第九十二話 コルト都市国家での出来事 その7
「おう! 昨日はゆっくり眠れたか?」
「おかげさまで」
ギルド前で待ち合わせしたダリウスさんとそんなやりとりをしながら俺たちは揃ってギルドに入った。
昨日は結局あの後、夜の22時くらいまで宴会は続いて、俺とシャーリーはシーレント王国での事もあってみんなからからかわれた。
「ねぇねぇ! もうキスとかしゃったの?」
「してない!」
「なんで?」
「だってそんなすぐするもんじゃないだろ?」
「シャーリーは待ってるかもよ? ねぇ?」
「えっ……!? 私は……」
「ほら! やっちゃえ!」
「やらない!」
「……いいわ! これぞ恋よ! 恋!」
「ははは! 若いな!」
アリィの執拗な口撃を俺達はなんとかかわしきった。
その時、ロイは悪い微笑みをし、ウィルは真面目な顔で頷き、ソニンは夢見る少女になっていた。
……ソニンは酔ってないはずなのに。
そもそもそんなキャラだっけ?
そして、ダリウスさんは変わらなかった。
でも結果、みんな酔い潰れ、俺が介抱する事になったのは言うまでもない。
ウィルは酔ってどうなるかと思ったらあんまり変わらない様子だったけど、視線が鋭かったような……絡み酒タイプなのだろうか?
まぁ、次回検証する必要がある。
そんなこんなで、俺は解毒魔法で二日酔いにならないようにして、酒場の店主に宿を紹介してもらった。
ダリウスさんはふらふらしながらも一人で帰って行ったけど……どうやら無事だったみたいだ。
他のメンバーもなんとか宿屋までは意識を保てて良かった。
シャーリーだけなら……いや、違う違う。
とりあえず宿屋に行けて良かった。
「じゃぁ、行くか!」
そう言うダリウスさんに続いて俺たちはギルドの受付に立った。
「ようこそギルドへ!」
受付のお姉さんはそう言って俺たちを出迎える。
見た目まだ若く、俺たちと同じか俺たちより少し上くらいだろう。
スタイルも良く……いや、やめておこう。
俺は昨日の反省を活かし、受付嬢から目を逸らした。
「今日はどのような用件で?」
受付嬢が営業スマイルでそう言うとダリウスさんが代表して口を開く。
「戦闘狼の討伐の件でな。こいつらとパーティーで参加したいと思っている」
「ダリウスさんがパーティーですか? 珍しいですね」
「いや、別にいいだろ!?」
「ダメなんて一言も言っていません」
なんだろう。
受付嬢はダリウスさんには厳しかった。




