第六十話 対イストニア帝国 その8
皇帝は傷をつけられたロイに目標を変え襲いかかる。
ロイはその皇帝の斬撃を剣で受け止めた。
すかさず、ウィルハートが背後から飛びかかり斬撃を繰り出すが皇帝は気配を察知したのか、ロイの剣を弾き振り返りざまに斬撃を繰り出す。
ウィルハートは空中という事もあり、皇帝の力をそのまま受け、後方に飛ばされ、地面に打ち付けられる。
俺はウィルハートに近づき治癒魔法をかけた。
「余計な事をするな! 貴様の助けは受けん!! 人の心配をする暇があったら自分の心配をしろ!!」
ウィルハートは拒絶の言葉を口にするけど俺には違うようにも聞こえた。
俺の感じた事を脳内変換するとこうなる。
『こんな状況だ! 人の心配をする前に自分の心配をしろ!』と。
もしかしたら俺が普通の魔法使いだと思って魔力の心配をしているのかもしれない。
現に、ソニンは魔力切れが近いのか肩で息をしている。
最初に使った広範囲魔法は、一般的に考えれば相当魔力を消費するだろうし。
無詠唱で初歩的な魔法を使っていたのは、まだ魔力量がそこまで多くないのかもしれない。
ウィルハートはもしかしたら口が悪いだけなんじゃないかと、頭をよぎるけどこれはこの戦いがおわってからだな。
ソニンの限界が近い以上、ソニンが標的になるのはマズイ。
「ロイ! 離れろ!」
ロイは俺の声を聞くと同時に皇帝と距離をとる。
俺は注意を引きつける為、皇帝に岩弾丸を連射する。
さすがの皇帝も全部を避けきれず身体に着弾し血が空中に飛び散る。
「貴様ァァァァァ!!!!!」
皇帝は俺にやられ、頭にきたのだろう。
標的を俺に変え、突進してくる。
俺は突進してくる皇帝に重力魔法と行動阻害の魔法を放つ。
しかし、皇帝は力任せに、重力と体内に放った魔力に対抗し進んでくる。
でも、スピードは格段に遅くなった事もあり、俺はさらに魔法を重ねる。
古代人種により自然の理から生まれた水属性魔法の応用氷魔法凍結の吹雪を放つ。
「ウォォォォ!!!!!」
皇帝は雄叫びをあげる。
凍えるような吹雪が足元中心に放たれ、皇帝は足元を凍結され、身動きが出来なくなり徐々に身体の自由を奪っていく。
「ウィルハート今だ!!!」




