第八十一話 シーレント王国での出来事 その12
「やぁ! 意外と早かったね!」
俺たちは今、マーシャル家に来ている。
マーシャル家はマーシャル商会の裏にあって大きさはマーシャル商会の半分程、なので商会と自宅を合わせたら本当に城に匹敵するくらいだ。
外壁も白で統一され、お金持ちのいやらしさが出ていない。
この大商会の家のシャーリーと付き合うという事は世の中の男性の半分以上は敵に回す事になるだろう。
お金だけじゃなくてシャーリーは可愛いし性格もいいからな。
俺はお金なんて別に考えてなかったけど。
でも、それだけの相手だけにこれからお兄さんと話す事はとてもプレッシャーだ。
シーレント城を出た後、俺は心の準備をつけようとゆっくり歩くつもりがロイとアリィに引っ張られ、心の準備がつかないまま、マーシャル家に着いてしまった。
「リチャードさん、こんにちは!」
「お久しぶりです」
「お、お久しぶりです。おこんにちは」
しまった!
緊張のあまり変な挨拶になってしまった!
「はは! まぁここじゃなんだから中で話そうか!」
そう言ってリチャードさん後ろから追いついたシャーリーとウィル、ソニンたちと一緒に俺たちを中へ招く。
「「「「お帰りなさいませ、ご主人様!!」」」」
家に入ると総勢50人程だろうか?
たくさんのメイドさん達が出迎えてくれた。
それに俺たちは呆気に取られ、立ち尽くす。
シャーリー以外は。
そんなシャーリーに一人のメイドさんが近づく。
「お嬢様お帰りなさいませ! お着替えなさいますか? それともお風呂に入られますか?」
「だ、大丈夫! それよりお兄ちゃんと話しないといけないから!」
「かしこまりました。では、旦那様に聞いて準備致します」
するとメイドはリチャードさんの元へ行き耳打ちをする。
リチャードさんは頷き、指示を出す。
「さて、じゃぁ部屋に入ってお茶でも飲みながら話そうか」
そう言ってリチャードさん歩き始め、俺たちはそれについていく。
そして、俺は完全アウェイの敵地の部屋に足を踏み入れた。




