説得してみたが…
あーあ、また今日から一週間が始まるのか。
月曜日は憂鬱な気分になる人が多い。
龍弥もその一人だ。
ダルいと思いながら学校に着くと、真央が笑顔で「おはよう」と言ってきた。
「おお」
軽く返事をして、自分の席に着く。
そして何気なく真央を見ていたら、香蓮たちと楽しそうに話しているので
微笑ましい気持ちになった。
「なに眺めてるんだよ」
振り向くと健吾が立っていた。
「別にいいだろ」
好きだということを知っているので、もう否定はしない。
「ところで今日の放課後って暇か?」
「今日はバイトないから暇だけど」
「じゃあちょっと付き合えよ」
こうやって健吾が誘ってきて、ゲーセンなどに行くこともあるので
特に気にも留めず「いいよ」と返事をしてから、もう一度真央のほうを眺めていた。
それを見て健吾は益々思った。
そんなに好きならさっさと付き合えよ…まあ、放課後にその話するからいいけどさ。
やれやれと呟きながら自分の席へ戻っていった。
放課後になり、健吾が龍弥を連れて行ったのはラーメン屋だった。
「あんま腹減ってないんけど」
「だってお前ファミレスとかファーストフード嫌だろ?」
龍弥の中では、それらのお店は男同士で行くのは好きじゃなかったので
今まで何度か拒否をしていた。
「そうだけどよ。まあいいか」
腹は減ってないといいながらも、きっちりラーメンセットを頼み、
健吾は味噌ラーメンの単品のみを頼んでいた。
ラーメンを待っている間、たわいもない話をしていたが、
徐々に真央の話へ健吾が誘導していく。
健吾はこういう話術を得意としていた。
「やっぱり両想いなら早く付き合ったほうがいいと思うぞ」
「別にいいだろ、そんなの」
「いや、よくないだろ」
「なんで?チンタラしている間に真央が他のやつを好きになるとでも言いたいのか?」
なんかこいつの言い方ムカつくな。
自意識過剰というか、真央は絶対に自分以外を好きにならないと
思い込んでいる感じがする。
説教してやりたい気分だが、今は目的が違う。
我慢して話を続けようとしたところでラーメンが運ばれていた。
タイミング悪いな…
龍弥はおいしそうにラーメンをズルズルと食べている。
とりあえず健吾もラーメンを食べ、半分くらい減ったところで話を戻した。
「お前、来月って何があるかわかってる?」
「来月…冬休み」
「冬休みもだけど、イベントごとがあるだろ?」
龍弥はちょっと考えてから「ああ」となった。
「クリスマスか」
「そうだよ。女ってさ、こういうイベントが超大事なんだよ」
「そうかもな」と他人事のように言って、ラーメンを啜ってから
「健吾はなにかするの?」と聞いてきた。
「まあデートして、プレゼントくらいは考えてるよ。少しは喜ばせたいからな」
「ふーん。けど俺はまだ付き合ってないから関係ないや」
こいつバカなのか?竹下、お前はこいつのどこがいいんだ?
健吾は多少なり女の気持ちを考えるようにしているが、龍弥はまったく考えていない。
龍弥の返答に健吾はイライラしていた。
「お前、少しは女の気持ちを考えてやれよ。さっき女はイベントが大事だって言っただろ。クリスマスなんて女からしたら最高のイベントだぞ。好きな人と一緒に過ごしたいんだよ。彼氏と過ごしたいって思うもんなんだよ。もうすぐクリスマスで、竹下だってきっとお前と過ごしたいって思ってるんだよ。けど付き合ってないからって理由で一緒に過ごせないのって絶対に残念だと思うぞ。両想いのくせに」
「そこまで大事なことなのかなぁ…」
やっぱり他人事のように思っている。
真面目に説得しているのにピンときていないのが腹ただしい。
「大事に決まってるだろ。それにその先にはバレンタインもある。女は大好きな彼氏に渡したいのに、付き合ってないから堂々と渡せない。それもかわいそうだぞ」
それでも龍弥は「うーん」と返答に困っている。
そこまで付き合いたくない理由がわからないが、言うことだけは言っておこうと思った。
「竹下のことが好きなら、もう少し竹下の気持ちも考えてやれよ。見守ってるだけが本当の愛じゃないぞ」
「わかった。あとで考えておく…」
大谷、俺にはこれが限界だ。
うまくいかなくても恨むなよ…
そう思いながら、残りのラーメンを食べることにした。




