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74.王の絵図

 俺は謁見の間に通された。

「昨日からリズの機嫌が悪いのだ」

 困った顔の王。


 リズの顔は怒っていた。

「それはそうでしょう?

 全てを知っていてなお、危険な場所……私をあの国に行かせたのですからね!」

 リズがプンプンである。

「ああ、ハイデマン伯爵が付いていくなら襲われてもどうにでもなるだろう?

 考えてもみろ、カイザードラゴンを倒した者が護衛に行くんだ。

 それにハイデマン伯爵の部下たちも一騎当千であろう?

 何かあったらハイデマン伯爵のせいにすれば王国に罪はない……」

 王の本音が混じる。

 

 王よ……丸投げですか。


 話を聞いて、

「酷いですね」

 俺が言うと、

「こちらから『こっちは全部知ってるぞ!』と向こうに言ったことで、アルフ王子を廃嫡することに決めたんだろうな。

 まあ、思惑通り何も無く戻ってきたんだ。

 結果良ければ……だよ」

 王は手をヒラヒラと動かして気にしない感じだ。


 続いて、

「そして、エルザ様の事

 わざわざ、ケイン様の婚約者を増やさなくても!」

 再びプンプンなリズ。

「ああ、あれは『有能な者は居ないか』という事で、儂がハイデマン伯爵を推しておいた。

 まあ、バルトロメの話も向こうに聞こえていたからな。

 すぐに向こうも乗り気になった。

 とりあえずあの子がこの国の学校に来るまでは四年ある。

 それまでに、ハイデマン伯爵に頑張ってもらわないとねぇ」

 チラリと王は俺を見た。

 要は侯爵になれという事らしい。

「さて、私は何を頑張ればいいのでしょうか?」

「そうだねぇ、密偵の話では近々ファルケ王国からバルトロメの仇討ちの侵攻があると聞く。

 それを撃退してもらおうか……。

 できれば手勢は少なめで、ハイデマン伯爵のメンツだけで倒してもらえると助かる。

 ハイデマン伯爵の手勢の強さが表に出るだろう。

 まあ、本音を言えば、これに勝てれば向こうの国力は低下し、こっちは戦力を温存できる。

 そして、君の悪名も轟くという訳だ。

 君が国境に居るだけで抑止力になるだろう。

 これ、上手くいったら侯爵ね」

 サラッと王が言った。


「軽いですね」

 俺が聞くと、

「だってもう、君が反乱したらうちの国潰れちゃうから……」

 諦め顔で両手を上げる王。


 それ言うんだ……。

 まあ、俺も気付いていたけど。


「三人でダンジョン潜って戻ってきたら、どのくらいの能力を吸収しているのかもわからない。

 だから、もう君にはバケモノになってもらう。

 バケモノが功績を残した。

 バケモノを押さえるために、陞爵して娘を降嫁する。

 そういう流れだから」


 おっと、能力が上がっていた事もバレていたか……。


「私は悪人になりそうですね

 そして、怖がられそうだ」

 俺が呟くと、

「そうだなあ、力がある者には変な奴等が群がって来るかもしれない。

 私を倒して新しい国を作らないか? ……とかね」

 覗き込む王。

「俺はのんびりできればいいから、その時には王に声をかけてきた者の情報を流せばいいですか?」


 裏じゃ王を差し替えようなんてことを考えている者も居るのかもね。

 そういう者が俺を取り込もうとしてくる可能性があるという事か。


「ん、助かるねぇ」

 王は悪い顔でニコリと笑ったあと、

「だからあとは、ハイデマン伯爵次第。

 私が娘を売る最低の王になれるように頑張ってくれ」

 王はニヤリと笑った。 


 要は、王? いや、王国のために働けという事。

 誰も文句が言えないような成果を出して、陞爵出来るようにしないと、リズはやれないという事。


「という事らしい」

 俺はリズを見た。

「王は俺たちの事を考えてくれているようだ。

 どうする?」

 と聞くと、

「我慢する。

 ケインが頑張っているのに私が我儘言ったら……」

 辛そうな顔。


 我儘ぐらいは聞きたいんだがなぁ……。

 出来る範囲限定だが……。


「お父様、その仇討ち部隊の数は?」

 王を睨みつけるリズ。

 王が、

「七千以上じゃないか?」

 サラッと言うと、

「そんなに!」

 リズが驚いていた。


 ほう……。

 それを何とかしないといけない訳か……。


 俺は考え始めると、それを見た王は、

「リズの婚約者は何とかするつもりみたいだが?」

 と笑う。

「ちなみに、恨まれるからあまり殺さない方がいいですよね?

 国力を落とすのが目的で問題ないですね」

「ああ、別にこちらから領土を増やすつもりも無いし、国を広げる気もない。

 結果、少々広くなるのは仕方ないがね。

『この国に居るハイデマン伯爵に逆らうのが悪い』ということにしたい。

 あっ、あの戦場を何とかしたら、ハイデマン伯爵の領地にしていいから……」

「飛び石の領地なんて要りませんよ。

 王都からも遠いし……」

 距離を克服する方法があったとしても人材がね……。

「それはそれだ……」

 強引に通す王。

「では、部隊を混乱させて、その部隊の軍資金と兵糧を奪うことにします。

 あと、人質になりそうな者を奪って終わりですかね」

「それでいいよ。

 何回か攻めてくれば、ハイデマン伯爵相手では無理だと気付くだろう。

 鉄壁のバルトロメのように壁になってくれればいい。

 ただ、結果、侵攻先が無くなったファルケ王国がマグダル王国に矛先を向けるかもしれないが……」

 王は俺を見た。

 リズが何かに気付いて、

「あっ、だからエルザをケイン様の婚約者に!」

 リズと王に問う。

 正解とでもいうように、

「王弟の義理の息子が、ハイデマン伯爵だった、手伝いに行くのが当たり前だろう?」

 王がニヤリと笑った。


 俺は手の上で踊らされていたようだ。

 まあ、あまりその辺のことは得意じゃないしなあ。

 王の仕掛けに乗っておくか。


「畏まりました。

 その際には早急に援軍に駆けつけましょう」

 と俺は言うのだった。


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