55.街づくり
王宮から貰った地図を参考に配置を相談する。
「ここの平原は、開墾したほうが良さそうですね。
この領地の穀倉地帯にしましょう。
しかしこの辺の平地には花を咲かせましょう。
ラムル村に近いですから、アベイユやカルオミガの集める蜜を準備する必要があると思います。
ラムル村に近い部分の森は残しておいたほうが良いでしょう。
今後カルオミガの巣が大きくなったとしても緩衝地になると思います」
俺はその場所から離れたところを指差し、
「という事は、この森の辺りにダンジョンの入口を作るか?
岩山があるという事は石も近くでとれる」
と言う。
「そうですね、ケイン様の言う通り、石材、木材両方が取れるこの位置がダンジョンの街には良さそうです。
街道は、こんな感じでしょうか?」
ルンデルさんは地図の上を指でなぞる。
「いいや、これじゃ曲がり過ぎ。
できるだけまっすぐの道を作ろう。
流通を安定させるにはいい道が必要だと思う」
「しかし、これではお金が……。
それに、石を敷くとなると時間も……」
「そこは俺がやるよ。
木の伐採、乾燥も俺がします。
土地の区画整理、開墾もしましょう。
ルンデルさんには、街に必要そうな建物を探して欲しい。
宿屋とか、商店とか、鍛冶屋とかまあ、諸々。
できたら、家ごと引越ししたいっていう人が居ればいいね」
俺がそう言うと、ルンデルさんも気付いたようだ。
「あ、今のお屋敷と一緒ですね」
ポンと手を叩いた。
「そういう事。
そして、農民たちの家を探して欲しい。
区画整理した土地に家をつけて販売する。
ただし、個人にね」
ルンデルさんは少し考え、
「しかし、土地付きの家など農民たちには買えませんよ?」
と言った。
「月賦で払ってもらう。
その前に、土地代なんて格安でいいんだ。
働いた分で支払ってもらって、いつか手に入るようにしてやりたい」
「何でそのような事を?」
「小作人じゃ夢が無いだろ?
小さいながらも土地持ちってのがやる気になるような気がする。
だから、獣人だろうがドワーフだろうが、エルフだろうがやる気がありそうな人に売ってもらいたい。
商人が買い占めるのはダメだよ」
俺が言うと、
「畏まりました」
苦笑いのルンデルさんだった。
俺は道を作る。
ラムル村から森林を抜け区画整理された畑とダンジョンの街に至る道。
等間隔で広場を作り、その場所に伐採した木を積んで、乾燥させた。
そして、できるだけ目的地に向けて直線に道を作る。
その道は魔力で圧縮。
アスファルト並みに硬くした。
「なぜ、ケイン殿がする必要がある?」
護衛ということで俺の横に立っていたミラグロスが聞いてくる。
俺はニコリと笑うと、
「俺ができるからだよ」
と言った。
「それに、急いで発展させないと、ミルドラウス侯爵に婚約するって言えないだろ?」
俺の言葉に、
「おっ、おう。
いきなりだから焦ったぞ」
と頬を染める。
「ダンジョンで戦ったせいか、魔力も筋力もバケモノじみているんだ。
人力の要るこういう所で使わないともったいないしな」
その後、黙々と道を作ったお陰で、二日ほどで道路の目星がつく。
荒れ地に関しては、百メートルの碁盤の目に区切り、各々の角に家用の平地を作ったあとは、残りの部分を耕作する。
んー鶏糞を入れたいところだが、今回は持ってきてないから後で鋤き込んでもらおう。
中央に役場兼商店を設置。
住民の把握と生産量の確保を考えている。
まあ、今は足りない家と建物の確保が必要である。
ダンジョンの入口を作る街に着いても道を繋ぎ、森を切り開き後は上物を置くだけにしておく。
ん、俺の準備完了。
上下水道なんかの事も考える必要があるが、上物が載ってからかなぁ。
すぐに人も来ないだろうし。
後はルンデルさんに引き渡して投げてしまうことにした。
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