第九十話 コルト都市国家での出来事 その5
「依頼?」
「あぁ、実は最近このあたりに戦闘狼がよく出現するようになってな。冒険者による討伐が組まれるらしい。明日がその日なんだが、報酬も良いし、それに一緒にどうかと思ってな」
どうやら、ダリウスは俺たちと組んで討伐隊に参加したいようだ。
でも、なんで俺たちを誘うんだろう?
「ダリウスさん、なんで俺たちを誘うのですか?」
「それはおまえさんがドラゴンキラーの異名を持ってるからだよ。それにそっちの坊っちゃんはアースハイトの王子さんだろ?」
ダリウスさんは俺たちを知っているようだ。
でも、ドラゴンキラーって……いつの間に俺はそんな異名がついたんだ!?
何か恥ずかしい……。
「そうだが……でも、なんで俺たちを知ってるんだ?」
「あぁ、それは闘技大会を見てたからだ! おまえさん達が次元の違う戦いをしてたからな! それにあのルイーズといい勝負する奴なんて見た事なかった! それにイストニア帝国との戦争の噂もな! 冒険者は情報を仕入れるのも仕事だ!」
ダリウスさんはロイの問いに答え、また大きな声を出して笑っている。
それにしても俺はともかくロイの事を知ってても坊っちゃん呼ばわりとは……この人は豪快だな。
「でも、Bランクのダリウスさんなら一人でも大丈夫じゃないんですか?」
「いや、それがよ〜範囲が広いからってグループを組んで行くらしいんだけど、報酬目当てに弱っちい奴も来るだろうし、ソロで行ってそんな奴と組まされたらたまらんって思ってたところにあんた達を見つけた訳だ」
なるほど。
一緒に組んだ冒険者が足手まといだと自分にも危険が及ぶ、そういう事か。
「……みんなどうする?」
俺としては戦闘狼が暴れて、危害が出るなら防ぎたい。
でも、今は自分一人ではないしみんなの意見も聞かないといけない。
「まぁ、街に危害が加わるかもしれないからな。俺は賛成だ」
「俺も腕を磨くにはちょうどいい」
「私はお酒の……いや、みんなのために戦うわ」
「……みんなが困っているなら私もやります!」
「わーい! 楽しそう!」
……若干2名+1名、勘違いがいるけどほっておこう。
もしかしたらイストニア帝国との戦争はこんな感じで始まったのかもしれない。
本当に被害が少なくて良かった。
もしこんなんで始まったの戦争だったとして被害多かったら死んだ人も報われない。
「はは! 決まりだな! じゃぁ今日は飲むぞ! 姉ちゃん! 注文だ!」
「はーい!」
ダリウスさんは豪快に笑い、新たにエールを注文する。
なぜか、シャーリーは怒ったような雰囲気だ。
とりあえず俺はシャーリーの為に果実酒を別に頼んだ。
すると少し機嫌が直ったように見えた。
一体なんだろうか?
「ちなみにダリウスさんはゴルゴーラ教って知ってますか?」
「あ? ゴルゴーラ教? 分かんねえな? 明日くる奴らに聞いたら分かるんじゃねぇか? それよりほら! 飲むぞ!」
情報収集も仕事のうちって言ってたけど……。
まぁ奴らもあまり表立って動いていないのかもしれないな。
結局俺たちは飲む事になってしまった。




