楽しい悪だくみ
美ら海水族館に着くと、香蓮が真っ先に駆け出した。
「すごーい!ジンベエザメのモニュメントだ!!」
スマホを取り出し、早速写真を撮っている。
ここに一番来たがっていたのは香蓮なので、とても楽しそうだ。
「真央、写真撮ろう!」
「うん!龍弥、撮って」
まずは香蓮と2人で記念撮影。
続いて、美ら海水族館の文字看板の前へ移動。
「インスタ見ると、みんなここで撮ってるよね。うちらも撮ろうよ」
先ほどと同じように2人で撮ってから、今度は記念に4人で撮る。
一般の方にお願いして撮ってもらったあと、
香蓮が「せっかくだから真央と木谷で」言い出した。
「なにがせっかくなんだよ」
龍弥が反論する。
「なに、わたしとじゃ嫌なの?せっかくだから撮ろうよ」
思った以上に真央のテンションも上がっていたので、深く考えずに撮ろうと言っていた。
「わ、わかったよ…」
真央は笑顔だが、龍弥は少し引きつっている。
「おい龍弥、お前もっと笑えよ」
「う、うるせーな、笑顔なんて簡単にできるか!」
そういいながら、とりあえずピースだけはしていた。
「ま、いいか」
香蓮がシャッターを切り、真央と龍弥だけの写真が出来上がった。
「見せてみせて!」
真央が覗き込むと、思わず笑いだしていた。
「龍弥の顔ウケる!めっちゃ仏頂面なんだもん」
同じように香蓮も健吾も笑っている。
「お前ら…笑うな!」
「龍弥が怒ったー」
真央はキャッキャッと笑いながらはしゃぎ、
龍弥も「まったく」と呟いてから笑顔を見せていた。
ようやく中に入ると、奥にエメラルドに輝く海が一面に広がっていて、思わず「わ―」っと声を上げてしまうほどの絶景が4人の視界に映りこんでいた。
「沖縄の海ってホントきれいだよね」
「ねー、ずっと眺めていたい」
真央と香蓮は完全に見入っている。
そんな真央の顔を見て龍弥はドキッと感じていた。
小声で健吾が言ってくる。
「お前、かわいいって思っただろ?」
「ば、ばかか!思うはずねーだろ」
「照れるな照れるな」
健吾が「わはは」と笑いだしたので、真央と香蓮が振り向く。
「どうしたの?また龍弥がとんちんかんなこと言った?」
「言わない!それより先に行くぞ」
龍弥が3人を置いていくように歩き始めて、次の場所へ向かっていってしまった。
「まったく、冗談が通じないんだから…えい!」
真央は後ろから体当たりをした。
「いて!」
「みんなを置いて先に行くな!」
香蓮と健吾は顔を見合わせた。
今がチャンス!
2人はサッと隠れて、真央と龍弥の2人きりにすることに成功した。
「あれ、香蓮たちは?」
真央がきょろきょろ探すが見当たらない。
「はぐれたか?」
「龍弥が先に行くからだよ。ちょっとまって電話してみる」
真央は香蓮の携帯に電話をかけた。
隠れた先で、香蓮の電話が鳴っているが、きっとかけてくるだろうと想定していたので
マナーモードにしてある。
同じように龍弥も健吾にかけていたが、やはりこちらもマナーモードにしてあるので
ただバイブレーションしているだけだ。
「ダメだ、でない…」
「こっちもだ…どうする?」
「うーん…とりあえず行ってみる?そのうち合流できるかもしれないし」
「そう…するか」
真央と龍弥は横に並んで歩き始めたので、
香蓮と健吾は尾行するように2人の後をつけていく。
ごめんね真央、こんなことしちゃって…だって楽しみなんだもん!
香蓮も健吾も悪意全開だった。




