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第16話 夜が明けて、顔を洗いに行くと

 翌日。

 朝日が、テントに差し込まれ、小鳥が囀った。

 小鳥の囀りを聞いて、僕は目が覚めた。

「ん、ん~」

 本来なら、もう一眠りしたいのだが、暑くて出来なかった。

 何故ならば。

「すぅ、すぅ・・・・・・・・・」

「すー、すー・・・・・・」

 昨日川の字で寝たので両隣にイザドラ姉さん達が居るのは、まだ良い。

 だが、二人共僕を抱き締めながら眠っているので、正直暑い。

 こんなに暑くては二度寝も出来ない。

 僕は細心の注意を払いながら、二人の拘束を掛けていた布団を丸めて代わりに抱き付かせてから抜け出して、テントを出た。

「ん~、初めて、野宿をしたけど、背中が痛いな」

 布団を敷いて寝たので、背中に地面が当たる。なので仕方がないと言えばそうだが。

「寝ているだけで、こんなに背中が痛いなんて、これじゃあハンモックで寝た方がまだいいな」

 それぐらい背中が痛かった。

 次、野宿する時があったらハンモック又はベッド持ってこよう。

 そう思っていると、ティナが隣のテントから出て来た。

「ふわ~。おはよ、リウイ」

「おはよう。ティナ」

 欠伸をしながら朝の挨拶をする僕達。

 すると、向こうからアドラ兄貴がやってきた。

「おお、起きたか。二人共っ」

 兄貴はデカい声で挨拶してきた。

「おはよう、兄貴」

「おはようございます。アドラ殿下」

 僕達が朝の挨拶をすると、兄貴は二人分のタオルを渡してきた。

「あっちに湖があるから、そこで顔を洗って眠気を完全に覚ましてこい」

 兄貴は指を差した方向に、湖があるんだな。

「わかった。行こう、ティナ」

「うん」

 僕はティナと一緒に湖に向かった。

 

 陣を出て、少し歩くとそれなりに広い湖があった。

 屈んで、水の中に手を入れる。

「けっこう冷たいな」

 これだけ冷たかったら、眠気も完全に覚めるだろうと思い、僕は両手で水を掬い顔を洗う。

 何度も洗うと、まだ頭の中に残っていた眠気が完全に覚めていく。

「ふぅ、気持ち良いな。ティナ、タオル」

 顔が濡れているので、目を開ける事が出来ない。

 横にいるティナにタオルをくれる様に言う。

 だが、ティナはタオルをくれる気配がない。

「ティナ?」

 僕は、もう一度呼びかけるが、ティナの反応はなかった。

 どうしたのだろうと思っていたら、急に肩を叩かれた。

「り、りリウイ、あれ、あれっ⁉」

 肩を叩きながら、ティナは何か居ると伝えたいのだろう。

「ティナ、とりあえずタオルをくれないと。じゃないと、何も見えないから」

「あ、ああ、うん。わかった」

 ティナは僕にタオルを渡してきた。

 貰ったタオルで、僕は顔を拭う。

「それで、何が居るの?」

 魔獣だったら出来るだけ刺激しないようにすれば襲われないだろうし、野盗だったら、全速力で陣まで逃げれば、大丈夫だと思う。

 でも、野盗はないか。軍の陣地近くにくる野盗なんて、自殺するようなものだろう。

 だったら、魔獣しかいないな。

 なら、出来るだけ刺激しないように歩けばいいな。

「あ、あれ、あれっ」

 ティナは驚愕しながら指を指したのは、湖の向こう側のようだ。

 僕も指差した方を見た。そして、驚愕した。

「・・・・・・・うわぁ~」

 湖の向こう側に、昨日逃がした。麒麟が水を飲んでいた。

 鱗が陽光に当たり、金色に輝いている。

 毛も黄色なので、まるで黄金で出来た芸術品のようだ。

 僕は思わず、その魔獣の姿に見惚れてしまった。

『・・・・・・・・・・』

 麒麟は満腹になったのか、それとも僕達の視線が煩わしくなったのか水を飲むのを止めて、僕達を見る。

「ど、どど、どうしよう、リウイっ」

 ティナは軽くパニックに陥っていた。

 それで、逆に僕は冷静になれた。

「パニックになった人の傍にいる人は、パニックにならないで冷静になるって、本当なんだ」

「な、なにを言ってるの⁉」

「落ち着いて、ティナ。冷静にならないと、余計にパニックになるから」

「う、うん、そうだね」

 ティナは深く息を吸って気を静めようと頑張っている。

 流石は王子付きのメイドだ。同じ立場だったら、僕はどうなっているだろう?

 と、そう考え込んでいると、麒麟がを歩き、僕達の所に来る。

「え、えっ⁉」

 何で、こっちに来るの?

 もしかして、ここの湖は縄張りで追い払おうとしているとか?

 それとも、僕達、何か気に障る事でもしたのだろうか?

 色々な考えが浮かぶが、どれなのか分からなかった。

 そうこうしている内に、麒麟が僕達の前まで来た。

「「・・・・・・・・・・・・」」

 言葉が出なかった。

 何か話さないと駄目だと分かっているのだが、言葉が出てこない。

 どうしようかと、ティナと僕は顔を見合わせる。

『少々、話をしても宜しいでしょうか?』

「「喋った⁉」」

 魔獣は知性があるので、言葉を話せるとか、前にメルビ―ナ先生が言っていたけど、本当だったんだ。

 これで一つ賢くなったと思っている場合じゃないな。

「あの、何か御用でしょうか?」

 相手は魔獣なので、ここは下手に出る事にした。

 怒らせでもしたら何をされるか、分からないからな。

『そう警戒しなくても喰いはしません。それに我が種族は生き物は口にしませんから」

 そう言えば、麒麟は生きた草は食べないで枯れ草を食べるとか書いてあったな。

「あの、何の用で僕達の所まで来たのでしょうか?」

『昨日、わたしに襲い掛かってきた者達の知り合いと見受けます。あの者達は、何故、わたしに襲い掛かって来たのですか?』

「それはですね。・・・・・・単に、貴方の姿が珍しかったので捕まえようとしたのです」

『愚かな。珍しいから捕まえるとは』

「兄が失礼な事をしたようで、申し訳ありません」

 兄貴の代わりに、僕は謝る。

『貴方が謝った所で、当の本人に謝られねば、意味がありません』

「そうですよね」

『ですので、ないしなさい』

「「はい?」」

『あの者達が居る所に、案内を頼んだのです』

「え。ええ~」

 この魔獣、何か凄い事を言って無いか?

『さぁ、早く案内を』

 この麒麟さんは、どうあっても兄貴に謝らせたいようだ。

「どうしようか、ティナ」

「多分、連れて行かないと無理矢理付いて来るから、結果は同じだと思うよ」

「だよね~」

 これは仕方がない。案内するか。

「じゃあ、案内しますね」

 僕が先頭に立って、陣へと歩き出した。


  



 

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