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第七十一話 シーレント王国での出来事 その2

今回はちょっと長くなってしまいました!

どっかで区切ろうかと考えたのですがきりのいいところがなくて……。

いつもより長くなりますが読んで頂けたらと思いますm(_ _)m

 「お兄さん(・・・・) ! まけてくれてありがとう!」

 「お嬢ちゃん可愛いからな! ほら、もう一つおまけだ!」

 「ありがとう!」


 俺たちは今、シーレント祭の会場の海辺に来ている。

 海辺には祭りという事もあり、たくさんの出店が出ている。

 肉や魚介を焼く匂い、スイーツの甘い匂い、いろんな美味しそうな匂いが漂って、空腹のお腹を刺激する。

 実はあの後、講座に夢中になりみんな昼ごはんを食べ損ねた。

 なので、ちょっと早めにシーレント祭に来て出店で食べようという事になってここにいる。

 すでに夕方だけど、日は高く暑い日差しが降り注ぐ。

 そんな中、俺は一人みんなの帰りを待つ。

 今、みんなは先ほどの講座で教えた事を実践しているのだ。

 俺がみんなに定価ギリギリのお金を渡し、値引き交渉して買ってくる。

 まぁちょっとしたゲーム感覚で意外とみんな乗り気だった。

 やはり王族や大商人の家系だから庶民的なものが新鮮で興味があるのだろう。


 「ハル君! 見て見て!」


 最初にシャーリーが両手に肉を焼いた串を持って嬉しそうに走って帰ってきた。

 どうやら、俺が与えたミッションを成功させたのだろう。


 「青銅貨七枚のところ五枚にまけてもらって、おまけでもう一本もらっちゃった! はい! ハル君どうぞ!」


 シャーリーは嬉しそうに声を弾ませながら俺に成果を報告し、おまけの一本を俺にくれた。

 青銅貨七枚が五枚になりさらにおまけで一本もらったという事は実質半額以下だろう。

 まぁ元値の青銅貨七枚はちょっと高い気がするけど祭り価格だし仕方ない。

 でも、値引き交渉初戦でこの成果とは……末恐ろしい。


 「ありがとう! じゃぁお釣りはシャーリーがもらってね? それが講座の成果だから」

 「えっ? でも……」

 「お金の価値と大切さが分かっただろう? だから自分で頑張った分の成果は持ってて」

 「……うん!」


 シャーリーは自分の袋に大事に青銅貨二枚をしまう。

 そうだ。

 俺はこの青銅貨のような小さな額でも大事だという事を理解して欲しかったのだ。

 長い旅ではちょっとした金額の積み重ねが大きい額になる。

 今はお金があるけど、俺たちは定期的な収入がない。

 そして、親や家族を頼ってはいけない。

 俺たちは自分の意志で旅に出ようとするのだから。

 それが出来ないといつまでも子供と同じだ。


 「ハル君! これでいいかしら?」


 続いてアリィが帰ってきた。

 両手に果実を絞った飲み物や持っている。

 さらに、両手に持てないのか後ろから店主らしき人がお盆に乗せ持って来ている。

 ……何が起こった?


 「アリィ……これは?」

 「ハル君が言う通り、値引き交渉して買おうとしたらお代はいらないし好きなだけって言われたんだけど……それじゃ悪いから持って行ったお金を払ったらせめて人数分って言われてこうなったの」


 なるほど。

 俺が悪かった。

 シャーリーは大商会の子供と言ってもあまり外に出てなかったって言ってたし大丈夫だったのだろう。

 それに大商会と言えど一般人だ。

 アリィの国でアリィに買い物させたらこうなるか。

 それにしても一杯青銅貨二枚のものが六杯で青銅貨二枚……六割引か。

 待てよ?

 アリィがこれなら……。


 「ハル! これで良かったか?」


 ロイは両手で大皿に大量に盛られた魚介の焼き物を持って帰ってきた。

 やっぱりこうなったか。

 シーレント王国でもロイはアリィの婚約者として有名だ。

 魚介の焼き物一皿青銅貨五枚が……これは何皿分だろう?

 もはやどれくらい得したか分からない。


 「……うん」


 俺はもはやこれ以上何も言えなかった。


 「ただいま!」


 振り返るとソニンが意気揚々と飛び跳ねながら帰ってきた。

 片手に3つずつ袋を持っている。

 中身はクッキーだ。


 「試食させてもらって値引きはできないって言われたけど、一緒にいる人にも美味しいクッキー食べてもらいたからって頼んだら人数分もらっちゃった!」


 ソニンは満面の笑みを浮かべ、跳ねながら俺に報告する。

 俺に笑顔を見せて話すとは余程嬉しかったのだろう。

 そんな事、今までなかったし。

 成果についてもおまけで十分過ぎる程だ。

 どんな感じでおまけしてもらったんだろうか?

 普通に言ってそれだけおまけしてもらえる事はない。

 ……ぶりっ子ぶったか?

 まぁとにかくあとはウィルか。


 「……戻った」


 ウィルが無表情で帰ってきた。

 何かあったのだろうか?

 手には……あれ??

 何も持ってない!?


 「ウィル何があったんだ!?」

 「……売ってもらえなかった」


 ……えっ?

 なんだと!?

 お客様は神様だ!

 それを売らずに帰すとは!!

 まさか頑固親父か!?

 『味の分かりそうな奴にしか食わせん!』

 とかいうやつだろうか?

 許せん!!


 「ウィル! 何があった!?」

 「……逃げられた」


 ……へっ?

 逃げられた?

 普通にサンドイッチを買いに行って逃げられる要素があるだろうか?

 いや、どう考えてもない。

 これは怪しい。


 「……ウィル、店主になんて言ったんだ?」

 「サンドイッチを買おうと思って店主に声をかけただけだ。『たのもう!』って」


  ……やっと状況が見えてきた。

 ここからは俺の推測だけど……。


 1 ウィルは初めての買い物に緊張感しながら店に向かう。

 2 その際、ウィルは緊張で顔が恐い顔になっていた。

 3 ウィルはそのまま店主に『たのもう!』と声をかける。

 4 店主は恐い顔にビックリし、さらに『たのもう!』っていうのが道場破りを連想し、道場破りならぬ出店破りと思い、逃げ出した。


 ……こんなところだろうか?

 ありえない話だけどこれ以外思いつかない。

 とりあえずウィルは当分買い出しの時は荷物持ちだな。


 「……うん、お疲れ様」


 俺はそれしか、かける言葉が見つからなかった。


 その後、俺たちは途中で肉だけ人数分、買い足して食べた。

 本来なら、他も買い足すはずだったけどロイが買ってきた魚介の量が多すぎた。

 肉を買い足したのは魚介ばっかり食べてたらみんな肉が美味しいに見えると言ったからだ。


 ちなみに、食事をしながらウィルをさりげなく励ますみんなの姿に俺は密かに感動した。

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