第七十七話 シーレント王国での出来事 その8
「では、これからシャーリーとハル君の取り調べを始めます! みなさん拍手!」
パチパチパチパチ。
アリィの司会で俺とシャーリーの公開取り調べ(?)が始まった。
まさか事件簿をつけていた俺が取り調べに合うとは……。
俺たちは男連中が泊まっている部屋に集まり、俺の左にシャーリーが並んで椅子に座り、四人が俺から見て右からウィル、ロイ、アリィ、ソニンと半円状に俺とシャーリーを囲むように椅子に座っている。
なぜか、あのウィルまでが素直にこの場に参加している。
俺たちに馴染めたんだな……いやいや、そんな事考えている場合ではない。
俺とシャーリーの背後には窓。
部屋の入り口はロイ達の奥に見え、俺とシャーリーに逃げ場はない。
「さて、被告人ハル、俺とアリィを置いて逃げてから俺達が再度二人を見かけるまでに何があった?」
ロイの言葉でついに尋問が始まった。
俺の横でシャーリーは俯きながら顔を赤くしている。
こうなったら俺が頑張って出来る限り被害を減らす方向で行くしかない。
それが彼氏の役目というものだ。
「い、いや、あの後祭りを楽しもうとしてちょっとうろうろしてからステージに行って……その帰りにそうなりまして」
俺は出来る限り、あいまいに、そしてオブラートに包んで言葉にする。
「裁判長! 被告人は物事をあいまいにしています! ステージ上から手を繋いでいる姿を見ました!」
「きゃー! シャーリーお姉様! 付き合う前に手を繋いだのですか!?」
「…………ぅん」
シャーリーが消え入りそうな声で答える。
くそ。
やるなら俺だけにしてくれ!
それになんだ?
裁判長?
いつから裁判になったんだ?
いや、この際取り調べとか裁判とかどっちの設定でもいい。
アリィの奴、目良すぎだろ!
「あ、あれはその前にはぐれそうになって……。まぁ、それで、はぐれないようにするにはそれがいいかなと思って……」
「それで手だけでなく心も繋がったのか」
「ウィル、うまい事言ったけど先を急ぐな」
「む? スマン」
なんでだ!?
いつものウィルならそこでロイに突っかかるのになんで素直に謝るんだ!?
そんな素直なウィル見た事ないぞ!?
それに別に謝らなくていいところじゃないか!?
「まぁ、あんまり長引かせてもあれだな。ハル……おまえはシャーリーの事を本当に愛しているのか?」
愛している……その言葉の意味は決して軽くない。
でも、俺はシャーリーの為ならなんでも出来るだろう。
そして、これから先もずっと一緒にいたいと思う。
かけがえけのない存在だ。
「……愛している。 ……俺はシャーリーの事を愛している!」
しまった!
つい、感情が高ぶって大きな声になってしまった!
隣ではシャーリーがさらに顔を真っ赤になって俯いている。
シャーリー……ゴメン。
しかし、みんなから笑いの声はなく真剣な顔をしている。
「シャーリー、あなたはハル君の事愛しているの?」
「……愛してます」
シャーリーは恥ずかしながらもアリィの問いに顔を上げ言葉を口にした。
「……シャーリー!! 良かったね!!!」
アリィはそういうとシャーリーに飛び寄り抱きついた。
それを期に、ソニンもシャーリーの元へ、ロイとウィルは立ち上がり俺の前に来た。
「ハル、良かったな! 今度こそ飲まないとな!」
「これで貴様も一人ではない。上を向いて生きて行く事だ」
ロイは微笑みなのか悪巧みの顔なのか分からない顔をしながら、ウィルは俺の肩に手を置いて言う。
いやいや。
俺はずっと前から上向いて生きてますけど。
まぁでもなんだ言ってみんな祝福してくれているみたいだ。
何かこういうのって恥ずかしいけど温かくて心地よい。
本当にいい仲間を持った。
俺は心からみんなに出会えた事を感謝した。
するとソニンがトコトコと俺のところにやってきた。
「ハル……シャーリーお姉様泣かせたら許さないんだから!!!」
なぜかソニンは俺にだけは厳しかった。




