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ぼくらのカスみたいな青春に捧げるレクイエム  作者: 藤原ゴンザレス


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第十六話 再び倉庫を漁る

 コカインのことが報道されてしまった。

 地域に日本中から不審者が集まってきた。

 別に学校の周辺に隠したとは一言も言ってないのに。

 入れ墨だらけの連中がひしめいている。

 オラァ、コラァと周囲を威嚇する。

 学校の周辺はすっかりガラが悪くなった。

 住民は逃げだし廃墟が広がる。

 警察を批判するコメントがあふれるが、なぜかマスコミは「入れ墨への差別をやめよう」とか意味不明のキャンペーンをやり出した。

 昨日大量の人が死んだところでコカイン探してる時点でまともな人間じゃねえだろ。

 警察屋さん……こいつら銃の的にしろよ。

 ライバーの集団もやって来た。

 気持ち悪い表情した中年女性が「悲しい事件がありました」と涙してる。

 どこぞの政党だという連中も駅前で演説する。

 人間とはかくも醜くなれるものだろうか。

 学校は警察が立ち入り禁止にしてる。

 そこに入れ墨の集団が抗議してる。

 お前らコカイン探したいだけだろ。

 しかたなくぼくたちは公園に集まった。

 小さな子なんてもういない。

 逃げられる人は逃げたのだ。

 地価に影響するかはわからないが、駅前マンションの我が家も親父が売ろうと思ったようだ。

 だが不動産会社に買い取りを拒否された。

 もうこの地区の不動産には価値などないのだ。

 その店企業は素早かった。

 駅前にある二つのショッピングモールが一斉に撤退を発表。

 来月と再来月に閉店予定だ。

 片方は物理的に無理なのはわかるが、もう一店舗は去年できたばかり。

 事件後ガラガラになっていたからしかたないのだろう。

 スーパーマーケットも相次いで撤退を発表。

 ぼくらは街が死ぬところを見てる。

 公園で話してると老人が公園の前を通った。

 ぼくらを見てぎょっとして足早に逃げていく。

 ぼくらは犯罪者集団扱いだ。


「なあ、神宮司。カラオケ大会どうするよ?」


 サッカー部の男子に聞かれた。


「まだ言ってるの? 無理でしょ!」


「えー、やろうぜ~!」


 就職内定取り消し組がブーブー文句を言った。


「まーいいけどさー」


 みんなでカラオケボックスになだれ込む。

 もうどうにもならないのは保護者たちもわかっていた。

 受験一発も高校名を書かされる。

 それだけで終わりなのはわかっていた。

 カラオケ大会の準備は午前中で終わり家に帰る。

 ここから犯人探し。

 まずは真田と野球部の倉庫に行く。

 消し炭になった現場はもう誰も管理してない。

 たまに警察が来るが……。

 学校で起こったことだ。

 そもそも捜査なんか最初からされてないかもしれない。


 ライブ開始。

 マスコミの報道では野球部のバカどもはここでガソリン使って違法薬物を作ってたらしい。

 でもさ、ぼくは違う見方をしてる。


「本当に野球部のバカどもはここで麻薬を製造してたのかな?」


 ぼくは棚を見る。

 焼け残ったなにかがある。

 どれも野球用品だ。


「ガソリンを使った麻薬。クロコダイルなんかが有名だけど。市販の咳止めが必要だ。買うと薬剤師が説明してくるやつね。果たして大量に買えるかな?」


「どういうこと?」


人食い麻薬(カニバルドラッグ)にはヨウ素やリンも必要。なんで世界的にポピュラーな麻薬が日本で流通してないのか? それは簡単だよ。日本じゃ原料を手に入れるのが難しいんだよ」


『ど、童貞が頭良さそうなこと言ってる……』


『なにか悪いものでも食べた?』


『拾い食いしちゃだめDAZO!』


 うぜえ。


「なんなのその中途半端な優しさ……つまりさ」


「つまり……」


「こりゃ殺人だ。たぶん大麻は栽培してたと思う。そのときにヒーター代わりに石油ストーブを……ってねえな。普通に野球部どもが使ってたはずだ。ヒーターなら電気の使ってたと思うよ」


