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無才王子は国を離れてスローライフを満喫したい  作者: m-kawa
第二章 始まりの街アンファン

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第57話 街を散策しよう

 宿泊客のみんなにもみくちゃにされた翌朝。


『今日は街の散策か』


「うん。そのつもり」


『しかし昨日は傑作だったな』


 なんのことかと思ったけど、キースからの話を聞けば昨日の食堂での出来事だった。


『魔物がうろつく草原で一人昼寝をする肝の据わった女児の話は伝説になりそうな勢いだったな』


 笑いながら揶揄ってくるキースだったけど、いやほんともう勘弁してください。いったい何があったんだと次々に探索者たちから聞かれて答えただけなんだけど、呆れた人や真剣に危ないと怒ってくれた人、笑って済ませた人といろいろだった。

 中には危険なところに行くなら鍛えてやろうって言ってくれた人もいたけど、シルクさんに危ないことはさせないでと一蹴されていた。


 というかキースの姿はこっちから見えないのに、あっちからは見えてるのか。すごく理不尽なものを感じるけどいったいどうやって隠れてるんだろう。


「とにかく、今日はそんなことにはならないから」


『ははは、そうだといいな』


 予感めいた言葉を口にするキースを無視すると、いつものようにスノウを連れて部屋を出る。


「あら、今日もお出かけ?」


「はい。今日は街の散策に行ってきます」


 シルクさんが心配そうに声を掛けてきたので、安心させるように行動範囲を先に告げておく。


「うふふ、それなら安心ね。でも街中も怖い人はいるから気を付けるのよ」


「わかりました」


「いってらっしゃい」


「いってきまーす」


 見送られて宿を出ると、さっそくどこを回ろうかと周囲を見回す。

 西はだいたい知ってるけど東はまだ行ったことがない。というわけで大通りを東に歩いて行くことに決定する。スノウと歩いていると割と注目を浴びるけど、そろそろ気にならなくなってきた。むしろ姿が見えないキースが気になってしょうがない。


「ここって武器と防具?」


 盾の上に剣がクロスして交わった絵の看板があったので、気になって入ってみる。

 店の中の右半分が武器、左半分が防具のようだ。そういえば弓も一回触ってみたいなぁと思っていると、奥から強面のおじさんがやってきた。


「おい嬢ちゃん、何しに来たんだ? ここはガキの来るところじゃねぇんだぞ」


 スノウにも目もくれず、私に向かってそう静かに告げる。

 触ってみたい欲求はあるけど、確かに子どもが何しに来たんだという言葉には同意できる。つい先ほどまで過保護なほどに心配されたばっかりなのだ。


「えーっと、弓を触ってみたかったけど、大きくなってからにします」


「ああ、それがいい。怪我しちゃいけねぇからな」


 なんだかんだ言いながらも結局武器屋のおじさんも私を心配してくれていたっぽい。特に気分を害することなく外に出ると、さらに東へ向けて歩いて行く。


「なんだろあれ」


 だんだんと賑やかになってきて、人通りも増えてきた。露店が増えてきてお客さんを呼び込む声もそこかしこから聞こえてくる。

 どうやら広場では市場が開かれているようだった。肉類よりも野菜類の方が多くお店に並んでいる。見たことのない野菜もちらほらと並んでいる。


「なんだろう……?」


 細長くて髭の生えた緑色の野菜が気になり、お店の前で立ち止まる。


「なんだい嬢ちゃん、それが気になるのかい?」


「え? あ、はい。見たことない野菜だったので……」


 人のよさそうな笑顔で話しかけてきたのは、思わず立ち止まった店のおばちゃんだった。


『トウモロコシも知らんのか。これだから都会人は……』


 キースの声に思わず反応しそうになったけどぐっとこらえる。


「これはトウモロコシだよ。都会で暮らしてる子は知らない子も多いさね」


 だけど結局おばちゃんにも似たようなことを言われてちょっと凹んだ。言い方は全然違うんだけどね……。


「へぇ……、これがトウモロコシ」


 黄色いつぶつぶが甘くておいしいトウモロコシだ。食べたことはあるので知ってるけど、こんな髭が生えてるなんて知らなかった。


「茹でると甘みが増すんだけど、このままでも食べられるんだよ。よかったら食べてみるかい?」


「え? いいんですか?」


「あっはっは、遠慮しなくていいさね」


 笑いながらおばちゃんがトウモロコシの皮を剥いて髭をむしると、見覚えのあるつぶつぶを付けた実が出てきた。確かにトウモロコシの形をしている。

 三分の一に切って真ん中の美味しいところを渡してくれたので、お礼を言ってその場でかぶりついた。


「あまーい」


 自然と笑みがこぼれると、おばちゃんの顔にも笑みが浮かんだ。


「そうだろう。トウモロコシが生で食べられるのは採れたてだけだからね」


「へぇ、知らなかった。ありがとう、おばちゃん、これ二本ちょうだい」


 茹でたら甘みが増すと聞いて食べたくなってきた。


「あら、買ってくれるのかい。ありがとうね。お嬢ちゃんは偉いね。家のお使いかい?」


「ううん。街を散策してるの」


「そうかい。強そうな護衛がいるみたいだけど、気を付けてね」


「うん。ありがとう」


 一本七十五ゼル、合わせて百五十ゼルを払うとトウモロコシを受け取る。背負った鞄に詰め込むと、市場の散策を再開する。珍しい野菜を見つけると、食べ方を聞いては次々と買っていく。ダレスの鞄に入っていた調味料類も売っていたので、同じ店にあった違う調味料も入手しておいた。砂糖も売っていたけど、高かったのでちょっとだけにしておく。


 小腹が減ってきたので途中で串焼きを買って食べる。スノウも欲しそうにしてたので五本買って四本あげた。


「買い食いしながら巡るのも、行儀が悪いけどいいものだね」


 なんだか悪いことをしている気になってきたけど、今の私を見ている者なんていない。……あ、キースがいるはずだけどあいつは例外ね。きっと何やっても文句しか言わないだろうから。

 しばらく市場を巡ってお腹いっぱいにもなったので、休憩できるところを探すことにした。

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