暴走
翌朝、雅子は真央を見てビックリした。
「真央、髪ボサボサじゃない」
「いいんだよ別に。近いうちバッサリ切るし。いってきます」
真央らしくない…男の頃のよう…ううん、無理に男らしく振舞おうとしている。
一体何があったの?
聞きたくても、すでに出て行ってしまったので不安が募るばかりだった。
同じように香蓮も真央を見て驚いた。
「真央、どうしたの?」
「別に気にすることねーだろ。それより早く行こうぜ。足遅いんだからよ」
「真央…その口の利き方…」
「ん?おかしくないだろ、俺は男なんだから」
香蓮は絶句してしまった。
間違いなく昨日のことが原因だ。
「真央は女の子でしょ、男なんかじゃ…」
「身体だけな。中身は男なんだよ、もう女らしく振舞うのはやめたよ。それより早く行くぞ」
昨日…やっぱり相当辛かったんだ…気づけなかった、
わたし…真央の親友なのに気づけなかった…
香蓮は必死に真央を説得したが、まるで聞き耳を持ってくれなかった。
それどころか、昔以上に男らしくしようと空回りしているようにも見え、
それが痛々しくて辛かった。
駅から歩いていると、そこに巴菜が合流してくる。
「おはよう、香蓮、真央」
「おう、三上」
「真央…三上って…」
「三上は三上だろ。俺、女らしくするのやめたからよ」
巴菜は昨日の衣香の件を知らないので、明らかに変わってしまった真央に戸惑っていた。
そんな巴菜に香蓮がこっそり話しかける。
「わたしがいけないの…真央のこと気づかなかったから…情けないよね」
「どういうこと?意味が分からないよ」
「あとで話す…」
香蓮はそう言うのが精いっぱいだった。
教室に入り、真央はあたりを見回し、とりあえず伊藤たちのところへ向かった。
「よう、伊藤」
「なんだ、竹下か」
「なんだじゃねーだろ。なんの話してるんだ、また下ネタか?俺も混ぜろよ」
伊藤たちは口をポカーンと開けていた。
「お前…なんだ、その口調は…」
「なにが?普通だろ。俺は男なんだからよ」
そのタイミングで、龍弥が教室に入ってくる。
真央は、その龍弥のところへ駆け寄った。
「龍弥、お前朝からなにシケたツラしてんだ。あの女とケンカでもしたのか?」
みんなと同じように驚いた顔、いや、それ以上の顔を龍弥はしていた。
「まあなんかあったら相談しろよ。俺が友達として聞いてやるから」
「真央…お前…」
「なんだよ、俺たち親友だろ」
龍弥は完全に絶句していた。
いや、龍弥だけではない、クラス中のみんなが絶句している。
そして、昨日のことを知っている人たちはみんな原因がわかっているだけに
何も言えなかった。
この日、真央は終始男子のところへ行き、ずっと男のような口調でしゃべっていた。
こんな真央は見ていられない。
香蓮は巴菜に昨日のことを話し、どうすればいいか相談してきた。
「そっか…その衣香って子、最低だね」
「うん…けど、そのあとちゃんとフォローしてあげなかったわたしがいけないの…」
確かに香蓮らしくないなと、巴菜は思った。
あれだけ真央のことを理解していて、一番側にいるのに
そこまで気がまわらなかったのは完全に香蓮のミスだ。
ただ、過ぎてしまったことは仕方ない。
「一番いいのは、木谷に昨日のことを話して、衣香に説教して謝らせる…」
そう言ってみたものの、それで真央が自分を取り戻せるとは思えなかった。
「こうなったのは木谷のせいだって責める…木谷に真央を説得…」
それも違うな…
どう考えても、巴菜は一つの答えしか出てこなかった。
「どう考えても、香蓮しかいないよ。悔しいけどわたしでもダメだと思う。やっぱり一番真央のこと理解しているのは香蓮なんだから」
しかし、香蓮はうつむいたまま何も答えない。
やっぱり香蓮らしくない。
いつもの香蓮なら「わたしが絶対に戻して見せる!」って自ら率先して行動しているはずだ。
一体どうしたっていうの?
巴菜は思い切って聞いてみることにした。
「香蓮、何があったの?真央のこと気づかなかったのもそうだし、自分で戻そうともしない、香蓮らしくないよ。真央のことを気づかないくらい嫌なことがあった?例えば彼氏とケンカ中とか…」
言いながらも、それはないなと思った。
香蓮なら彼氏よりも真央を優先するのを知っているからだ。
香蓮は何か言いたそうなのに、なかなか言い出さない。
これでは話が進まないので、巴菜は不本意ながら卑怯な手を使うことにした。
「香蓮、わたしたち親友でしょ。力になれるかもしれないから話してよ」
ややあってから、香蓮は意を決した顔をしてゆっくりと話し始めてくれた。
「真央が…女になってなければ、昨日みたいな思いをすることなかったよね」
「それはそうかもしれないけど…でも、女になったのは誰のせいでもないんだからしかたないよ」
すると、香蓮は横に首を振った。
「ひょっとしたら…わたしのせいかもしれないの」




