第七十六話 シーレント王国での出来事 その7
俺は目を開ける。
目に映るのは天井。
そして、体には布団がかかっている。
どうやらベッドに寝ているようだ。
あれは夢だったのだろうか?
俺は辺りを見回す。
すると、机の上に置かれたシーレント祭でもらったが団扇が目に入る。
『夢じゃなかった』
その実感が徐々に俺の頬を緩ませる。
やったのだ。
俺はついにシャーリーに想いを伝えたのだ。
記憶を辿る。
俺が告白した後、シャーリーは泣き出した。
俺はどうする事も出来なくてあたふたしていた。
今思えばかっこ悪い。
結局俺の勘違いだったのかと思ってあたふたした時にシャーリーの言葉が聞けて俺は安心したと同時に嬉しかった。
そこからの俺はまさに別人だった。
シャーリーの言葉を聞いて落ち着いて……あとは自然と体が動いた。
気づけば俺はシャーリーを抱きしめて頭を撫でていた。
ただ無意識に体が動いた。
なぜかそうしないといけないと思った。
俺はシャーリーの涙さえ愛おしく思えた。
これが本当の好きになるという感情なのだろうか。
もしそんな好きな人との間に生まれた子ならばそれは表現できない程可愛おしいだろう。
父さんと母さんも俺の事そんな風に思ってくれていたんだなと今ならあの時聞いた言葉の意味が少し分かる気がする。
「何ニヤニヤしてるんだ?」
「い、いや、別に何もニヤニヤなんかしてないだろ?」
不意にロイの声が聞こえ、俺は現実に引き戻された。
振り返るとロイとウィルも起きたみたいだった。
「まぁ、昨日あんだけいい事あったんだから仕方ないと言えば仕方ないか。なぁ、ウィル?」
「そうだな。これで貴様は一人ではない。共に歩んで行く相手を見つけたのだ。もう悲しむ必要はない」
ロイの横で真面目な顔しながら頷くウィル。
えっ……?
もしかしてバレてるの?
「い、いや、なんの事かな?」
「ん? 抱きしめ合ってたのにか?」
「好きな者同士、喜びや悲しみを分かち合うのはいい事だ」
……だぁぁぁぁぁ!!!
なんでだ、なんでバレてる!?
「それはせっかく祭りだし、みんなで酒でも飲もうかと思って俺とアリィはあの過酷な場から一目散に帰って宴会の用意して窓から外を見て待ってたら面白いものが見れてな。長引きそうだから解散したという訳だ」
なぜ、ロイは俺の心が読める!?
てか、この際それはいい!
あの場面を見られていたのか!
という事は……。
俺は急いで部屋を飛び出て隣の女子部屋に耳に魔力を集め、より声を拾えるようにしてドアに当てる。
こんな風に魔力操作を使っていいかはこの際考えない事にした。
「ねぇねぇ!! シャーリー! なんて言われたの!?」
「い、いや……」
「アリィお姉様、それは愛する二人だけの秘密と言うものです! だから聞いてはいけないと思います。その代わり、シャーリーお姉様がどのハルお兄様の事どう思ってるか聞きましょー!」
「い、いやー!!!」
ソニンの奴、俺がいないところではお兄様付けで呼んでいるのか。
……そんな事はどうでもいい!!!
シャーリーに危険が!!!
でも、俺はどうする事も出来ず、ドアの前で左に行ったり右に行ったり右往左往する。
「なら、とりあえず二人まとめて話を聞こうか。俺とアリィを置いて逃げてから、ウィルとソニンが苦しんでいる時に何があったか」
ロイが極悪人面して部屋から出てきて言った。
俺たちも非があるところがあって逃げられない。
どうやら俺とシャーリーは公開取り調べを受けるこになってしまったようだ。




