66.マクダル王国王都メルベイユ
街を抜けていくと、高い外壁に囲まれた大きな街が見えてくる。
メルベイユの街。
マクダル王国の王都。
「来たな」
ミラグロスは顎で教えてくれる。
既に先触れがされてい、マクダル王国側の護衛が現れた。
その中央に白い馬に乗り白い服を着た男が現れる。
「バレンシア王国、第一王女。
エリザベス・バレンシア。
親善大使としての訪問ご苦労様です」
不自然なまでに静かに、そいつは現れる。
「アルフ様、お久しぶりです。
定期の親善訪問。
今回は私が大使として参加させていただきます」
アルフは色白で痩身、優男という言葉が当てはまる。
確かにイケメンではあるな。
バックに王なんか居るのならば、それなりにモテそうな気がする。
そして、俺とヴォルフをスルーして、ライン、カミラ、アーネ、ミラグロス、ミンクを舐めるように見る。
んー、俺やヴォルフのような男性枠は興味ないようだ。
「騎士団や魔法師団とは違う者たちが居るようですが?」
アルフがリズに聞いた。
「この者は私の専属護衛です。
ラインはラインバッハ侯爵息女。
ケインは現役の伯爵です。
あちらに居るのはその連れですね」
「あの男の護衛?」
「いいえ、あの男に従う者ですね。
騎士団や魔法師団など相手にならない者ばかりです」
リズはニコリと笑って言った。
ラインと俺、そして魔物枠は軽く会釈をする。
アルフはフンと言って目線を逸らすと、リズに声をかけた。
「それでは、王宮の方に参りましょうか」
アルフの部隊が先に進み、それにリズ達の馬車が続く。
真白な宮殿が見えてきた。
俺たちは中に入り、王に謁見した。
そこには二メートルは有ろうかという褐色の男が居た。
筋肉隆々で丸太のような腕である。
すげっ……。
まあ、俺のほうが強いけどな。
張り合う必要はないが頭の中で思ってしまう。
「お久しぶりです、バルト王」
リズがバルト王の前に傅く。
「リズよ久しいな。
先日はすまなかった。
こちらからの無理な申し出だったな」
「いいえ、こちらも断ってしまいましたので。
微妙な空気が流れた。
その流れを変えるバルト王。
「いつも通り明後日からは騎士団と魔法師団の模擬戦をしよう。
食事を準備してある。
今日は下がり、味しいものを食べて、旅の疲れを癒すがいい」
「それでは失礼いたします」
リズが頭を下げるに合わせ、騎士、魔法使い、俺たちは頭を下げ、準備された部屋に行くのだった。
「つーかーれーたー」
ラインが俺の部屋のソファーに寝ころぶ。
「他国の王様と謁見なんてはじめてだったし、旅の疲れもあるしぃ」
「まあ、一日休みあるし、買い物でも行けばいいんじゃないのか?」
予定も無いし、皆で観光って言うのも悪くはないと思う。
「えっ?
買い物?」
ラインが食い付いた。
「ああ、買い物だ。
リズが行けたらってことになるがね」
「そうだよねぇ。
私たちの仕事ってそれだから……」
ちょっと残念そうなライン。
「しかし、この国とは仲がいいだろ?
だから、襲われるってことはまずないから、観光をしても問題ないはず。
まあ、リズからバルト王に言ってもらう必要は有るがね。
カミラとアーネ、ミラグロスにミンクもいるから、何かに襲われたとしても何とかなるだろう」
俺が言うと、ゴホンと咳払いが聞こえる。
その方を見ると、
「私は?」
ヴォルフが自分に指をさす。
「おお、悪い……、忘れてた」
「主人は女子の方をよく覚えているらしい」
そう言って苦笑いしていた。-
「ご主人様、私もいいのか?」
ミンクが期待に満ちた目で聞いてくる。
「ミンクはそのためにメイドの勉強をしてるんだろ?
だから皆と一緒に行こう」
「嬉しい」
ミンクが俺に抱き付く。
「ミンク。
ご主人様に抱き付くメイドは居ませんよ」
アーネがミンクに注意をする。
「まあ、いいだろう。
ここは気心が知れた者しかいないからな」
「それでは私も」
カミラが近寄ってくる。
「それならば私もだな」
ミラグロスも俺に近寄ってくる。
「私もだよぉ」
ラインが寄ってきた。
「でへへ」
ミンクは嬉しそうだ。
「私は楽しい。
あのダンジョンの奥底で、誰も居ない部屋でずっと誰かが来るのを待っていた。
でもケインと居ると待っていなくても周りに人が集まってくる。
ご主人様もベルト様もミランダ様もカミラ姉もミランダ姉もミラグロスも、私がカイザードラゴンだという事を気にせず、いい事をしたら褒めてくれるし、悪いことをしたら注意してくれる。
周りに誰かが居るってこんなに楽しい事だとは思わなかった」
「ミンクも頑張っているしな」
ミンクの頭を撫でると、
「うん」
と言って気持よさそうに目を細めた。
俺とラインで、リズの部屋に行った。
俺の部屋で話したことを説明し、
「という訳で、観光に行かないか?」
俺はリズに聞いた。
「お父様はなぜか『自分の部屋からあまり外に出るな』と言われています」
その辺はアルフ対策なんだろう。
「『俺が守る』と言えば?」
「当然行きます」
リズがニコリと笑い大きく頷くのだった。
リズに付いて、俺とラインが謁見の間に向かう。
すでにバルト王には「話がある」ことを伝え、待っているらしい。
俺たち三人が王の前に跪くと、
「リズよ、話があるとか……。
どうしたのだ?」
バルト王が聞く。
「マクダル王国の王都であるメルベイユは治安が良いと聞きます。
私とラインそしてケインとその連れで街を散策したいと思います。
よろしいでしょうか?」
「こちらから護衛を出さなくても良いのか?」
「大丈夫です。
もし何かあった場合は父に『護衛を断った』と言っていただいて結構です」
「大した自信だな」
「私の護衛は優秀ですから」
ニコリと笑って王に言うと、
「わかった、好きにすればいい」
と王の許可が出るのだった。。
読んでいただきありがとうございます。
今後しばらく一日一回の定期投稿ではなくなります。
申し訳ありません。




