告を受けた。

 好都合だ。豆腐と塩を見せて、イシメオン族の者達と交渉しよう。

 レイモンドさんに出迎えに行かせて、僕はソフィーと一緒に執務室で仕事をしていると、外が騒がしかった。

 ふむ。これは、フェル姉が帰って来たな。

 僕は仕事の手を止めて部屋を出た。

 領主の館出て玄関の所で待っていると、フェル姉が部下と共に帰ってきた。

 見た所、どこも怪我はしていないようだ。良かった。

 フェル姉は騎乗している魔獣から降りると、僕の所まで来た。

「お帰り、むぎゅ」

「ただいま~、ウ~ちゃん」

 僕の所に来るなり抱き締める。

 その大きな胸に顔を埋められるのは気持ち良いし嬉しいのだが、何か後ろからティナの視線がすんごくきつい。何故?

「こほん。領主様、フェル様捕まえて来た者達は如何なさいますか?」

 レイモンドさんが気を利かせたのか、話しかけてくれた。

 僕はそれに乗り、フェル姉から離れる。

「そうだな。とりあえず中庭に全員連れて来てくれ」

「畏まりました」

 レイモンドさんは一礼して、その場を離れた。

「じゃあ、僕達も中庭に行こう」

「分かったわ」

 僕達は先に中庭に行った。

 

 中庭に着くと、ソフィーとシャリュが先に来ており椅子を二人分用意してくれていた。

「何時の間に」

「まずは、ここで尋問を行うと思いましたので、先に準備をしておりました」

「そうか、助かる」

 労うと二人は頭を下げた。

 僕とフェル姉は椅子に座り、ティナとソフィーは僕の後ろ、シャリュには厨房に行って豆腐とまだ煮ていない『清海』の水と塩を持ってきてもらうように指示した。

 そして待っていると、レイモンドさんの後をフェル姉の部下達が縄で縛ったイシメオン族の者達を連れて来た。

「領主様、ご命令通りに連れて来ました」

「うむ。まずは座らせろ」

 僕がそう言うと、フェル姉の部下達はイシメオン族の者達を座らせた。

 中には反抗的な者も居て、座らせるのに苦労した。

 ようやく、全員座らせると、まずは僕が口を開いた。

「お前達が十二氏族が一つイシメオン族の者達か?」

 そう尋ねると、座っているイシメオン族の者達の中で一番、目立つ鎧を着た者が答えた。

「その通りだ」

「ふむ。お前、名は?」

「我はイシメオン族の族長の子が一人、カリュドーンだ」

「僕はこの『オウエ』に着任した領主のリウイだ」

 僕が名乗ると、イシメオン族の者達は騒然としていた。

 この反応を見るに、僕が領主になった事は知らないようだ。

「この領地は魔国が治めている領地である。それを襲撃してくるのだから、命を取られても文句はない所業だ」

 そう言うと、イシメオン族の者達は覚悟を決めたような顔をしていた。

「殺すのなら殺せ。だが、これだけは言わせてもらおう。俺達を殺しても、我が部族は襲撃を止める事はしない。我ら十二氏族は最後の一人になるまで、襲撃し続けるだろう!」

 カリュドーンは胸を張って言う。

 ふむ、この男。なかなか肝があるようだ。

「とは言え、話次第では色々と考慮しないでもない」

 僕がそう言うと、イシメオン族の者達は困惑しだした。

 さて、ここからが交渉の見せどころだ。






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