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ぼくらのカスみたいな青春に捧げるレクイエム  作者: 藤原ゴンザレス


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第十四話 最高の弟

 ぼくの小説がプロの目に止まり、出版が決まる。

 だけど指定校推薦入試組と総合選抜型入試組の合格は戻ってこない。

 スポーツ推薦組もだ。

 もちろん一度約束したからにはと義理を大事にする学校もある。

 そうじゃない学校も多い。

 一般入試でがんばるしかない。

 受験を半分ぶん投げてたぼくだけど、出版と並行して受験モードになる。

 カラオケ大会なんて言ってたけど受験組は殺伐としてる。

 親は受験料は払ってくれるようだ。

 まだ年は明けてない。

 なんとかなるといいな。

 学校は完全に運営を放棄。

 文科省が調査に入ることを検討する有識者会議が開かれるらしい。

 つまりなにもしないという意味だ。

 おそらくぼくらは見殺し。

 下級生だけ救済するのだろう。

 ぼくらは政治にまで死を願われている。

 ぼくらは相変わらず勝手に学校に押し入って部室で勉強する毎日を過ごしてた。

 もう学校には警備員はいない。

 警察が入り口で警備してるが、それはぼくらが人を殺さないように見張ってるだけだ。

 理事たちは夜逃げした。

 教師たちも自分たちの就職活動で忙しい。

 この学校の敷地も近いうちに地元の銀行に差し押さえられる予定だ。

 ぼくらへの温情のつもりか、それとも政治的思惑があるのかはわからない。

 昼になると教室でライブしながらカラオケ大会の計画を話し合う。

 だんだんと計画がまとまって、体育館でやることに決まった。

 いまは看板や装飾を暇な連中が作ってる。

 ぼくの小説も見世物……展示される予定だ。

 そんな中、テレビ局から取材が来た。

 ぼくらはテレビはあまり見ない。

 朝と夕方のニュースくらいだろうか?

 体育会っぽい集団と芸人が来た。

 なんだかぼくらを値踏みするような表情だ。


「ぼくらは決して殺人鬼じゃありません」


 とりあえずみんなでそれを主張した。

 当たり前である。

 ぼくらの中か周辺か。とにかく殺人鬼は近くにいる。

 だけど少なくともぼくじゃない。

 ぼくと一緒にいた真田も違うだろう。

 なんでぼくらが野球部や殺人鬼の責任を負わなければならない!

 おかしいだろどう考えても。

 推薦の件は言っちゃダメだそうだ。

 おそらくどこぞに忖度してるのだろう。

 カラオケ大会の話は数秒。

 話はぼくと真田のVログの話題になる。

 どうせそれが聞きたいんだろうとは思ってた。

 芸人のおじさんに聞かれる。


「Vログ見たよ。たいへんだったね」


 同情してる顔じゃない。

「お前犯人の仲間なんだろ?」という下衆な顔だった。


「そうですね。ぼくも爆風で火傷しましたし」


「犯人対して言いたいことある?」


「特に。もう受験も半分ダメになってますし」


 わざと「言うな」と言われたことを口にした。

 炎上させたいわけじゃない。

 だが嘘を言われるのは困る。

 そして案の定、ネットにぼくの個人情報が晒された。

 父親の職場の情報までもね。

 テレビ局が流したのか、学校の連中が流したのか、それとも父親の敵が流したのか。

 考えてもしかたない。

 夜、烈火のごとく怒り顔を真っ赤にした父親が部屋に入ってきた。

 約数年ぶりの会話である。


「俺にどれだけ恥をかかせれば気がすむんだ!」


 いきなり一発。

 拳で殴られた。

 痛くない。

 虚無だ。


「すべて偶然だが」


 そもそも病室にすら来なかったようなやつが偉そうに言うことではない。

 おそらく自分に飛び火して怖くなったのだろう。


「いいか、お前が学校から逃げてからなにもかも悪くなった!」


「そりゃそうだ。あんたが家庭から逃げたからな」


 そうなのだ。

 タケルはぼくの様子を見て、次は自分の番だと理解した。

 だからタケルはバット持って暴れまくり暴走族に入会することを選んだ。

 ぼくは家にいないものとして扱われ、家族との会話すらない。

 空気の悪くなった家に父親はめったに帰らなくなった。

 母親はタケルに勉強を仕込むことをあきらめ酒と精神科に逃げた。

 ぼくにとって家族はタケルだけだし、もう何年も両親と会話してない。

 いま殴られたのだって虚無でしかない。

 生活費は払ってもらってる。

 だから拘束を受けてやろうという程度だ。

 人生はどこまでも思い通りにならないものである。


「お、お前ええええええ!」


 父親が拳を振りかぶった。

 もう一度殴られそうになったとき親父が突き飛ばされた。

 突き飛ばしたのはタケルだった。


「兄貴になにすんだてめえ!」


 そのまま殴り合いになる。

 残念ながら当方にタケルに加勢するほどの腕っ節はない。

 ウロウロするのが精一杯だ。

 弟に守られる兄。

 情けない。

 親父の拳よりも何倍も心に効いた。

 タケルに殴られた親父は「父親に向かってなんだ!」と激怒する。

 ……がタケルにはかなわないとみるや家から逃げ出した。

 なるほど。ぼくは父親似のようだ。

 カスの血を引いている。

 ぼくが将来への成長率の低さに打ちのめされると、タケルは笑顔になった。

 ぼくも笑顔を作る。


「タケル、お前は最高の弟だ」


 拳を合わせる。

 ぼくらは助け合わねばならない。

 母親は睡眠薬を飲んで寝ていた。

 部屋には新しい酒瓶が転がっていた。

 この生活もあと数カ月だ。

 我慢しよう。

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― 新着の感想 ―
最初は風刺ギャグかと思ってたのに、どこへ向かうのだろう。
酒飲んで睡眠薬飲むとか 母親、永眠してない……?
人生ハードモードすぎる… せめて小説のほうだけでもうまくいってあげてくれ…
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