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忍者ムーブ始めました~こぼれ話始めました~  作者: 大和・J・カナタ
【番外編】

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29/31

番外編 特別な夜、特別な口付け

ささやかではありますが、作者からのクリスマスプレゼントです!!

 クリスマス・イヴの夜……VR・MMO・RPGの中ではクラン【十人十色ヴェリアスカラー】の面々が集まり、いつもの仲間達で盛大なパーティーが開かれた。

 飲み食いして、歌い踊り、互いに交流を深めた夜。しかし宴の時間には限りがあり、お開きの時間が来れば各々ログアウトして眠りにつく。


 しかしながら、今年は少し名残惜しそうにしている少女が、最愛の夫……現実では婚約者である少年に、珍しく甘えていた。

「もう少しだけ、ログインしていたい?」

「はい。折角今日はヒイロさんがお泊りにいらしたのに、一緒に眠る事は出来ないでしょう?」

 そう言ったのは、青髪ロングストレートの美少女。ギルド【七色の橋】のサブマスターを務める、レンであった。

 そんな彼女の言葉に、ギルドマスターであるヒイロは「成程ね」と苦笑した。ヒイロこと星波英雄は、今日は彼女……初音恋の家に泊まりに来ているのだ。


 クリスマス・イヴの夜、将来を誓い合った男女。何も起こらないはずが無く……と言いたい所だが、何も起こらないし起こしてはいけない。

 なにせ恋も英雄も、まだ学生なのだ。思うままに突き進み、その結果取り返しのつかない事態になったら……それを考えれば、同衾できないのも当然の事である。

 英雄も恋も、自分達が子供だという自覚がある。大人達が別々の部屋で眠る様にさせたのも、当然であり納得しているのだ。


 しかし、それでも……最愛の人と過ごす、この特別な夜が終わってしまう。それが名残惜しくて、仕方が無いのだろう。

「……あまり遅くなったら、怒られてしまうんじゃない?」

「解っています……だから、本当に……もう、少しだけ」

 そう言って、俯くレン。いつもの彼女ならば、小悪魔の笑みを浮かべてからかいの一つでもするだろう。しかし今日はやけにしおらしく、寂し気である。これはつまり、レンの紛う事なき本心なのだろう。


 二人だけの、クリスマス・イヴの思い出を共有できれば……ヒイロはそう考えて、レンに一歩近付く。

「レン」

 名前を呼ばれてレンが顔を上げれば、目と鼻の先にはヒイロの顔があった。背の高い彼の顔が、自分の顔と同じくらいの位置にある……それはヒイロが、わざわざ彼女に合わせて身を屈めているからだろう。

 レンが何かを口にする前に、ヒイロがその唇を自分の唇で塞ぐ。

「ん……っ!?」

 唐突な口付けは、普段のそれとは違った。更にヒイロはレンの背中に手を回し、彼女が苦しくない程度に力を籠める。

 最初は強張っていたレンだったが、その身体から力が抜け……そして、自分もヒイロの身体に腕を回して抱き締める。

 口付けを交わす二人には、どれくらい時間が経過したのか解らなくなっていた。それだけ、そのキスに没頭していた。


 やがてどちらともなく距離を取ると、レンは熱を帯びた瞳でヒイロを見上げる。

「……珍しい、ですね」

「まぁ……ほら、特別な夜だから」

 普段とは違うキスに、レンの頬は紅潮したままだ。そんな彼女の愛らしさに心を鷲掴みにされつつ、ヒイロはフッと笑みを零す。

「これで、お互いにいい夢が見られそうかな?」

 それはレンが寂寥感を感じており、それを緩和するべくしたキスだった。それを理解したレンは、ヒイロの胸元に自分の左手を置き……彼の顔を見上げながら、微笑む。

「ヒイロさんの夢を、見ます。クリスマスプレゼント、忘れずに持って来て下さいね」

「レンの夢の俺が、うっかり者じゃない事を祈るかな」

 何でもないような言葉を交わすが、二人の間には甘やかな……それでいて、しっとりとした空気が漂う。


 その後、本当に少しだけ言葉を交わして、二人はログアウトする。その時にはもう、寂しそうな少女の姿は無く……愛しい旦那様が夢の中で会いに来てくれるのを楽しみにする、可愛らしいお嫁さんが居るだけであった。


挿絵(By みてみん)

Merry Christmas!!


毎年ヒメノばっかりだったので、今年は趣向を変えてヒイロ×レンにしてみました!!

文章の方もイラストだけではなく、文章面にも力を込めてみた次第。


それでは皆様、よきクリスマスを!!

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