第八十話 シーレント王国での出来事 その11
「お父様! 私はロイ君達と一緒に行きたい!」
いやいや!
アリィ、物事には順序があって先に説明しないといけないだろう!
と思っていたらロイが口を開く。
「シードル国王様。 俺から説明させて頂きます」
そう言うとロイはイストニア帝国との一部始終の説明を始めた。
皇帝の魔人化、ゴルゾーラ教、ダビドの事、そしてイストニア帝国三兄弟の事。
「……という事がありました。それで俺達はゴルゾーラ教を探る事にしました。それにアリアもついて行きたいと。それと細かいところの説明はハルの方から聞いてください」
ロイはそう言って俺に目で合図をしてきた。
それに合わせてシードル国王の視線が俺に向く。
俺はロイの言葉に頷き口を開く。
「シードル国王様、ご存知かもしれませんが俺は過去から送られてこの時代にきました。そして、俺は過去に存在した古代人種という人間です。そして、ドラゴンが現れて死にかけた時、両親が俺に託してくれた『エターナル・ログ』が発動しました。これです」
俺は首にかかっているネックレスをシードル国王に見せる。
「この『エターナル・ログ』は俺が送られた過去に存在した古代人種という種族の秘宝です。これには過去に存在した、そして知られていた技術、魔法、知識、あらゆるものが詰められており、発動した際、俺はそれを継承しました。そして、それで俺はドラゴンを倒しました。しかし、能力が完全に継承された訳ではありません。特に技術に関しては知識としてはありますが身体に覚えさすという事が必要です。ですが、その知識の中で現在の時代にはおそよ伝わっていないと思われる『無詠唱』『魔力操作』『人為的な魔人化』……魔力操作に関しては一部本能的に使いこなしている者がいましたけども稀だと思います。そして何よりゴルゾーラ教は俺の事を知っているようでした。何を企んでいるのかは分かりませんが闇の精霊を使い人為的な魔人化を実験しているような奴らは危険だと思い、調べる事にしました」
シードル国王は俺の長い話をただ黙って聞いてくれていた。
そして口を開く。
「なるほど。では、ゴルゾーラ教という集団は知り得るはずのない知識を持っている。もしかするとハル君が送られてきた過去と何かの関係があるかもしれない、そしてその知識を悪用し、良くない事を考えているかもしれない……そういう事か」
シードル国王はそういうと目をつむり何かを考えている。
きっとそんな危険な事に我が子を関わらせたくないのだろう。
「アリア……どうしても行くのか?」
「家出しても行くわ!!」
アリィの即答。
シードル国王は額に手を当て、天を仰ぐ。
……シードル国王心中お察しします。
「アリィ、行ってらっしゃい」
「お母様!」
俺たちから見て右の扉から現れた女性、フローリア王妃はアリィに許可を出した。
「フ、フローリア! しかし……」
「いえ、あなたアリアはもう大人です。それにどの国の兵士よりも強い力を持つものが周りいます。ロイもいるしね!」
そういうとフローリア王妃はロイに向かってウインクをする。
「はい、命変えてもアリィを守ります。フローリア叔母様」
「!? ……この子は私に対してはいちいち一言多いのよね」
なんだろう。
俺の前では王族は普通の家庭と変わらない気がするのは……。
まぁでも家出して行くという以上、説得は無理だしそれなら最初から一緒に行動する方が安全だろう。
「仕方ないか……。でもアリアの声がなかなか聞けなくなるな……」
シードル国王はそういうと落ち込んでしまった。
う〜ん。
やっぱり国王様と言っても一人の親なんだな。
「シードル国王、旅立つにあたりこれをお渡しします」
俺はそういうと異空間から『ケータイ』を出し、シードル国王に渡し説明した。
「こんなものが……!?」
「何か国に危険が迫ったり、連絡事項がある時はそれで連絡をください。俺には『エターナル・ログ』の知識から得た、ゲートという魔法がありますので一度行った場所ならすぐに戻ってくる事が出来ます」
「……もはやなんでもありだな。これは有難く使わせて頂こう」
シードル国王は一応アリィの同行を許可したようだ。
「じゃぁ気をつけて行ってらっしゃいね! あと、シャーリーも行く気なんでしょ? 気をつけてね!」
フローリア王妃はシャーリーも行く事が決定事項な感じで言う。
しかし、そうなるだろう。
そして、この後はマーシャル家……。
俺に忘れていた緊張が蘇る。
「みな気をつけてな。それとイストニア帝国も今回は大変であった……。何かあれば力になろう」
「有難きお言葉。我が弟、皇帝レドニンにお伝えします」
「あ、ありがとうございます」
こういう時、ウィルは意外としっかりしてるな。
あの天然はいったい何なんだろう?
「アリア……たまには連絡して来るのだぞ?」
「分かってる! たまにはね!」
「連絡してこなかったらこっちから……」
……。
しょちゅう電話鳴らないだろうか?
最悪の場合、一時的に着信拒否する必要があるかもしれない。
「じゃぁ行きましょ!」
アリィの掛け声で俺たちはシーレント城を後にした。




