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第八十二話 シーレント王国での出来事 その13

 「さぁ、どうぞ! 座って!」


 リチャードさんはそう言って俺達に席に着くように勧める。

 横に長いテーブルを挟んで向こう側の真ん中にリチャードさんが座り、手前に俺達六人が座る。

 そしてリチャードさんの後ろにはメイドが横一列に並んでいる。

 なんというアウェー感だろうか。

 でも、もう逃げ場はない。

 俺は腹をくくって先制攻撃に出た。


 「お兄さん! ご報告があります!」


 俺は勢いよく立ち上がり、お言葉を口にする。

 周りのみんなはポカーンとしているが関係ない。

 ここは先に言わないといけないところだ。


 「ど、どうしたんだい? ハル君」


 リチャードさんは少し面をくらっている感じだ。

 よし!

 このまま押し切ろう!

 

 「お兄さん! 実は先日、その……シャーリーとお付き合いをさせて頂くことになりました!!」


 言った。

 ついに言ったぞ!

 俺は肩から荷が降りて身体も軽くなったような気分だった。

 ……ん?

 周りの反応がない?

 みんなはポカーンとしてシャーリーは顔が赤くなっている。


 「そ、そっか。良かったね! シャーリーの事よろしく頼むよ!」


 えっ?

 そんな軽くでいいの?


 「えっ? お兄さん……俺でいいのでしょうか?」

 「まぁ、この前アースハイト王国で話してみてね。商売上こう見えても人を見る目はあるんだ。それに、恋愛は本人の自由だろ? 俺が言っても……シャーリーが聞かないからね。だろ? シャーリー?」


 そう言ってリチャードさんシャーリーに視線を送る。


 「はい。私はハル君が好きです。だからこれからもついて行きます!」

 「やっぱりね。そう言うと思ったよ。という事でハル君、シャーリーの事よろしく頼むよ」


 リチャードは俺に頭を下げる。


 「い、いや、あのこれから俺達がどうするつもりかご存知で……」

 「まぁ情報が入るのは早いからね。止めても聞かないだろうし……でもシーレント祭の間に付き合う事になってくれて良かったよ! これで堂々とハル君にシャーリーの事お願いできるからね! ……妹の事よろしく頼む」


 リチャードさんは一度上げた頭を再度下げた。


 「は、はい! 命に代えても!」

 「ははっ、死んだらダメだよ? だってシャーリーがみんなの前で好きって言えるくらいの人なんだから」


 そう言えばさっきみんなの前で普通に言ってたような……。

 シャーリーの方を向くと段々と顔が赤くなってきた。


 「い、いやぁぁぁぁぁ!!!!!」


 シャーリーの声が室内に木霊し、シャーリーは顔を真っ赤にしながら頭を抱えこんだ。

 という俺もさっき突然堂々と交際宣言した事が段々恥ずかしくなってきた。

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