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彗星に願いをこめて  作者: 姫
88/122

好き

「あの子は…どうしたの?」

「衣香とは…ちゃんと別れたよ」

「そうなんだ…」

あの衣香が素直に別れたとは思えなかったが、

クリスマスイブに一緒にいないのを考えると嘘を言っているとも思えない。

あとで文句とか言われないかな…

今までの経緯を考えると変な不安が残る。

「もう衣香のことは心配しなくていいから…行こう!」

龍弥が歩き出したので、真央は「うん」と返事をしてから横に並んで歩き出した。

なんかデートっぽいな…

そんなことを思いながら龍弥の顔を覗き込む。

どことなく、いつもより男らしく見えたのでドキッとした。

すると、龍弥は無言で真央の手を握ってきたので、真央もその手を握り返していた。

「龍弥の手ってこんな大きかったんだ…」

「そうか?真央の手が小さいんじゃないか?」

小さいと言われ、ちょっとムッとする。

「男の頃は大きかったもん。女になったから小さくなっただけで…」

「だから小さいんだろ、女なんだから」

「そうだけど…」

「俺はこの真央の小さな手が好きだけどな」

「も、もう…急に変なこと言わないでよ!」

絶対に顔が赤くなってるな…最悪…

いつになく龍弥は男らしく堂々としている。

まるで何か吹っ切れたような感じだ。

気が付くとイルミネーションの前にたどり着いていた。

「わー…きれい…」

一面に広がるイルミネーションに、真央の目は奪われていた。

「写真撮るか?」

「そうだね!」

真央はスマホを取りだし、何枚も撮影しながらはしゃいでいた。

「龍弥、ツリーがあるよ!」

「この前で撮ってもらうぜ」

そういって、龍弥は近くで写真を撮っていたカップルに声をかけた。

「すいません、撮ってもらってもいいですか?」

「いいですよ」

龍弥が自らこういう行動に出るのがは珍しい。

いつもなら、声をかけるのもためらいがちだし、そもそも写真を撮ろうなんて言い出さない。

やっぱりいつもの龍弥と違う…

なんか…今日の龍弥のほうが好き…

撮ってもらった写真を2人で確認する。

寄り添っていて、とてもいい感じだ。

まるで…

「恋人同士みたいだね…」

思わず口に出してしまい、ハッとなった。

ところが、龍弥は照れる素振りもなく「そうだな」と平然と言ってきて、

ジッと真央のことを見つめてきた。

ヤバい…すごくドキドキしてくる…

「本当の恋人同士になろうか」

さらっと言われ、一瞬呆気にとられる。

「それって…」

「真央、付き合おう」

やっと付き合おうって言ってくれた…

しかもクリスマスイブでイルミネーションという最高のシチュエーションで…

けど、素直にOKしていいのだろうか。

やはり衣香のことが頭に残っていて、疑うと信じていたものが崩れ落ちそうになる。

ただ、信じればそれは揺るがないものにもなる。

返事をする前に、龍弥の目をしっかりと見て確認した。

まっすぐ真央を見つめるその目に澱みはない。

見ているのは真央だけだ。

今の龍弥なら…大丈夫!

「うん…」

そう答えると、龍弥がニコッとしたので、

真央も恥ずかしがりながらも笑みを浮かべて返し、再び手を繋いで歩き出した。

さっきよりもちょっとだけ距離を近づけて、寄り添うように歩くと

本当に付き合っているのを実感することができて、嬉しさがこみ上げてきた。

「真央、これからいろんなところに遊びに行こうな」

「うん!楽しみにしてる」

そう答えてから、お互い強く手を握りしめていた。

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