第七十四話 シーレント王国での出来事 その5
俺たちは人混みをかき分け、なんとか目的のスペースにたどり着く。
その時だった。
黒と白のタキシード姿の衣装をした男がステージに出てきた。
『さぁ〜シーレント祭もいよいよクライマックス! 今からいろんなショーがある! ファイヤーダンスに魔法ショーに大道芸! そして最後には王立音楽楽団による演奏がある! そしてゲストには我が国、第二王女のアリア様、そして婚約者のロディーン様を迎えている! みんな盛りあがっていこーぜ!!』
『ワァァァァァァァ!!!』
司会の開会の挨拶と紹介されたロイとアリィがステージ上のゲスト席で苦笑いを浮かべながら手を振っているに祭りの参加者は歓声を上げる。
……やっぱり逃げてきて良かった。
あんな場所では楽しむに楽しめない。
あの司会者どっかで見た事あると思ったら闘技大会の司会者か。
人気司会者なのだろうか?
俺がそんなどうでもいい事を考えているとステージ上では最初のファイヤーダンスが始まった。
上半身裸で出てきた男が木の棒の両端に火をつけて、それを回しながら上に投げたのをキャッチしたり途中から出てきたもう一人の男とそれを投げ合ったりしていた。
一度も火のついた棒を落とす事なくパフォーマンスを続ける。
会場はそんなパフォーマンスを見て歓声を上げた。
「ハル君!! この人達スゴイね!!」
「そうだな!!」
シャーリーも感動してキラキラした目で俺の方を向いて言ってきた。
かく言う俺も始めて見たパフォーマンスに感動している。
しかし、完全に手を離すタイミングを逃し繋いだままなのでそっちも俺は気になって仕方なかった。
そして次は魔法ショー。
これもまた、盛り上がった。
音楽に合わせて、パフォーマーがダンスを踊って、時折パフォーマーが風魔法を放ったところに横から別のパフォーマーが水魔法を放ち観客に水を浴びせたり、観客も水魔法を使える人は空に向けて放ち、落ちてくる雫をみんなで浴びて観客も一体となって盛り上がる。
そして他にも丸いものの上を立って歩く芸や3つリンゴを空中に投げながらそのリンゴを食べいく芸など初めて見るものがたくさんあった。
しかし、そんな楽しい時間もあっと言う間に過ぎていき王立音楽楽団の演奏を迎え、会場はその余韻に浸っている。
そして、ついにその最後の演奏も終わった。




