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105.卒業

 えーっと、卒業式です。

 卒業生代表が、当然リズ。

 在校生代表は……すまん、知らない男性生徒。

 歌を歌う訳ではなく、送辞と答辞を聞いて、

「卒業生に幸あれ!」

 校長が声をあげると、式が終わった。


 まあ、卒業式と言えば、ボタン争奪戦とか聞いたことがあったが、特にそんなこともなく、何となくカミラ、リズ、ライン、レオナが俺の周りに集まると、そして父さん、王、クレール様にルンデルさんが集まった。

 周りに護衛の兵士も多いし異様な雰囲気なのか誰も近寄ってこない。


「めでたいな」

 王が言う。

「確かに……」

 クレール様も頷いていた。

「王やラインバッハ侯爵、ルンデルさんのお陰で、我が息子ケインがこのように立派になりました。

 こんなに短期間に侯爵になるなど……」

 父さんが泣いていた。

「その基礎を作ったのは、ベルト殿や、ミランダ殿の尽力だろう。

 のびのびと育てられた。

 まあ、そのせいで、うちのラインはそちらへ嫁ぐことになった訳だが……」

 苦笑いをするクレール様。

「ラインがうちのケインの所に来ることで、魔法に関する跡継ぎができたと、ミランダが喜んでいます。

 ケイン自身の魔力はミランダをすでに超えています。

 言わなくても、それなりにできる。

 でも、ラインはミランダに教わった分、魔法が出来るようになる。だからラインが可愛いのでしょう」

父さんが言った。

「それは良かった。

 義理の母親となるミランダ殿と仲がいいのはいいことだ。

 ベルト殿に弟子は?」

「そうですね。

 フィリベルトでしょうか。

 獣人本来のしなやかな筋肉を持っています。

 そうですね、基礎能力であれば、既に私を超えています。

 ただ、私も負けるつもりはありませんが……。

 暇な時に、ミンクと共にダンジョンに入っていますよ」

「ダンジョンへ?」

「魔物を狩って、力をつけています」

 ゴホンと咳払いをする王。

「うちのはいつ頃?」

 早くしろとでもいうように言う。

「それは、ケインに頑張ってもらわないと……」

 父さんは俺を見た。


「えーっと、屋敷も男爵仕様のままで、侯爵って感じじゃないんですよねぇ……」

 頭を掻き苦笑いするしかない。


 男爵から、侯爵までの時間が短かった俺。

 必要な建物はあるにしろ小さい。

 侯爵にしては建物が小さい。

 頭でっかちなのだ。


「その辺は、私どもが何とか……。

 とはいうものの、新規の館となると……」

 ルンデルさんのフォロー。

 館なんて、時間がかかるものだし、難しいだろう。

「私はそのようなことは気にしませんが?

 私は、元々ケインと一緒に居たかった。

 それを実現したのは事実」

 リズは王を見る。

「リズ。

 ケインはお前を迎え入れるにふさわしい場所を作らねばならない訳だ。

 まあ、婚約者としては、妻になる者へ相応の場所を作る必要がある訳だ」

 王が言った。

「お父様。

 どうせ、ラフティーの屋敷にも、王都の屋敷にも、ラムル村の屋敷にも、あの砦にもつながっている。

 最前線の伯爵の屋敷ともつながっているのです。

 全てを一つのものとして考えればいいんじゃないのですか?」

 視点の変更を言うリズ。


 確かに、普通の貴族じゃできないだろうなぁ……。


「それだと、この王国で一番大きな屋敷になるな……。

 しかし、表立っていないのは?」

 派手さが必要らしい。

「いいんですよ。

 表に出ているものは派手でなくても……。

 それを私もお父様も知っているのですから」

 今のままで……と言ってくれるリズ。

「ふむ……。であれば、後々には大きな屋敷を建ててもらうという事で……。

 そこは期待しておくか……」

 王が俺を見て言った。

 今は許してやるが、後にはそれなりの形にしろ……ってことなのだろう。

「畏まりました」

 というしかない俺だった。



「リズがの言う通りだと、居る場所は準備できているという事か……。

 それでは、いつ頃そっちに行かせればいい?」

「うちもだな」

 王とクレール様が俺を見た。

「過分な支度金を貰っているからな。

 それに合わせた人員を準備しないといけない」

「まあ、金がどうこう言う訳じゃないんだが、普通は支度金に白金貨十枚出したりはしないんだがね」

「そんなにか!

 王家が公爵や侯爵から妻を貰うよりも多いじゃないか!

 それで、うちは、あの金額だったわけだな」

 二人はニヤリと笑う。


 そう言えばミーナ様が驚いていた。

 あれは多すぎたせい?


「その辺は王からの無茶振りのダンジョンでいろいろ手に入れましたから……」

 ちょっとした嫌味。

「お陰で伯爵になれたであろう?」

 と言って王は俺を見る。

「まあ、それよりは、ミンクが来てくれたのが嬉しかったですけどね」


 そこはどうでもいい、確かにミンクが俺を慕ってくれているのは大きい。

 でなければ、ダンジョンを使ったショートカットなどできなかっただろう。


「スタンピードを抑えるだけかと思っていたが、カイザードラゴンを手元に置くようになるとは……」

 俺を見る王に、

「お陰で、バケモノ認定されましたよ」

 嫌味を言う俺。

「上手くリズを手に入れたではないか。

 俺も周りから結構言われているのだ。

 だから、王家を守って欲しいのう」

 チラリと王が俺を見たが、プイとそっぽを向く俺。


「それで、お前の所は何を?」

 王がクレール様へ聞く。

「そうですね、兵が足りないようなので、兵と指揮官、馬や装備。

 あと鍛えられたメイドでしょうか」

「それならば、うちは魔法師団の方から、魔法使いとそのリーダー。

 あとは……、代官が出来そうな若いのだな。

 税を扱えるような者も居ない。

 とりあえず形だけでも侯爵らしくしないと、リズが働く必要が出てきても困る」

 色々考えてはくれているらしい。


 リズはというと、

「えっ? ケインのためなら指揮官でも代官でもして働きますが?」

 と言っていた。

 ありがたいことです……。




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