表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の業火  作者: 山崎 桜
第一章 家族の幸せとは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

第一章 第一幕 家族の幸せとは

申し訳ございませんでした。表現の一部に誤りがあるのを確認させて頂きました。訂正させていただきます。

 蛍光灯の白い光が、オフィスの机の上に冷たく落ちていた。窓の外は人の笑い声で溢れているのに、今日も彼は一人静かにパソコンの前で事務作業をしている。時刻は既に21時。勤務規定時間の19時をとっくに過ぎていた。時間外業務......いわゆる残業というものを彼は行っていた。画面に映るのは、自分の仕事ではない書類。頼まれたわけでもない。誰かがやり残した業務を、彼は「ついでに」片付けていた。机の端には冷めたコーヒーが置かれ、紙の山が影を作っている。


 彼の名前は【佐藤】といった。三人家族で小学生の一人娘と妻に愛されながら、毎日の生活を過ごしていた。佐藤の性格は竹を割ったように真っすぐで誠実であった。また、よく人助けをしていた。今――この時も本当は彼の仕事ではない事務作業を代わりにやっていた。彼はよく残業をしていた。手当はもちろん出ない。彼が独断で仕事をしているからだ。そんなに親切で仕事に熱心な佐藤だが、彼はまだ知らない。みな仕事を彼に任せて、ほとんどの人が外食やデート、ゲームやドラマなど個人の娯楽の時間を過ごしているということを。都合のいい駒にされていることを。それでも彼は怒らなかった。そもそもその事実を知らなかったのかもしれない。 ただ、心の奥底では問いが渦巻いていた。 「本当にこれでいいのか。誠実さは、ただ搾取されるためのものなのか」


 家に帰れば、妻が待っている。毎週金曜日には必ず彼の好きな料理を作ってくれる。小学生の娘・唯は今日の勉強の話や友達の話を楽しそうに話し、週末には家族で出かける計画を立てる。 妻は料理を作り、優しく彼の前に出す。まるで彼女からの愛を体現しているようだ。その時間だけが、佐藤にとっての救いだった。佐藤は誠実で、家族を愛していた。だが同時に、弱さを抱えていた。 「断れない」という弱さ。 「怒れない」という弱さ。本当は断りたいが、人を思い、YESと言ってしまう。 その弱さが、彼を机に縛り付け、やがて取り返しのつかない運命へと導いていくのだった。彼はそんなことも知らず、ただ一人、冷めたコーヒーの苦さを舌で味わっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