45’.わが村4
度々の登場、私、村人です。
前回は領主様の屋敷ができたわけですが、今回は我が村の農業事情が変わった件です。
村長が領主様に、
「コッコーの糞とホルスの糞が結構な量になっているのです。
匂いもしますので、どうすればいいかと……」
困った顔で訊きました。
実際、牛乳が売れている関係でホルスの数を増やしています。
そこら中にできるホルスの糞を、一つにまとめていました。
そして、匂いと共にその場から湯気が立つようになったのです。
コッコーについても同じで、数を増やした分糞も増えます。
これも外に集めていました。
「えっ?」
領主様は驚くと、
コッコーの糞やホルスの糞は畑に鋤き込めば肥料になりますよ?」
という。
初耳な我々、
領主様を疑い、
「肥料ですか?
本当ですか?」
と聞いてしまう。
そんな我々に気付いたのか領主様は、
「今からだと何の作物を作る?」
と聞いてきました。
「大豆でしょうか?」
村長が言います。
すると、領主様は木や鉄を使って何かの道具を作り出します。
「鋤」というものだそうです。
そして、ホルスの群れに近づき、一頭のオスを連れてくると、その鋤に繋ぎました。
領主様がホルスと鋤を使って、畑を起こして行きます。
簡単に深く土が起こされました。
我々は「おぉ……」という驚く声をあげてしまいました。
今までは一鍬一鍬起こす必要があった畑が、あっという間に黒々とした土になります。
そこに領主様はホルスの糞をまきました。
魔物であるはずのホルス。
我々には慣れており、力のあるホルスを農業に使うなど気が付きもしませんでした。
「ホルスにこのような使い方があったとは……」
皆は驚いていました。
「ホルスは人よりも力がある。
道具さえあればその土地を起こすことができる。
起こした土地にホルスの糞をまけば肥料になり、収穫量が上がる」
フンフンと私たちは頷きます。
領主様は、王都の鍛冶屋に先程作った鋤と同じものを四つほど発注してくれました。
現在ラムル村に居るオスのホルスの数が五頭だったからでしょう。
わが村ではホルスを労働力として使うようになりました。
当然肥料としてホルスやコッコーの糞も使います。
おかげでいつもより収穫量が上がり、農作業も楽になりました。
この結果、ラムル村の収穫量の多さが巷で噂になっているそうです。
その原因がホルスであることも知られているようです。
大豆の収穫の量が多かったことで、目ざとい商人がラムル村の農業を知り、ホルスを求めてくるようになりました。
しかし、このホルスはルンデル商会のものであり、会頭が「売らない」と言っているもの。
勝手に売る訳にはいきません。
それに、この五頭が居ないと我々が過酷な農作業をすることになります。
結局直接交渉に来た商人は、ルンデル商会の支店長に対応してもらい、我々は関与しない事にしました。
あっ、ホルスの労働力は凄いです。
それによくいう事を聞くので、細かい所も起こせます。
お陰で農作業をして戻っても、体が疲れ切っていません。
ですから妻と……疲れ切ることができます。
次はいい報告をしたいですね。
読んでいただきありがとうございます。




