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95.捕虜交換

 えっと、フィリベルトです。

 カミロ・グリエゴ公爵の返還が決まりました。

 捕虜になった兵士たちは、既にラフティーの街でファルケ王国へ返還されており、ファルケ王国から結構なお金と結構な食料を頂いたらしい。

 その一部がケイン・ハイデマン伯爵の所にも回ってきています。

 ケイン様ホクホクです。


 ------------------------

「何で私がファルケ王国の王都まで連れて行く必要が?」

 俺が聞くと、

「え……お前が見たいんだってさ」

 王が軽く言った。

「それに、お前が行くのなら、護衛が少なくて済むだろ?

 兵を動かせば、その分の食料と金が要る」

「身代金をふんだくったって聞いてますが?」

「それはそれ……。国内の整備に使うさ。

 お前だって、一部は貰っただろう?」

「褒美だと思っていましたが?」

「お前への褒美はリズだ」

「酷いですね」

「嫌なのか?」

「そりゃ、欲しいですよ。

 だから、頑張っているんです」

「その弱みに付け込むのがこの王なのだ!」

 わっはっはと胸を張る。


 弱みに付け込んでるってオッサン言い切ったよ……。


「護衛は、そっちで準備してくれ。

 食料も持っているだろう?」


 こうして、トビケンに行くことになった訳だ。

 ------------------------


 ってな話を俺はケイン様から聞かされたうえ、

「という訳で、フィリベルト、一緒に頼む」

 とケイン様が俺に言ってきた。

「何で俺なんっスか?」

 当然聞き返す。


 意味が分からない。


 しかし、

「えっ、父さんに強いって聞いてるから。

 ドラゴンくらいは片手なんだろ?

 ミンクの一撃にも耐えたとか?」

 ベルト様から情報が漏れていたようだ。

「ミンク様の一撃に耐えたのはベルト様ですよ。

 それにドラゴンを片手という訳には……」

 正直、野良のドラゴンぐらいなら一撃ではあるが、それは言わない。

 言い訳をして、何とか逃げようとしては見たが、

「まあ、それでも、父さん並みにはなっている訳だ」

 とケイン様は引かなかった。


「で、何で俺なんっスか?」

 もう一度理由を聞くと、

「俺が一人で動くと婚約者が増える……と警戒していてな。

 実際、アネルマやミアのこともあって、俺が動く前に、戦える強い奴を前に出そうという事になった。

 要は、俺の壁だ」

 とケイン様は事情俺に言う。

「だったら、ベルト様でも!」

「父さんは母さんとの仲を考え、同行しないらしい」


 ベルト様、ミランダ様にぞっこんだからなぁ……。

 その点は、ケイン様と違うよなぁ……。


 そんな事を考えていると、ケイン様が咳払い。

「同行するなら二人で……と言ってたけど、俺がトビケンに行くと魔法師団の教師役が居なくなるから母さんは行けないんだ。

 まだ、ディアナも小さいし。

 そこで、若くて独身者で強い男というと……」

 ケイン様が俺を見る。

「え~~。

 結局ケイン様の婚約者絡みじゃないですか」

 文句を言ってみたが、

「仕方ないだろう?

 一人でウロウロしたら、知らない間に一人増えるんだ。

 お前が動いてくれたら、イイトコの女性といい感じになるかもしれないぞ?」

 と俺の肩を力いっぱい掴んで言う。

「イダダダダダ……。

 痛いですよ!」

「おお、すまん」

「俺、そういうの要りません!

 それに、獣人なんて相手する女性なんて居ないでしょ?

 従者にだってするのも珍しいんですから」

 俺が言うと、

「そうなの? そうなんだ」

 今更ながら知ったとでもいうようにケイン様が言った。


 獣人の人口比が違うせいか、人間は獣人を見下す傾向にある。

 ベルト様のように本来の能力を見てくれる者ならいいが、そうでない者も居るのだ。

 そのへんはベルト様に教育されているケイン様も人間だからとか獣人だからとかいうのは気にしないらしい。


 はあ……、俺はため息つき、

「意外と、うちの騎士団や兵士って獣人多いんですよ?

 だから、うちのベルト様や気にしないケイン様は珍しいんです」

 というと、

「そうなのか?

 まあ、いいじゃん」

 相変わらず軽い。

「で、どうする?」

 ケイン様が聞いてきた。

「ベルト様に言われていますから行きますよ」

 カミラ様の意見がミランダ様に届き、ベルト様から俺に伝わったようだ。

 師匠であるベルト様の言う事は聞くしかない。

 再び俺は、はあ……とため息をつくと、

「はいはい、ケイン様の従者でいいんですね」

 俺が聞くと、

「ああ、それで頼む」

 ケイン様が言った。


 こうして、俺もケイン様の従者としてトビケンに向かうことになる。

 とは言うもののカミロ・グリエゴ公爵がラフティーの街まで到着するには時間がかかる。

 カミロ・グリエゴ公爵には、ダンジョンによるバイパスを知られてはならない。

 そのために、ラフティーの街までは、ゆっくりと護衛付きの馬車で移動してもらうことになっている。

 まあ、移動だけでも結構かかる。

 ラフティーの街に到着すれば、連絡が来ることになっているから、それまではベルト様とダンジョンに入ったり、訓練の日々だろう。

 まあ、俺も旅は嫌いじゃない。

 楽しみにしておきますか。


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