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第九十一話 コルト都市国家での出来事 その6

 「ハル君はあーいった感じの女性が好きなんですかぁ?」


 俺は現在酔っ払ったシャーリーに言い寄られている。

 何故こんな状況になっているかと言うと話は遡る。


 あの後、とりあえずみんなでどんちゃん騒ぎが始まり、お酒は頼むは料理は頼むはで、俺たちのテーブルは周りに比べて、一段とうるさかった。

 当然、注文が多くなるのであのスタイルの良い店員さんがよく俺たちのテーブルに来た。

 俺は普通に注文したり、料理とかお酒を受け取っていただけなんだけど、どうやらシャーリーは違うように見えたらしい。

 お酒も進み、一時間くらい飲み食いし、みんなに酔いが回ってきたところ、いや、ソニンだけはシラフだけど、まぁ盛り上がってきたところで、シャーリーがおもむろに立ち上がり俺の前に来て放った言葉がさっきの言葉だ。

 さっきまで、賑やかだった店内が一気にシーンと静まり返って、俺たちに視線が集まっている。

 ……これはヤバイ!


 「ど、どうしたんだ!? シャーリー!?」

 「だって……だって! ハル君があの店員さんの事ばっか見るし、店員さんはスタイルが良いし私なんか……」


 シャーリーは悲しげに自分の体を見て俯き、目に涙を浮かべる。

 シャーリーのスタイルは標準だと思うし俺は胸フェチでもなんでもない。

 いや、確かに店員さんのスタイルは良いと思ったけど別にそんな感じじゃなくてたまたま目に入った感想だ。

 俺はスタイルで選ぶんじゃない!

 シャーリーだから好きなんだ!


 「シャーリー! 誤解だ! ただ目に入ってただけで別に好き好んで見てた訳じゃない! それに俺はスタイルで選ぶんじゃない! シャーリーだから好きなんだ!!」


 静かな店内に俺の声が響く。

 ……ヤバイ!

 つい大声で叫んでしまった!


 「……スタイル良くない私でもいいの?」

 「そんなの関係ない」

 「……泣いてばっかだけど嫌いにならない?」

 「そんなんで嫌いにならない。俺がシャーリーを笑顔にする。大好きだよ」

 「……ハル君。……大好き」


 シャーリーはそう言うと俺に抱きついてきた。

 俺は自分でもビックリするくらいに言葉が自然に出てきて、どうしていいか分からずシャーリーを抱きしめる。

 すると、周りから盛大な拍手が上がった。


 「全く、ハルも場所を考えろよな?」

 「これが愛の形か」

 「きゃー!! こーいうの好き!!」

 「ハル、シャーリーお姉様を泣かせたわね? でも、最後の良かったから許してあげる」

 「ははは! いいもの見せてもらった! ドラゴンキラーは女キラーだな!」


 みんなが口々に話すのを俺は突っ込む事も止める事も出来ず、どうする事も出来なかった。


 「まぁ!私振られちゃったのね? これは店からのお祝いよ!」


 そう言ってあの店員さんは人数分のエールと果実酒を持ってきてくれた。


 「おぉ! じゃぁドラゴンキラーの幸せを祝して乾杯だ!」


 ダリウスさんの声に合わせ、俺たちのテーブルでは宴会が再開した。

 そして、周りのテーブルの人達も自分達の話に戻っていく。

 俺とシャーリーは我に戻り、恥ずかしさが込み上げお酒を飲みまくった。

 俺はこの時、出来るだけ他の女性を見ないようにする事を誓った。

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