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第八十六話 コルト都市国家での出来事 その1

 「凄く活気ある街だね!」


 俺の隣でシャーリーがうきうきした様子で声をあげる。

 そう。

 俺たちはコルト都市国家についたのだ。

 今回の移動はあの盗賊の一件以外、大きな出来事もなく順調に進んだ。

 ちなみに大きな出来事(・・・・・・)はだ。

 小さな事はそれなりにあった。

 でも、まぁそれは置いておいて。

 着いたのが昼という事もあり、街は活気がある。


 ここは商業国家として発展しているけどシーレント王国とはまた違う感じだ。

 シーレント王国は観光と一般市民への商いも行なわれているけど商人相手の取引が主であるのに対して、コルト都市国家は様々な国から仕入れた商品を商人から一般市民へとおろすのが主であるようだ。

 なので、街には一般市民が溢れ、店からは店主が客を呼び込む声が街中に響いている。

 それに街並みもレンガ造りの建物などが多く庶民的な印象を受ける。


 「さて、どうやって情報収集するかだな」


 ロイが立ち止まり、口を開く。

 情報収集……『エターナル・ログ』の知識から言わせてもらうと、『情報収集は酒場で』が基本らしい。

 いろんな人が疲れを癒しに酒場へ集まり寄った勢いで隣の人と話をする。

 さらに、アルコールが入っているのでみんな饒舌になり話がいっぱい引き出されるらしい。

 しかーし!

 俺はなんとしてもそれを阻止しないといけない。

 なぜなら、昼間からロイとアリィにお酒を飲ませる訳にはいかないからだ。

 ただでさえ、ストップが聞かないのに昼間から飲み出したらどんな状態ななるか……。

 それに、そんな事になったらきっと俺とシャーリーが餌食になってしまう。

 だから、なんとしても酒は避け(・・・・)なければならない。

 あっ、うまい事言ったな。

 いや、違う違う。


 「そうだな。とりあえず商人達に声をかけるか?」


 俺はとりあえず無難な答えをした。

 さすが、ミスター平均値。

 こういう時は少し役に立つものだ。


 「いや、俺の国では『情報収集は酒場で』と言われている。みんな酔って饒舌になるからな。それに商人に声をかけると言っても初対面でいきなり聞くだけ聞くのも悪いし、初対面だと向こうも警戒するだろう。だから酒場に行く方が良いと思うが?」


 俺の無難な答えにウィルが異論を唱えた。

 おい!

 なんでそんな事知ってるだよ!?

 それになんでこういう時はまともな意見なんだ!?


 「そうだな。じゃぁ酒場で情報収集とするか」


 ロイは瞳の奥に悪い光を輝かせて、ウィルの意見に賛同する。

 ……ロイの奴、飲む気満々だな?

 他のメンバーもウィルの正論を前に頷く。

 その中にもう一人ロイと同じような瞳に悪い光を輝かせている人物がいるけど……。


 「分かったよ! でも、昼間から酒はなしな!?」

 「分かっている。当たり前だろ?」


 ロイはそう答えるも俺は一抹の不安を抱えながらみんなと酒場へ向かった。

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