第七十二話 シーレント王国での出来事 その3
「もうお腹いっぱい! 美味しかったね、ハル君!」
俺の隣でシャーリーがお腹をさすりながら笑顔で言ってくる。
眩しい……眩し過ぎる!
陽は沈み、あたりは薄暗くなっていたけど俺にはシャーリーが太陽のように眩しく直視できない。
「そ、そうだな! お腹もいっぱいだし、祭り楽しもうか!」
俺は視線をやや上に外しながら答えた。
あの後、すごい量の魚介に苦戦しながらもみんなで食べ切った。
人は同じものだけを食べ続けるとお腹ではなく、胸いっぱい……ちょっと使い方が違うけどお腹より上で満足感を得る。
だから、肉を食べたり、間にクッキーを食べたりしながら味を変えて食べた。
それで余計に食べ過ぎてお腹いっぱいになった。
お酒があったらまた別だったかもしれないけど、せっかくの祭りだから酔っ払うのはやめようと説得していたので飲んでいない。
と言うのもみんな酔っ払ったら祭りどころではない。
ロイとアリィは飲む気だったみたいだけど、知名度の高いところで酔っ払ったら困るだろって言ったら渋々了承してくれた。
せっかくの祭りで絡み酒の介抱係りは嫌だ。
シャーリーなら歓迎だけど……。
まぁ、ウィルとソニンがどんな風になるかは気になるけどまた今度の機会だな。
ちなみに今はシャーリーと二人きりだ。
ソニンははしゃぎ過ぎて食べ過ぎてダウン。
ウィルが介抱して一度宿に戻った。
ウィルも傷心してたし、ちょうど良かったのかもしれない。
ロイとアリィは祭りの運営委員に捕まった。
「ロイ様、アリィ様! さぁ、こちらへどうぞ!」 「いや、今日は俺たちはー……」
「いや、遠慮なさらずに! 特等席用意してますから!」
「だから、私たちだけじゃなくて友達もいるからー……」
「そうですか! ならお連れ様も!!」
「「結構です! 失礼します!!」」
俺とシャーリーは反射的に断り、振り返り様に逃げ出した。
その瞬間視界の端に凄まじい目力を感じたけど仕方ない。
だって、特等席はこれから催しが行われるステージの上にあったんだから……。
「どうぞ!」
催しが行われるステージに向かう途中で祭りの運営実行委員らしき人が団扇を渡してきた。
「これを持って入ってください! まだ暑いですから体調に気をつけてくださいね!」
「「ありがとうございます!」」
俺とシャーリーは団扇を受け取る。
渡された団扇は青と水色を基調にし、真ん中に『シーレント祭』と書いてあった。
「あっ、ハル君! 始まりそうだよ! 行こう!」
シャーリーがうきうきした表情でステージを指差す。
「そうだな! ついでにロイとアリィ達も見てやるか」
まぁ、なんだかんだでシャーリーと二人で行動できて嬉しかった。
もうちょっとだけ二人きりの時間を楽しもう。




