51.迫る危機
カミラと俺は冒険者ギルドに呼び出されていた。
まあ、ついでだからとアーネも冒険者登録しておく。
赤の光だった。
Bランク相当。
アーネってやっぱり強いね。
「ところで、何で私とカミラが呼び出されたので?」
ギルドマスターのグレッグさんに聞いた。
「ああ、頼みたいことがある。
スタンピードが近い」
「スタンピード?」
「ご主人様、ダンジョンから魔物が吐き出される現象だと聞いています。
しかし、周期的には数百年に一度かと?」
カミラはグレッグさんを見る。
「通常、知られているダンジョンは、人によって魔物が狩られることで、ダンジョンコアというダンジョンを管理する魔石に溜まる魔力が消費される。
しかし、人に知られていないダンジョン……または、人に知られていたとしてもほとんど魔物が狩られることのないダンジョンにあるダンジョンコアには魔力が際限なく蓄積され、魔力がいっぱいになる直前にダンジョン内に居る魔物を吐き出したのち、新しく魔物を作り直す。
それがスタンピードだ」
おかしくないか?
「そんな人に知られていないダンジョンがこの近くに?」
「ああ、ここにな」
グレッグさんは足元を指差して言った。
「にしても、何で私とカミラに?」
「冒険者ギルドの現有戦力で一番強いと判断した。
SやSSの冒険者も居るが、出払っていてな」
「で、俺に白羽の矢が立ったと?」
「それも有るが、この王都にダンジョンがあるって話も、俺と国のお偉いさんしか知らない」
公表できないってことか……。
「まさか、国王からの無茶振りとか?」
グレッグさんの口角が上がると、
「よくわかったな。
そうだ、現国王から『我が娘を妻にしたいという面白い子爵が居る』。
『これは子爵にとってチャンスだよ』と笑いながら言っていた」
と言って笑っていた。
「つまり何とかできるだけの力を見せろと?」
「そこはわからない。
うまく使われて終わりかもしれない。
しかし、ダンジョンを何とかするという事は、莫大な利益を生む。
お前は収納魔法を持っていたな。
その素材と宝物を手に入れれば、この国をも動かすことができるかもしれない」
「結局無茶振りを回避する方法は無い……か」
ヤレヤレだ。
弱みを持っているとこうなる。
「ご主人様、やりましょう。
私は、エリザベス様と一緒に暮らしたいです」
カミラは笑う。
「そうだな……」
「で、どこに行けばいい?」
「入口は冒険者ギルドの最下層にダンジョンへの扉がある」
グレッグさんが言う。
「食料は、この前の戦争の物がある。
装備もあるな。
なくなれば、ダンジョンで拾ったものでもいい。
最悪、魔法で戦うか……」
ブツブツと俺が分析を始めると、
「行くのですね」
「ああ、行く。
来てくれるだろ?」
カミラを見ると、
「当然です」
ニコリと笑う。
「わっ、私も」
アーネも手を上げた。
「そうだな、アーネにも強くなってもらおうか……。
グレッグさん。
今、このギルドにある一番いい革鎧をこのアーネに。
後、短剣を。
金はルンデルさんに言えば準備してくれます」
「アーネ、装備はそんなものでいいか?」
「ご主人様、大丈夫」
アーネがサムズアップした。
アーネめメイド服の上に革鎧か。
真白な革鎧が、逆に似合うとはね……。
装備を身に着け準備が整うと、グレッグさんは大きな扉の前に俺たちを連れて行った。
「ここが入口前の扉だ。
お前らが入ったら、この扉に封印を再び施す」
「出るには?」
「ダンジョンコアの部屋から、外に出る魔法があるはず」
「はず……ね。
無茶を言う」
ハードルが高いねぇ……。
扉を開けると、スタンピードの前兆なのか、ゴブリンがウロウロしていた。
「それじゃあ、グレッグさん屋敷への連絡、おねがいしますね」
既にカミラが飛び込み、いつもの爪でゴブリンを血祭りにあげ始めていた。
俺とアーネが入ると、その扉がバタンと閉まるのだった。
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