第八十九話 コルト都市国家での出来事 その4
「うん、これは確かにうまい!」
「そうだな。 これは喉喉越しが良くて味も甘くなく、ほど良い苦味がいいな」
「ふん、なかなか良い仕事をしている。どこの麦だ?」
「うん! これは確かに美味しいわ!」
「……私はちょっと苦手かも」
「ゔぅ〜……羨ましい。飲んでみたい……」
確かにうまい。
この喉越しと程良い苦味がなんとも言えない。
俺たちは口々にエールについての感想を口にする。
若干、批評家と職人が混じってるけど気にしない。
ちなみにソニンはまだ大人じゃないからエールを取り上げ、代わりに果実ジュースを飲んでいる。
「はは! なかなかいけるだろ!」
男は豪快一気飲みし、さらにソニンの分だったエールを口につけ、言葉を口にする。
まぁ確かにエールがうまい事は認めよう。
うん。
それよりも……。
「え〜っと、まだあなたの名前を聞いていないのですが……」
「あっ、そうだったっけか? はは! スマン! 俺はダリウス! Bランク冒険者だ! 武器はこれだな!」
ダリウスは豪快に大きな声で笑い、そう言うと背中のバトルアックスを片手で出した。
自分の身長ほどあるバトルアックスを片手で持てるという事は相当な腕力なんだろう。
細かい基準は分からないけどBランクという事と合わせるとなかなかの実力者なんだと思う。
「で、用件はなんだ? ただ一緒に酒を飲みに来たって訳じゃないだろ?」
「へっ! 坊っちゃんは話が早いな!」
ロイ……分かってたなら最初から奢ってもらうなよ。
さては、酒を飲む為だったな?
ロイの酒好きには困ったものだ。
この先もずっと酒関係で何かに巻き込まれるようなら、対策を考えないといけない。
そんな事を考えているとダリウスさんはバトルアックスを背中にしまい、真剣な顔をしてこちらに向き直る。
「実は、一緒に依頼を受けないかと思ってな」




