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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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間に合った

「そんなに泣くなよ。ぶっちゃけ、お前だって興味あるだろ、女の身体の快感を」

なおもニヤニヤしながら佐山が近づいてきて、腕を掴まれた。

無論、背後からは田村が身体と口を抑えつけたままだ。

「んー!んーーー!」

真央は必死に抵抗を続けるが、恐怖で力が入らなくなってきていた。

なんでこんな目に合わなきゃいけないの…嫌だよ、嫌だよ…香蓮!

佐山は真央の制服のスカートを捲り始めた。

「んんんんーーーーー!!!」

「白いパンツか、高校生っぽくてそそるじゃん。なあ田村」

「そうだよな、やっぱ白だよな。俺の女は青とか黄色とかばかりでさ」

田村の表情はわからないけど、佐山は気持ち悪いくらいニヤついた顔をしていて、

今度はパンツに手をかけようとしてきた。

嫌!嫌!嫌ぁぁぁぁぁ!!

そのとき、廊下を走る足音が聞こえてきた。

「お、おい!」

佐山は一度真央から離れてしゃがみ込んだ。

そして、真央も田村に無理やりしゃがまされ、隠れるような形になった。


「伊藤、どこで見た?」

「この廊下だけど何なんだよ、一体」

龍弥は伊藤の問いには答えず、無人の教室を端から覗いていく。

「いないよな…次!」

龍弥は順番に教室を覗いて、真央がいないか確認した。

くそ、なんでこんなに嫌な予感がするんだ!

「真央!」

思わず叫ぶと、静まり返った廊下に龍弥の声が少し響いていた。


「真央!」

この声は…龍弥の声だ!

「んー!んー!」

真央が一生懸命声を出して居場所を知らせようとすると、

さっきよりも強い力で田村が抑え込んできた。

「静かにしろよ」

「気づかれたらどうするんだよ」

2人が小声で言ってくる。

何を言ってるんだ、気づかれたいんだ。

ここにいるって知らせたいんだ。

なおも真央は抵抗する。

「この野郎、静かにしないとぶっ殺すぞ」

そんな脅しに屈しない。

すぐ近くに龍弥がいる、声さえ出せれば!

真央は無意識に口を塞いでいる田村の手に思いっきり噛みついた。

「いってぇぇぇ!」

田村の手が口から離れた。

「龍弥!」

真央は今出せる精いっぱいの大きな声で叫んだ。

「バカ野郎、なにやってるんだよ!」

「こいつが思いっきり噛みやがったんだ!」

田村の手からは血が出ている。

走る音が一気に近づいてきて、バンっと強い勢いで教室のドアが開き、

そこには龍弥が立っていた。

「真央!」

「龍弥!!」

真央はとっさに立ち上がり、龍弥に抱きついていた。

「龍弥…龍弥ぁ」

真央は泣きながら龍弥の名前を連呼していた。

身体がガクガクと震えている。

龍弥は佐山たちを睨んだ。

「お前ら…真央に何をしたんだ!」

「ちっ…あとちょっとだったのによ」

悪びれた様子もなく、2人はヘラヘラしていた。

怒りがこみ上げてくる。

「ふざけんなよ、お前ら!」

「そう熱くなるなよ、男だったら女とやりてーと思うだろ。だから竹下にやらせてもらおうとしただけだよ。元男なんだし構わないだろ」

真央はいまだに泣きながら震えている。

「てめーら…ふざけたこと言ってんじゃねーぞ!そんなことして真央が傷つかないとでも思ったのかよ!」

「思ったよ、元男なんだしな」

ヘラヘラしていた2人の目つきが急に変わった。

「それより木谷、お前このこと誰かに話したらボコるだけじゃすまねーからな」

「つーかさ、今ボコボコにして続きやる?俺、手を噛まれたお礼もしないといけないからさ。見ろよ、この歯形と血。3回はやらせてもらわないと割りに合わねーんだよ」

2対1だからか、強気になって龍弥に凄んでくる。

だが、龍弥にはもう一人仲間がいる。

その男がゆっくりと教室に入ってきた。

「なに、ボコボコにするの?誰を?」

「い、伊藤…なんでお前まで…」

伊藤は空手部で、普通に強いのを佐山たちは知っているのでビクビクし始めていた。

「俺もよ、いつも下ネタばっかり言ってるし、誰かやらせてくれないかなって言ってるけど、マジで言ったことはないぞ」

伊藤は指の関節をバキバキと鳴らし、2人はさらに怯えだした。

「それとな、竹下は大事な俺のクラスメイトなんだよ。こんな目に合わせたってことは、どういうことになるか、わかってるよな」

伊藤がゆっくり近づいていくと、「何してるんだ!」と突然声がして、

振り返ると学年主任の丹波がいた。

「なんか騒がしいと思ってきてみたらお前たち、こんな時間に…」

丹波は龍弥に泣きながら抱きついている真央に気づいた。

そしてそれを慰めている龍弥、怯える佐山と田村、威圧する伊藤。

「そういうことか。佐山!田村!お前ら何を考えてるんだ!前代未聞だぞ!ほかの先生を呼んでくるからここにいろ!」

丹波は走って職員室のほうへ向かっていき、

佐山と田村は「終わった…」と呟いて放心状態になり、伊藤と龍弥は真央を慰めていた。

「真央、もう大丈夫だからな」

それでも真央はただ泣くしかなかった。

5分もしないうちに丹波は黒岩と真由美と佐山たちの担任の橘を連れて教室に戻ってきた。

真由美が優しく真央に話しかける。

「怖かったでしょ、もう安心していいんだからね」

「先生…せんせぇ!」

今度は真由美に抱きついて泣き始めた。

真由美はそんな真央を優しく抱きしめてくれた。

「奥寺先生、竹下のことお願いします。黒岩先生は木谷と伊藤を」

そこまでいったあと、丹波は思いっきり佐山たちを睨んだ。

「お前ら2人は俺たちとこい!」

怒鳴ってから丹波が佐山の腕を、橘は田村の腕を引っ張って教室から連れ出していった。

「お前たちも話を聞きたいから、いいな?」

「はい」

黒岩と一緒に龍弥と伊藤も教室を出ていく。

その途中、龍弥はチラッと真央のことを見たが、ずっと泣いているだけだった。

真央…そうとう怖かったんだろうな…

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