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無才王子は国を離れてスローライフを満喫したい  作者: m-kawa
第二章 始まりの街アンファン

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第63話 街の南側

 今日は朝から街の南側へと出かけることにした。まずは街の中心へと向かって市場を覗いていく。昨日と同じものを売っているところもあれば、違うところもある。珍しい野菜などは途中で購入しながら、南の方向へと足を向けた。


 徐々に飲み屋が増えていくけど閉まっている食事処も多い。あとなぜか露出度の高い女性も多い気がする。

 ちょっと南側に来るのは間違えたのかもしれない。


「うわっ、なにあれ……」


 道端にパンツ一枚で転がっている男がいる。


『ただ身ぐるみはがされただけだろう』


「えっ!?」


 それって大丈夫なの?

 遠目で男の人を観察していると、後ろから近づいてくる足音が聞こえてくる。振り返れば露出の高い女性がこちらに近づいてきていた。


「あらぁ、可愛らしいお嬢ちゃんがこんなところに何しに来たのかしら?」


 スノウを一瞥しただけで特に警戒なく話しかけてくる。びっくりする人もいれば、肝の据わった人もいて従魔を見た時の反応は人によってまちまちだ。


「えーっと、街を探索してて……」


 なんとなく気圧された気がしてしどろもどろな答えになる。場違いなところに来て、怪しい女に声を掛けられたのでもう帰りたくなってきた。


「へぇ、じゃあこの街には来たばかりなのかしら」


「はい、そうです」


「お嬢ちゃんひとりで?」


「あ、はい」


 いきなり会話を切り上げて踵を返すこともできずに、会話を続けてしまう。


「ふーん、大変なのねぇ。……稼ぐだけなら割はいいけど、お嬢ちゃんにここはまだ早いんじゃないかしら?」


「え? どういうことですか?」


 怪しい場所だとは思ってたけど、ここで稼ぐことができるんだろうか。改めて周囲を見回してみるけれど、半分閉まってる店や酔いつぶれた男が転がっていたり、目の前の女みたいに露出度の高い女性がいたりとよくわからない界隈だ。


「あら、ここがどこだかわかって来たんじゃないの?」


「えーっと、実はよくわかっていません……」


 教えてくれるのであればいい機会ではなかろうか。なんとなく怪しいだけで近づかないでおくのも手ではあるが、何かあった時に「知らない」ということはよくない気がする。ここで仕事を探す気はないけれど、興味が勝ったのは言うまでもない。


「うふふ、そうなの。じゃあ教えてあげるからついてらっしゃい」


『本気か?』


 珍しく心配そうに聞いてくるキースに頷き返すと、女の後をついて行く。歩く先々では、幸せそうな表情の男や、絶望に染まった表情の男などがちらほらと増えていく。


「なんなのここ」


 訝しげにつぶやくが、それに対する返事はどこからも来ない。前を歩く女には聞こえているかもしれないが、今からそれを説明してもらう場所に向かっているのだ。


「さ、着いたわよ」


 女に連れられてきた場所は、外観としてはちょっと派手な構えをしたお店だ。木の立て看板には今日のメニューが記載されていて、料理のイラストも美味しそうに描かれておりとてもおしゃれな雰囲気を感じる。


「ふふ、ちょうどお昼時かしらね。ご馳走してあげるから食べていきなさい」


 ポカンとしていると、いつの間にか後ろに回った女に背中を押されて店の中へと足を踏み入れていた。

 中を見渡せば客の入りは半数を超えるくらいだろうか。どのテーブル席にも男女が座っており、女性はみな綺麗な人が揃っている。中にはだらしない表情の男性もいれば、男性へしなだれかかっている女性も見かける。


 みんなスノウを見てギョッとするがそれも一瞬だ。すぐに自分たちの世界に戻って私たちは視界の外へと追いやられる。周囲のことなど気にならないスノウは、いい匂いのする店内をキョロキョロしている。


「何か食べたいものはあるかしら」


 奥の席へ案内されて座ると、さっそく女が隣に座ってメニューを見せてくれる。微妙にテーブルが高い位置にあるのでそれも仕方がない。厨房から漂ってくるいい匂いも相まってお腹が空いてきた。ご馳走してくれるなら遠慮なくいただこう。フォレストテイルのクレイブもたまに奢ってくれるし、この街にはいい人が多い気がする。


「じゃあこれとこれと……、あと何か肉料理をスノウにもお願いします」


 ちらりと足元に寝そべるスノウが顔を上げて返事をする。


「ふふ、あなたの護衛かしらね」


「そんなところです」


「……たくさん食べそうね」


 スノウをじっくりと観察した後に女がそう漏らす。実際にスノウはいっぱい食べるので間違いない。


「じゃあ注文を伝えてくるからちょっと待ってちょうだい」


「わかりました」


『ふむ。ここはいわゆるキャバクラのような店なのか』


 奥の厨房へと女が姿を消すと、どこからともなく耳慣れたキースの声が聞こえてくる。


「きゃば……なにそれ?」


 しかし聞こえてきた言葉は耳慣れないものだ。声を潜めて尋ねると、女性と楽しくおしゃべりができる店だと返ってきた。


「へぇ。……それだけなの?」


『金払いにもよるだろうが、仲良くなればいろいろできることも増えるはずだ』


「ふーん」


 いろいろって何と具体的な内容を聞こうとしたところで女が戻ってきてしまい、結局聞くことはできなかった。

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