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104.籾蒔き

 一日土を落ち着けたあと、水を抜いた。

 少し乾かした後、籾を蒔く。

 この籾は塩を使って比重を上げた塩水で種籾を浮かせ、重い籾だけを選別してある。

 何度かして、塩を洗い流し、乾燥したもの。


 本来ならば苗を作って植えるのだろうが、篩にかけた土や育苗箱が必要になる。

 今回はこれでやることにした。


 ここでもぬかるんだ土の上で、ラミアが活躍する。

 スルスルと泥の上を走る。

 そして、力があるラミアは、籾の入った俵を片手に持ち、米を蒔いていく。

 籾の密度? どの程度がいいのかはわからないので、ラミアたちに任せた。

 ミアが先頭になって籾を蒔いていく。

 向こうならもんぺ姿?


 さすが湿原に強いラミア。

 手際よく籾を蒔き早々に終える。

 再びの宴会。

 酒飲んで、踊る魔物たち。

 タウロスが酒を注ぎに来た。

 その後は両脇にミアとミラグロス。

 俺らとあんまり変わらんじゃん。



 夜になると、再びの乱交?

 そんなつもりはないが、ミアに求められるという事はそう言う事、酔っているせいか巻き付いてくる。

 ミンクと比べれば軽い軽い。

 魔物側のミラグロスも若干魔物化していた。

 朝までだった。



 一度村を離れ、一週間ほど後で再び村へ。

 籾から発芽を確認する。

 タウロスを含めた魔物たちも、米を育て方を必死で覚えようとしている。

 あー、メモ帳……無いね。その前に字を覚えてもらわないとだな。


 ふとミアを見る。

「ミア、字を覚えるか?」

 軽く言ってみると、

「字でありんすか?」

 首を傾げるミア。

「何かを伝えたりするのに便利なものだ。

 字を覚えれば、頭の中に行動を全てを覚えなくても、物に描いておいて、それを見て確認することができる。

 そうすれば抜けが少なくなる。

 今、俺がしていることを、皆は目で見て頭で覚えているだろう?

 どうしても頭で覚えたものは時間が経つにつれて抜けていく。

 それを字にしておいておけば、それを見ればやり方がわかるって訳だ」

「しかし、あちき以外が字を知らなければ意味がありんせん」

「ミアが覚えた字を、皆に教えればいいだろ?

 つまり先生って訳だ。

 もしも、人の言葉を発することができなくても、字が書ければある程度は意思疎通できると思う。

 それこそ、人間とのいさかいも減るかもな」

「あちきの先生は誰がやってくれるのでありんすか」

 俺はミラグロスを見た。

「ご主人様、私ですか?」

 自分を指差すミラグロス。

「丁度、ここと砦は近いしな。

 姉のような存在みたいだし、気心も知れているようだ。

 ミラグロスも書類を書いている。

 字は書けるだろ?」

 と聞くと、

「当然です」

 胸を張るミラグロス。

「では、ミラグロスにはミアへの教育係を任命する」

「了解!」

 ニッと笑うミラグロス。


「あと、字が使えるようになったら、計算も教えてやってくれ」

「けっ計算……ですか……」

 苦手かね? 表情に出ている。

 ほとんど決済しかしていないのかな?

 サインする係?

 ちゃんと書類見ておいてね。


「苦手か?」

 俺が聞くと、

「少し」

 俯くミラグロス。


「まあ、初歩的な足し算や引き算でいいから教えてやってくれ」

 俺が言うと、

「わっ、わかりました」

 と言って頷いた。

 これは……。

「ちゃんとできたら、ご褒美をやるから」

 と発破をかけてみる。

 ご褒美と聞き、

「はい! 頑張ります!」

 ミラグロスの声が大きくなるのだった。


 しかし、ミラグロスのご褒美って……何だろう?

 アレでいいのかね?



 苗が大きくなると、水を張る。

 後は草取りかな……。

 そのへんはコボルドやラミアがやるだろう。

 夏が近づくと、苗はどんどん大きくなり、分けつをした。

 株が太いのはよく育っている証拠。秋になれば……どのくらい収穫できるのやら……。

 とりあえずは次元収納で、作りたいもの次第か……。

 酒に味噌、醤油……戦いよりがんばろっと……。


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