香蓮と年越し
食べ終わったので再び部屋に戻り、あーだこーだ一人で言いながら、
無事すべてのコスメをドレッサーに収納することができた。
「やった!完璧♪」
お風呂に入って、出たらここに座ってスキンケアをしよう!
タンスから着替えを取り出していたら、スマホが鳴りだした。
龍弥?いや、違う…絶対に香蓮だ。
画面を見ると、予想は的中した。
「もしもし」
「真央、今からこない?一緒に年を越そうよ」
「えー、今からお風呂入るんだけど…」
「じゃあ出たらきてよ」
どうせなら行くよりも来てもらいたい。
この変わった部屋を香蓮に見せたいからだ。
「だったら香蓮がきてよ。お風呂出たら連絡するから」
「んー、わかった」
電話を切って、急いでお風呂に向かおうとしたところで足を止めた。
待って!相手は香蓮だよ、絶対にお風呂入ってるあいだに勝手に来ちゃうよね?
そうなると部屋を見たときの反応が楽しめない…
さすがの真央も香蓮の行動パターンを学習したので、お風呂に入るのをやめて
香蓮がくるのを待ってみることにした。
10分ほどするとドアをドンドンと叩く音が聞こえてきたので、予想は的中。
トントンと階段を上がる音がして、ガチャリとドアの扉が開く。
「あれ、真央お風呂じゃなかったの?って…部屋が変わってる!」
思った通りの反応をしてくれてありがとう。
「模様替えをしたの。絶対にお風呂入ってる間に香蓮がくると思ってさ、そしたら香蓮の反応が見れないでしょ?だから入らないで待ってたの。いい感じでしょ?」
「うん!ピンクで統一されていていいね。あ、ドレッサー!すごい!!」
香蓮がドレッサーに食いつき、羨ましそうに眺めている。
ただ、勝手に開けているのを見て、やっぱり香蓮だなと思った。
「真央、いつの間にこんなコスメ集めたの?」
「気が付いたら増えてた。バイト代入るとついつい買っちゃうんだよね」
「ふーん…最初はあんなにメイクするの嫌がってたのに」
香蓮がそういってニヤリとしていた。
「昔の話はいいの!それよりお風呂入ってくるから」
着替えを持って、逃げるように部屋を出ようとすると、
香蓮が「待って」と呼び止めてきたので、とりあえず足を止める。
「わたしも入る」
「え?だったら家で入ってきなよ」
「たまにはいいじゃん」
「別にいいけどさ…着替えは?」
「ん?真央の借りる」
そういうと同時に、勝手にタンスを開けていた。
前からだけど、香蓮にとって真央のプライベートは存在しない。
ため息をついたが、まあいいか…と思い直して一緒にお風呂場へ向かった。
そういえば香蓮とお風呂に入るのって修学旅行以来だな…
そんなことを思いながら裸になり、浴室に入る。
「あれ、真央痩せた?」
シャワーを浴びながら会話を続ける。
「そうかな?特に変わってないと思うけど」
「気のせいか…前より胸が小さくなったと思ったから」
「香蓮!悪かったね、小さい胸で!」
怒りながら香蓮の頬をつねる。
「痛いって…」
「からかった罰。それにね、サイズ変わってないから」
「Aカップだっけ?」
つねっている指の力を強める。
「Bだよ!」
「痛い!冗談だって」
ここらへんでやめておこう。
頬から指を離すと、香蓮は「あー、痛かった」とつねられたところを摩っていた。
「まったく。香蓮だってたいして変わらないのに」
「そう思う?」
香蓮が少し自慢げに言ってくる。
言われてみれば、前より大きくなったような気が…
「Cカップになったんだ。ワンサイズアップ」
「太ったからじゃなくて?」
「太ってない!」
今度は香蓮が真央の頬をつねる。
「痛い…香蓮がからかったから仕返ししたの!」
そういうと、すぐに離してくれたのでホッとした。
これ、結構痛いんだよね…
それにしてもワンサイズアップか、とりあえず褒めておいてあげよう。
「大きくなってよかったね」
「女性ホルモンが分泌されてるからね」
香蓮はなにか言いたそうな感じだ。
というより、言いたいんだろうな。
「何かあったの?」
「聞きたい?」
聞きたいんじゃなくて言いたいんでしょ。
けど、それをいうとへそを曲げるから言わない。
「もったいぶらないでよ」
「んー…お風呂出たらね」
なんだそれ?
もったいぶられている分、とても気になったが、あとで話すというから我慢しよう。
頭と体を洗い、一緒に湯船に浸かる。
「やっぱり家のお風呂だと狭いよね」
「2人入ってるからね。それにしてももうすぐ今年が終わるのか…なんか早いなぁ」
なんとなく真央は天井を見上げていた。
ホント早いな…いろいろあったのに…
「ね、1年前はこうやって真央と一緒にお風呂入るなんて想像もつかなかったよ」
「そりゃそうだよ、1年前は普通に男だったし…」
「そう考えると、よくぞここまで立派な女になった、幼馴染として鼻が高いよ」
「別に香蓮は関係なくない?」
「あれ、いろいろと協力してあげたよね?最初、一緒に買い物行ってあげたの誰だっけ?学校でサポートしてあげたの誰だっけ?メイク教えてあげたの誰だっけ?木谷のことだって…」
ほかはともかく、龍弥の件に関してはすぐさま反応した。
「龍弥は関係ないじゃん!むしろ余計なことばっかりして」
「だってもどかしかったんだもん。でも今は付き合ってるんだからいいけど」
「うー…もう龍弥の話はおしまい!」
「ダメ、今日は徹底的に聞くよ。これからのこととかも含めてね」
「無理だよ…」
「ダメだって、逃がさないよ」
「そうじゃない…熱くてのぼせそう…」
「あっ…」
気が付けば結構な時間、湯船に浸かっていたのでのぼせそうになっていても
不思議じゃなかったので、ここは素直に2人ともお風呂から上がることにした。




