103.平原の村
まだ、名もなき村。
そこでは魔物たちが働く。
そう言えば、平原の砦も名前が無いな。
つけたほうがいいのかもな。
冬が終わり春の雰囲気を感じ始めた頃、ミラグロスと共にライアンに乗り、平原の村に向かう。
「主様!」
身長が高いミアはシュルシュルと俺に近づくと、俺の顔をミアの豊満な胸にうずめ、抱きしめて馬から引きずり下ろす。
しかし、ブラをしていないのはどうかと思うぞ?
ただ、……感触良し!
ムフ……。
しかし、
「ミア!
ご主人様に何をする!」
ミラグロスの言葉に、
「いいじゃありんせんか。
ミラグロスは昨日一緒でありんしょう?
主様からミラグロスの匂いがしんす」
ミアの反撃。
「それは……」
ミラグロスは顔を赤くして肯定の沈黙状態になるのだった。
魔物たちが俺を見上げる。
恥ずかしくなり、
「とりあえず降ろしてくれるか?」
というと、ミアが俺を降ろした。
村の中の建物はルンデルさんが探してくれたレンガ造りの建物に変わっている。
まっ、俺が運んだんだがね。
これなら、隙間風とかは問題ないだろう。
それなりの強度もあるしね。
ミノタウロスやトレントのような大きめの魔物用には倉庫のようなものを準備していた。
村の中の広場には、タウロスを前に村人たちが集まっていた。
「ここの者を集めました」
タウロスが言う。
皆の前に立つと、ミラグロスとミアが左右に立つ。
この村でミアの立ち位置は、俺の妻らしい。
「この村では、米を作ってもらう」
「あの、小道で仕切られた場所は?」
タウロスの質問に、
「湿地帯を畔で仕切って、農業用の用水路も作って堰もあるから水の管理もできる。
これを田んぼという」
俺は言った。
「田んぼ?」
「ファルケ王国の方ではどう言っているのか知らないが、俺は勝手にそう言っている」
「田んぼですね」
タウロスを含め皆が頷く。
畔以外にも水を流す用水路も整備。
水の管理も教えておいた。
次は水を張るように指示してある。
「さて、早速今日は、田起こしだね。
力仕事だから大変だ」
「お任せください、力仕事は我々の範疇ですので」
タウロスが頷いた。
「コメ作りの最初。皆、よろしく」
「どのようにすれば?
そう言えば、ルンデル商会の者が何か変なものをこちらに持ってきましたが?」
「ああ、あれを使う。
あれは犂といって、土を起こす道具だ」
ちなみに農具は、図を書きそれに近い物をルンデル商会に頼んで作ってもらった。
「ミノタウロスに引っ張ってもらいたい。
それをコボルドが操作する感じかな。
後で俺が実際にやってみるよ」
俺が区画整理した田んぼに行くと、土が乾いていた。
その中に裸足で入り、犂を引っ張る。ミラグロスがその犂の操作をした。
「こんな感じ」
本来なら牛や馬が引くのだろうが、ここはミノタウロスたちに任せる。
準備した犂についた肩ひもをつけミノタウロスが引き始めるミノタウロスの体の筋肉が盛り上がる。
そして、コボルドが細かい操作を始めた。
意外と上手い。
結構な速さで、田が起こされていく。
これなら、問題ないだろう。
あまり詳しくないとはいえ親父に聞いた米作り。
こんな所で役立つとは……。
水を張った田んぼを馬鍬で代掻きをした。
まあ、動力ミノタウロス……かと思いきや、ミアのようなラミアも活躍していた。
湿地帯に強いというのが理由らしい。
代掻きも並行して行う。
今ある田んぼの枚数の中ほどで、既に昼過ぎ。
コボルドのメスたちがグルグル回す大きな四本足の魔物の丸焼きが、広場の真ん中にあった。
タウロスたちには共食い?
肉食うんだ……。
皆は皿を持ち、並ぶ。
更にはパンと肉、そして野菜が載せられていた。
それを持ってタウロスが俺の前に現れた。
「腹は満たされているかな?」
俺が聞くと、
「ルンデル商会の者たちが定期的にこちらに食料を送り届けてくれています。
中にはエールもあるので、皆楽しみにしていますよ。
それに武器も貰っていますから、あの様に狩りをして肉も手に入りますので、問題ありません」
タウロスは丸焼きの肉を指差した。
「あれは?」
根を張って固まっているように見えるトレント。
「樹霊であるトレントは地の魔力を吸いますが、ケイン様がこの地を管理し始めてからは、魔力が満ちていると言います。
問題ないでしょう。
今後は、ここで、米というものも手に入るようになれば、ルンデル商会で買い上げてくれるという事……。
魔物の村という事もあり、今は自立は難しいかもしれませんが、ケイン様の代の間には自立したいですね」
「ああ、俺的には、米を加工したい。
皆が食べるというものじゃないだろうが流通させて、酒への加工をしたいと思っている」
「酒ですか?」
「ワインにエールは有るが、それとは別の酒だね。
これがまた美味いんだ」
「期待しておきましょう」
タウロスが笑った。
保存しておいたのか、酒も出てくる。
皆で踊ったりして盛り上がっている。
魔物も人もあまり変わらないようだ。
ミラグロスとミアが俺の周りに来て、花を咲かせるのだった。
その日はミラグロスと村の俺の部屋に泊る。
風呂で仕事の汗を流し、ベッドに向かうと……はみ出てるし……。
それも山が二つ。
えーっと、ミアとミラグロス?
「何をやっているんだ?」
体を拭きながら、部屋に入ると、
「ミラグロス姉さんをこんな風にしてみんした」
ミアが掛布団を剥ぐと、ミラグロスに巻き付くミアの尻尾。
わざとなのか体が強調されている。
細く長い尻尾がミラグロスの敏感なところを責める。
ミラグロスの口から少し涎が垂れている。
俺に気付き、
「ごっ、ご主人様。
このような姿を」
とは言うが、恐縮しつつも上気した顔。
「何をやっているのやら。
二人の間に入りたいんだが?」
俺が言うとミアは体を離し、ミラグロスとの間を作る。
そして、その間に入った。
まあ、その後は……色々と……。
朝までである。




