息抜きのつもりが
6月が終わり、7月に入った。
もうすぐ期末テストなので、休みでも香蓮はちゃんと家で勉強をしていた。
「あー…疲れた!8時かぁ…ちょっと息抜きしようかな」
香蓮の息抜きは真央と話すことだ。
家を出て、ドアをドンドンと叩く。
「こんばんは」
「こんばんは、香蓮ちゃん。真央ね、今コンビニ行ってるの。すぐ帰ってくるから上がってて」
「はーい、お邪魔します」
雅子にそういって、真央の部屋に行く。
あれ、勉強してなかったのかな?
机の上には鏡が置いてって、引き出しが少し開いていた。
気になったので覗いてみる。
「あれ…これって」
飲み物を買って玄関を開ける。
すると自分のじゃないぺったんこのサンダルがあった。
これって香蓮の…あっ!
「おかえり、香蓮ちゃんきてるよ」
雅子の言葉を聞かずに真央は走り出した。
まずい、まずい、ちゃんと片付けてない!
慌ててドアを開けると、
香蓮は机の椅子に座ってシャーロットフランシスのリップを見ていた。
「買ってるじゃん、シャーロットフランシスのリップ。それにほかの化粧品も」
やっぱりバレてしまった…
「巴菜が買えって無理やり…」
「ふーん、それで部屋でメイクしてたんだ」
「し、してない…」
「あ、そう。じゃあなんで鏡が置いてあるのかな?なんで引き出しが開いていたのかな?」
「か、鏡は…髪がボサボサじゃないか確認したんだよ」
「じゃあ引き出し開いてたのは?」
「な、なんとなく開けただけ…」
無理とわかっていても必死に言い訳をしてしまう。
「あくまでシラを切るつもりなんだ。ふーん、じゃあこれは?」
香蓮が見せてきたのは、使用済みのメイク落としのシートだった。
それを見て思い出す。
「そうだ、ちゃんと落とせるシートあるじゃん!こないだ洗うのしかないって嘘ついて」
メイクをされたときの話をして怒ってみる。
それでも香蓮は動じない。
「あるよ。だからさっき使ったんでしょ、これ」
「うっ…」
「もう一度聞くよ。何してたの?」
勉強の息抜きだと思って興味本位にやった自分がバカだった…
「メイク…してました…」
「最初からそう言えばいいのに」
「だって…」
恥ずかしいから…
「真央は変なところで男のプライドが残ってるよね。女だって自覚してて、うちらと一緒に遊んだり、かわいい服着たり、メイクしたりして密かに喜んでるのに、表立ってそれを言わないで否定して」
ズバリ言い当てられてしまったので何も言えない。
「ハッキリ言うよ、そのプライド無駄、無意味」
「そんなハッキリ言わなくても…」
「言うよ!もっと素直になったほうが絶対に楽しいもん。そんな隠れてメイクして楽しい?かわいい服着て密かに喜んで楽しい?それよりもさ、一緒にメイクして遊びに行ったり、この服かわいいよねって言い合ってるほうがよっぽど楽しいよ」
多分その通りだなと思う…
けどどうしても…
あ、これが香蓮のいう男のプライドなのか…
確かに無意味だね、こんなの…
真央は香蓮の目をみて答えた。
「そう…する」
聞いた香蓮の顔がパァっと明るくなる。
「ホントに?」
「香蓮のいうとおりだなって思う。もっとかわいい服着たいし、メイクもうまくなりたい…」
「うん!そのほうが絶対に楽しいから。ね、もう一回メイクしようよ」
「えー、今日はもう落としちゃったからいいよ…」
「じゃあいつする?」
そのうち…って答えちゃダメなんだよね…
「テストが終わったあとの休みの日…」
「絶対だよ!約束ね」
「うん…わかった!約束」
「真央とメイクして出かけるの楽しみだなぁ」
想像したら、真央も少しワクワクしていた。
「そうだね、服は何を着ていこうかな」
「ワンピ買ったんでしょ、それ着てきてよ。真央のワンピ見たい」
「ワンピかぁ…わかった。着てく」
真央の表情は明るかった。
「ほら、素直になったほうがよかったでしょ」
「うん、香蓮ありがとう」
「どういたしまして。これでもっと女になって、そのうち好きな男子でもできれば」
「ん?」
なぜそうなる…?
「だって男のプライドなくなればもう完全に女子じゃん。そうなれば男子を好きになるって」
想像しただけで寒気がしてきた…
「撤回!男のプライド捨てない!!だからメイクして遊びにも行かない!」
「なんで?もう、面倒くさいな。真央は!別に好きになっていいんだよ」
「だからならない!無理!!」
どうやっても男を好きになるのだけは想像できない真央だった。




