第八十四話 シーリスト街道を進みます
シーレント王国を出発して3日。
俺たちはコルト都市国家に続くシーリスト街道を馬車で進んでいる。
普通に行けば馬車で3日のところをゆっくり進んでいる。
まぁ馬車でなくてもいいんだけどレディ達の事を考えたら仕方ない。
それにしなくてはいけない事があるからだ。
それは訓練。
これからもし魔人とかと戦うとなるとウィルやソニンはもちろんアリィとシャーリーもまだまだ訓練が必要だからだ。
という事でウィルは魔力操作を重点に、ソニンは無詠唱と魔法障壁を、シャーリーとアリィは魔法障壁を重点に訓練しながら進んでいる。
「ハ、ハル! 私だけキツくない!?」
「なんだ? 根を上げるのか?」
「そ、そんな訳ないでしょ! やるわよ!」
ソニンは無詠唱と魔法障壁、二つ訓練する為、結構キツイ訓練になっている。
しかし、決してこれは日頃の仕返しな訳ではない。
魔法主体で戦うからこそ、魔法障壁がないと咄嗟の時に避けれない場合があるからだ。
「ハル君、これでいいの?」
「おぉ! バッチリ!」
相変わらずアリィは魔法のセンスがある。
訓練3日ですでに物にし、俺に匹敵するほどの強度のある魔法障壁を作れるようになった。
「ハル君、私は?」
シャーリーもアリィには劣るけどもちゃんとした魔法障壁を張る事が出来るようになっていた。
なんて言ったって頑張っているシャーリーの姿が可愛すぎて……いやいや、努力してるし、これからも伸びるだろう。
それに何かあれば絶対俺が助ける。
うん。
とまぁ、俺はこの三人を見て教えている。
ウィルはと言うと……。
「ほらほら! また魔力が流れているぞ!」
「くっ!」
「おまえは口だけか? 口だけなら誰でも出来るぞ!」
「くそぉぉぉ!!」
「ほら、魔力の無駄使いだ! 感情と一緒にもっと抑えろ! 敵が感情を乱してきたらどうする?」
……鬼教官ロイにしごかれていた。
少し可哀想な気がするけど仕方ない。
いざという時、死ぬよりマシだ。
と俺たちは午前中に移動、午後から訓練という感じでいるのでちょうど今はシーレント王国とコルト都市国家の間くらいだ。
「じゃぁ、今日はここまで!」
俺たちは訓練を終え、野営と夕食の準備に取り掛かる。
今日は俺とロイがテントの設置担当で、ウィルは三人の護衛だ。
俺とロイは二人、街道を少し外れた森の手前にテントを張る。
「ロイ……」
「あぁ、お出ましのようだな」
ここシーリスト街道はシーレント王国とコルト都市国家を結ぶ街道で商人の行き交いが多い。
だから、必然的にこいつらの数が多くなる。
「隠れていないで出てこい!」
すると、周囲から木々に隠れていた20名ほどの盗賊が姿を現した。




