75.三人の指輪
親善訪問後にちょっとした休暇を貰う。
まあ、俺もリズもラインも、それにレオナも卒業は確定していたので、学校に行くのも適当でいいのだ。
アーネが淹れた紅茶を飲みながら、カミラやミラグロスと話をしていると、ラインとリズ、レオナがやってきた。
まあ、俺から呼んだんだけど……。
「ケインの呼び出しには答えないとね」
「私もです」
「私だって!」
ラインとリズ、レオナが言う。
「えーっと、ミラグロスも込みで、指輪に使う魔石に込める魔法を決めて欲しい。
ちなみにカミラがオールアップで、レオナは、シールド」
レオナの言葉が出たことに驚くラインとリズ。
ミラグロスは知っているか……。
ラインはレオナを見ると、
「レオナには指輪を?」
窺うように聞いてきた。
「ああ、渡した。
そして抱いた。
その辺のことはルンデルさんにも報告した」
と言う俺。
横では真っ赤になっているレオナ。
ラインはため息をつくと、
「まあ、仕方ないわね。
カミラが居て一番にはなれない事は前から分かってたし……。
それでも……」
残念そうなライン。
「それは、まあ……付き合いの長さだろう。
あと、言い方は悪いかもしれないが、一商人娘と侯爵様の娘じゃ難易度違うしね」
「簡単だから?」
頬を膨らますレオナに、
「そうでないのは、レオナが一番知っていると思うんだがねぇ……」
と見下ろすと、レオナが更に赤くなる。
俺とレオナを見て、
「だったら、私は最後か……」
そういうリズに、
「ああ、最後だな」
と肯定する。
あとワンランク上げなきゃリズの場所には行けないのだ。
王女を貰うっていうのはいろいろ面倒だ。
俺の顔をじっと見てリズが、
「ん、わかった。
待ってるから」
と頷いていた。
「さて、話を戻すぞ。
指輪にはめる魔石に込める魔法を何にする?」
聞くと、
「私はオールアップ」
「私もだな」
前衛系のリズとミラグロスが言った。
まあ、カミラの戦いとか見てたら、欲しくなるか……。
「私はマジックブースト。
お義母様が胸に着けているペンダントがそれなんだって。
自身の魔力を増幅できるって言ってた」
ああ、ミランダ母さんのペンダントってそれだったんだ。
もしかしたら自分で作ったのかもしれないな。
「オールアップと、マジックブーストな。
じゃあ、作ってくる」
俺が離れる後ろで、
「で、実際どんな感じだったの?」
「あのね……」
「旦那様に一度愛されたら……」
「そんなに?」
「私の胸を揉む時など……」
女性陣の切れ切れの言葉が聞こえてきた。
はあ……
個人情報ダダ洩れ。
さて、集中、集中……。
工房に向かい魔石を圧縮する。
光の魔法であるオールアップをかけたリズとミラグロスの魔石は透明に、闇の魔法であるマジックブーストをかけた魔石は黒くなった。
その魔石を指輪に埋め込んだ。
「うし、できた」
指輪を持ち、工房を出ると、皆の所へ向かう。
まだワイワイと話を続けているようだった。
ガールズトークは楽しめたかね?
そんな事を思いながら、ソファーに座る。
「えーっと、ミラグロスは、これだな」
無垢の指輪に、透明な魔石。
「オールアップの指輪」
俺はミラグロスの左手を取ると、薬指へ入れた。
「今後ともよろしくお願います」
俺が頭を下げると、
「ああ……よろしく頼む。
私の心も体も好きにしていいからな」
とミラグロスは抱き付いてきた。
そういうのと違う気もするが、まあいっか。
俺の顔が胸に埋まる。
「その時はお願いするよ」
俺が言うと、
「ああ、任せろ」
とミラグロスは頷いた。
その時ってどの時?
続いてライン。
幾何学模様の指輪に黒い魔石である。
指に入れると、
「うん、これで何だか安心。
一応婚約してても、指輪もなかったからね。
それに、マジックブーストの魔石が入った指輪なんて、私らしくていい!」
指輪を眺めるライン。
「今後ともよろしく」
俺が言うと、
「こちらこそよろしく。
いろいろレオナに聞いたから、楽しみにしておくね」
ポッと頬を染めながら、ラインが言うのだった。
そしてリズ。
花の意匠が彫られた指輪。
その意匠の邪魔にならないように魔石を入れた。
「リズは、もう少し待ってもらわないといけないかなぁ」
そんな事を言いながら指輪を入れる。
「今更です。
そして、もう一歩です。
レオナのようにかわいがってもらうのを楽しみにして待っていますね。
私だって、好きな人に抱いてもらいたいと思う歳なんですよ!」
結構な爆弾発言だと思う。
「王女様がはしたない」
と言うと、
「そうさせているのはケインです」
と頬を膨らませた。
ころころと表情が変わるリズ。
こうして、指輪を渡し終わるのだった。
エルザ様の分も要るようになるのかぁ……。




