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彗星に願いをこめて  作者: 姫
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迷惑な男だった

あれ以降、創は毎日LINEを送ってくる。

内容はたわいもない…というより、どうでもいいことばかりだ。

(今日は暑かったね)とか(面白いテレビやってるよ)とか、基本的に中身がないし、

返信しづらい。

こいつ暇なんだな…

きたものに対しては一応返事をするが、真央から送ることはなく、

最近は若干うんざりしていた。

悪いやつではないと思うんだけど…

午後の2時くらいにピコンとLINEの通知音がする。

またあいつか、今度はなんだ?

スマホを見ると香蓮からだった。

(巴菜が遊びに来るから真央もきて)

巴菜くるんだ!行かなきゃ!

真央は慌てて支度をして香蓮の家に行った。

「真央」

巴菜がニコニコしながら手を振っている。

たった10日ぶりくらいなのにすごく久しい気分だ。

「巴菜、久しぶり」

「久しぶりっておおげさだよ」

「だって学校で毎日会ってたからさ」

「確かに!」

香蓮も交えて会話をしていたら、巴菜の荷物が多いことに気づいた。

「今日泊るの」

「そーなの?じゃあ時間気にせず遊べるね!」

「真央も泊れば?考えてみたら真央って小学校低学年以来泊ってないよね」

そりゃそうだ、家が隣なんだから泊る理由もないし、

こないだまでは男だったんだから泊れるはずがない。

「帰るよ、2人が寝るタイミングで」

「えー、絶対に帰るとき寂しくなるよ。だから真央も一緒に泊まろう」

香蓮も巴菜も泊れと言ってくる。

「うーん…考えとく」

そう返事をしたが、やはり隣だから内心は帰るつもりだった。

話をしているうちに、こないだのダブルデートの話題に変わっていった。

あー…面倒くさい話にならなければいいけど…

「動物園かぁ、なんかいいね!デートとかじゃないと行かないもんね」

「ね、けど普通に楽しかったよね、真央」

「そうだね、楽しかったのは間違いないよ」

「それは2人とも男子がいたからじゃないの?」

香蓮は「そうかも」と嬉しそうにいっていたが、真央は全力で否定した。

「あいつらがいなくても楽しかったから」

「またそうやって否定する…あ、写真あるよ」

「見たいみたい!」

香蓮が4人で撮った写真を巴菜に見せていた。

巴菜は写真を凝視している。

「こっちの子が佑太くん?」

「うん、結構カッコいいでしょ」

ちょっと彼女気取りで香蓮が答えていた。

「そうだね、年下っぽくは見えないかな。なんか香蓮が好きそうな顔だよね」

「顔だけじゃなくて性格もいいの」

のろける香蓮がかわいかった。

「で、こっちが創くんか。おとなしそうな感じだね。真央はどうなの?」

「どうなのもなにもないよ」

「そうなの?連絡先とか交換したんでしょ?」

「一応…あの場じゃ断りづらかったし」

「連絡あった?」

「あったどころじゃないよ、毎日くる。しかもどうでもいい内容が…」

すると2人揃って「見せて」と言ってきた。

あんな内容だし別に見せても構わないかな…

真央はLINEを開いてスマホを2人に渡した。

「へー、ホントに毎日きてる…」

「そうなんだよ、どうでもいい内容ばっかり。返信に困ってしょうがない」

巴菜が思わず「確かに」と呟いた。

「これ返信に困るね。朝からセミの鳴き声がうるさいねって言われても、そうだねとしか返せないよね」

香蓮も読みながら苦笑いしている。

真央は思っていることを言ってみた。

「用がないなら毎日送らなくてもいいよね」

「創くんだっけ?彼は真央のことが大好きなんだろうね」

巴菜の言葉に耳を疑う。

「はい?」

「だってさ、好きじゃなかったら毎日送ってこないよ。けど彼は何を送っていいかわからないんだろうね。だからどうでもいい内容ばかり。なんか初々しくてかわいい」

真央はかわいいだなんて思ったことは一度もない。

それに本当に好意を持たれているなら迷惑だ。

「だったら巴菜どうぞ」

「わたしは年下無理だもん。ねえ、真央から送ってみようよ!」

「それいいね!」

香蓮も乗っているが、真央は絶対に乗らない。

「嫌!」

「じゃあ勝手に送る」

巴菜が勝手にスマホを操作し始めた。

「ダメだって!」

真央が力づくて奪い返そうとするが、なかなか奪えない。

「ホントにやめて!送ったらマジ絶交するからね!」

本気で怒りながら言うと、さすがにスマホを返してくれたが、ムカつきが収まらない。

「マジありえない!今日はもう帰る」

この場にいたくないと思った真央が怒って帰ろうとすると、

巴菜も香蓮も慌てて謝ってきた。

「ごめん、冗談のつもりだったの…ホントにごめん!」

「わたしも悪乗りしすぎちゃった…ごめんなさい」

「いいよ。けど今日はやっぱ帰る…」

許すつもりではいるが、今は遊ぶ気分になれなかった。

2人は気まずそうな申し訳なさそうな顔をしていたが、真央は家に帰った。

部屋に戻り、布団の中にうずくまる。

なんでそんなにあいつとくっ付けようとするの?

彼氏なんていらないし作るつもりもない、男だって好きじゃないって散々言ってるのに…

しかも相手があれだし…

こんなくだらない恋愛のいざこざがなければ、

今日だって香蓮と真央と3人で楽しく遊んでいられたのに…本当に迷惑!!

そこでちょうどLINEの通知音が鳴る。

見ると香蓮からだった。

(ホントにごめん!真央の気持ちも考えないで…真央も好きな男の子できれば楽しいかなって…そんなのありがた迷惑だったよね。しかも相手があれだと好きになるはずもないよね。もう二度と言わないから許して)

そこまで謝られるとこっちも困る…なんとなく会いづらくなっちゃうよ…

なんて返信しようか迷っていたら再び通知がきた。

香蓮からかと思ったら創からだった。

(外見てみて、夕日がきれいだよ)

あまりにどうでもいい内容にカチンときた。

誰のせいでこんなことになってると思ってるの!頭にきた!!!

真央は感情のままに返信した。

(用がないなら無理に送ってこないでいいから)

すぐさま返事がくる。

(用がなきゃ送っちゃダメ?俺は真央ちゃんと話したくて…)

真央はこれを見て理解した。

信じたくはないが、やはり創は自分のことが好きだということを。

けど、残念なことに嬉しいという感情は湧いてこない。

友達ならいいと思ってたけど、そういうことならやり取りなんてできない。

(悪いけど迷惑。こっちは普通の友達でいたかった)

(友達でもいいよ!だから迷惑なんて言わないで…)

ますますイライラしてくる。

それは創の態度が男らしくないからだ。

真央が男だったら、こういうときどうしただろうか?

スパっと潔く諦めるだろう。

もしそれができないくらい好きな相手だったら、迷わず電話をして直接話す。

LINEでなんて送ってこない。

男の気持ちもわかるからこそ、創が情けなくてしかたなかった。

真央は送るのをやめてスマホを手から離して布団から出た。

ちょっとスッキリした気分だ。

何気なく外を見てみると、確かに夕日がきれいだった。

香蓮と巴菜と気まずいままじゃ嫌だな…怒って帰ってきちゃったけど…

また行ってみるかな。

真央は再び香蓮の家に向かった。

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