「じゃあなんでガソリンが……」


「すり替えたんだよ。で、バカどもが石油ストーブに入れて、ボン!」


『リアルデスノートが知能戦やりはじめた!』


『大丈夫? バカなのに。無理しなくていいよ』


『かなたくんは頭使っちゃダメだと思うの』


「てめえら……そのあとの外国人とのトラブルも同じだ」


 ぼくは足元を蹴飛ばす。

 鉄板があった。


「やはりあった」


 鉄板をどけると地下倉庫、いわゆるパントリーが出て来た。

 冷蔵庫一つ分くらいか。

 中には金属製のボックスがあって、いくつものスマートフォンとメモリーカードが入っていた。


「野球部が本当にシノギにしてたのはこいつだ」


「それって……」


「女子運動部の盗撮映像……だけだったらいいんだけどね」


 ぼくは自分の新しいスマートフォンで警察に連絡する。


「野球部の倉庫でスマホとメモリーカードを見つけました。炎で読めないかもしれませんがね」


 ぼくの考えはシンプルだ。

 野球部のアホどもにコカインを扱うだけの能力はない。

 麻薬の合成なんてもっとできるわけがない。

 やつらは生まれてから暴力と野球以外のことは一切してこなかったのだ。

 有機化学なんてできるはずがない。

 一方警察なら回路が焼けたってデータを読めるかもしれない。

 圧力がかかってなければね。

 そう、圧力だ。

 例の人殺し警官だ。

 事故? 違うね。

 こいつを手に入れる算段だった……。

 少なくともそう思ってたはずだ。


「みんなこれを記録して。もみ消されないようにね」


 中身に関して言及しないけど……盗撮だけじゃないよね?

 ぼくがなにを言いたいかって。

 簡単だ。

 こいつはコカインよりも危険なブツなのだ。

 未成年のポルノくらいだったらまだいい。

 それなら人は死なない。なお我が校の野球部は人類に含めないものとする。

 おそらく三橋と仲良しの警察、それも幹部が映ってるはずだ。

 警官が人を殺すに値する幹部。

 県警本部長?

 もっと上の人幹部?

 警察庁の上の人?

 それとも政治家?

 確実にもみ消されるだろう。

 だがぼくは中身を知らない。

 ただ見つけただけだ。

 ぼくの口を塞いでも疑惑が膨らむだけ。

 ぼくだったら「データが復元できませんでした」ということにして政治家の方を始末する。

 政治家の代わりなんていくらでもいる。

 毒でも飲ませて脳出血か心臓発作ということにすればいい。

 ぼくは安全だ。

 中身を知らなければね。

 だから見ない。

 視聴者に見せるのは証拠品の有無だけだ。

 こうしてシュレディンガーのポルノ。

 中身が復元可能な状態と復元不可能な状態が同時に存在する。

 政治的理由でね。

 ぼくはそれを観測して確定する必要はない。

 あったことを記録に残すだけだ。

 通報で警察が来た。

 ぼくは嫌な笑顔のまま引き渡す。


「中身は見てませんし、見る気もないです。消されるのは嫌なので」


 ああ、本当の警察かなんて聞かない。

 警察手帳を見せてくれた。

 だがそれを確認する術は当方にはない。

 もちろん名前を警察署に問い合わせた。

 だが警察全体がグルならどうなるかわからない。

 だからぼくは警官と視聴者に言っておく。


「ぼくは中身を見てません。殺したところで疑惑が発生するだけです」


「ずいぶん物騒ですね」


「データが無事なら三橋と仲良しの警官がホテルで遊んでる映像が入ってると思いますよ。ぼくは正義の味方じゃないし、自分の身さえ無事ならどうでもいいです。脅迫もしませんし、真実の追究もしません。犯人はぼくじゃないし、もう事件から解放してください。これでも受験生でプロデビューを控えた小説家なもんで」


「……私にはなんとも」


 だろうね。

 そこまで期待してない。

 ぼくが語りかけてるのはライブの視聴者。

 その中にいる犯人だ。

 ぼくの動向を見張ってないわけがない。

 警察だってそこから犯人を見つけようとしてるだろう。

 とは言っても匿名サーバー経由の接続なら探し出すのに時間がかかるだろう。

 ぼくだったら他にもいくつか手が思いつく。

 合法な手段も違法な手段もね。

 手段を選ばなくていいならもっとえげつない手段もある。

 例えばスマートフォンを殺して奪うとか。

 遺体が見つかるまでは有効な手段だ。

 SIMカードだけ抜いて別のスマートフォンに入れて使うとかでもいい。

 問題は警察が泳がせてる可能性があることくらいだろう。

 つまりぼくじゃ特定は不可能。

 だけどいるのは確定してる。

 だから犯人や映像を見られて困る権力者に語りかける。


「ぼくを殺すのは無意味だ。ぼくを消しても証拠はなくならないし、ぼくは中身を知らない。ただ疑惑が深まるだけだ。それと、ぼくをダシに使うのはやめてくれ。なぜぼくを記録者にしたのかわからないけど、殺されるほどの恨みを買った憶えはない」


 そう言ってライブ終了。

 さてどうなるか?

 警察はメモリーカードを持って行った。

 またもや倉庫は立ち入り禁止になったわけである。


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― 新着の感想 ―
このやり取りも犯人は理解できん気がする。 というか疑心暗鬼にとらわれてそう。すすきがお化けに見えるのと同じ。 今までの殺人の数が多すぎなうえ雑なんで、たぶん。 コナンか金田一で言ってた、口封じを目撃さ…
こんな雑な隠し方で見つかってないとかマジで捜査してないんだなぁ・・・ 普通だったらありえんぞマジで
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